〔7〕怪物たちのプライド争い
スタスタスタと、ドラキュラがそよりさんに近づいて行きました。
「お嬢さん、少しだけ血を吸わせてください」ドラキュラが、そよりさんに言いました。
「お断りします」と頭を下げながら断ると、スタスタ行ってしまいました。
「吸えると思ったのに、あーざんねん・・・」棒読みで立ち去りました。スタスタスタと歩いてクルリと向きを変え、ユキに近づきました。
「お嬢さん、少しだけで構いません。お願いですから血を吸わせてください」ドラキュラがユキに言いました。
「貧血ぎみなので、ダメです」と断られると、スタスタスタ歩いて立ち去りました。
「吸えると思ったのに、あーざんねん、ラーメンでも食いに行こう・・・・」棒読みのまま、表情を変えずに体育館を出ていきました。
「私たちには聞かないんだね」私は不思議に思いました。
「栄養がなさそうだからじゃない?」ユキが笑っていました。
「カスミはしぼんじゃうもん」カスミも声をかけられなくて安心していました。
一反木綿は、体育館の端から端を飛び回っていました。カスミは追いかけていましたが、捕まえられませんでした。諦めないカスミを見かねた一反木綿はカスミを乗せて飛んでくれました。
「いやっほ~! わ~い!」一番楽しそうでした。一反木綿も楽しそうでした。
ぬりかべは、最初から最後まで邪魔にならない場所でじっとしていました。
ケンタウロスとペガサスは、ケンカなのか、追いかけっこをして、いがみ合っていました。そよりさんとユキが、
「あな゛たたち、ケンカは、や゛めなさいよ!」と仲裁すると、
「ふんっ!」
「ぶんっ!」とお互いに鼻を鳴らし、それぞれに背を向けました。
ケンタウロスは、そよりさんを背に乗せて、体育館中を駆けずり回りました。
「どっしゃ~! これでもか~! どうだ~!」ケンタウロスは気合が入っていました。
「速いわ~! ステキだわ~!」そよりさんが感情を出すのは珍しいことでした。
負けじとペガサスもユキを乗せ、空中を飛び回りました。
「負っけるか~! どっりゃ~! ぎゅい~ん!」ペガサスも気合を入れて対抗していました。
「すっご~い! 飛んでる~! すってき~!」ユキが興奮していました。
ケンタウロスとペガサスはプライドをかけて、全員の女子を背に乗せて喜ばせていました。一反木綿は、カスミしか乗せることが出来ないので、カスミがケンタウロスやペガサスと遊んでいるのをさみしそうに眺めていました。
私がケンタウロスの背中に乗ると、
「これは、乗せやすいね!」と言って、体育館を出て校庭中を駆けずり回ってくれました。
「速い! 速い! 速い!」私は興奮しました。
満足した私は、ユキと交代しました。するとすぐに、ペガサスが待っていました。
「次ぼくね~」と言って、ペガサスは私を背中に乗せると、校庭に出ました。
「ぶわっさ! ぶわっさ! ばっさ! ばっさ! ばささ~!」と空中散歩を楽しみました。
「いやっほ~! た~のし~! (夢でも見ているのではないかしら?)」不思議な感覚に包まれました。
ケンタウロスとペガサスの順番を待っている女子は、パンダコアラを撫でていました。ただただ転がっているだけで、何の危険もなさそうなので、みんなで集まって撫でていました。ふと、端っこでじっと座っていたぬりかべが気になりました。とことこ近づいて話しかけました。
「どうしたの? 何かあったの?」
「オレ、あっち、じゃま、ここ、いる・・・」
「・・・だいじょうぶ?」と見つめながら聞いてみました。
「・・・だいじょぶ・・・」こちらをチラリと見て、目をそらしました。
「今日は、ぬりかべなの? いつもは何なの?」
「・・・ねこ、・・・かネズミ・・・」しゃべることは苦手そうでした。モジモジして答えました。
「そっか~、いつもは動き回れるのね~。今日は動けなくて残念だね~」そこに一反木綿がやって来ました。
「さいきん、日本の野球って強いんだよね~」一反木綿が言いました。
「サッカーもつよいよ、日本は・・・」ぬりかべが答えました。
「そっか~、日本ってそんなに強いんだ~」私は日本人が海外で、スポーツで活躍していることを知りませんでした。
「強くなるとみんな海外に行ってしまうんだね~」
「何年かすると、戻って来るよ~」
「また、にほんで、プレーする・・・」
「そっか~、みんな最後は、日本にいたいんだね~」その様子をじっと、ここあちゃんが見ていました。
全員が、ケンタウロスに乗って、ペガサスに乗って、遊び疲れた頃に、今月の『触れ愛怪物デー』は終わりました。
「うどんにテンプラ乗せたって、
カレーにテンプラ乗せたって、
美味しくな~い、ハズがない!
大切な~のは、想像だ!
心の奥から呼び覚ませ!
そいつが一番大事だぜ!」校長先生は訳の分からない歌を歌って盛り上がっていました。いつの間にか衣装が変わっていました。髪形がピンク色のモヒカンでした。細い黒いサングラスをかけて、真っ黒い革ジャンを着ていました。どうやら歌詞の内容をロックで表現したい様子です。松柳先生は、隣でじっと動画を見ていました。




