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みすとら  作者: 詰乃 愛莉
第一章『Promised Love(約束された愛)』
6/8

〔5〕カマキリと諸見里ここあ

「ゴメンしてけろ、今日はアイスをきらせてしまったのっさ」食堂の親父さんが謝罪していました。

「ダーメー!」カスミの怒りは相当なものでした。

「代わりに、プリンやるのっさ!」

「ダーメー! プリンは夜に食べるの!」

「んでは、すぐに買ってくるのっさ!」親父さんは、アイスを買いに行きました。

「カスミ~。あんまりワガママ言うもんじゃないよ~」ユキが言いました。

「食べることをなまけてはダメなのです!」カスミはずっと膨れていました。

三十分後に、親父さんは戻ってきました。

「ゴメンしてけろ。いつものがなかったのっさ。これで許してけろ」買ってきたのは、バニラのカップアイスでした。

「ダーメー! ちーがーうー!」

「カスミ~、許してやりなよ。食べないなら、あたしが食べちゃうよ」

「ダーメー! カスミが食べるのー!」機嫌は直りませんでした。

「親父さん、ゴメンね~」ナゼか、ユキが謝っていました。一日中、カスミの機嫌は悪いままでした。

「あのおじさん、髪型がトラ狩りだよね」ユキが言いました。

「腕の毛が、熊みたい」私は言いました。

「口元は、ウマみたいだよ! 許さない!」カスミが言いました。

「まぁまぁ、許してあげましょうよ~」ユキがなだめました。

「まぁまぁ、・・・」私もなだめました。

「・・・、あは~」


教室に入ると、久しぶりに担任の先生がいました。

「アラ、先生お久しぶりです」そよりさんが言いました。

「やぁ、みなさんお久しぶりです」担任の先生は、体育の先生でした。

松柳竹彦(まつやなぎたけひこ)】20代後半、おそらく独身。得意なスポーツは、水泳とバスケットボール。ルックスほどほど。身長まずまず。性格そこそこ。

教室に集まったのは、そよりさん、ここあちゃん、私、ユキ、カスミの五人だけでした。


「今日も少ないわね~。あと他に誰かいなかったっけ?」ユキが言いました。

「いつも、この五人だよね~」

「他に、何人かいたハズよね~」

「誰かいたっけ?」私は、遠い昔の記憶をたどりました。

「! 外人の子いたね」

「ナントカシアって、言ったっけ?」ユキは思い出せませんでした。

「誰だっけ~?」私とカスミも、思い出せませんでした。


「さてみなさん、今日は『触れ愛ドーブツデー』です」

「またあれ、やるの~?」ユキは、乗り気ではありませんでした。

「まぁ、みなさん、月に一度ほどのお約束ですから」先生は、ユキをなだめました。


体育館に着くと、例によってブルーシートがかかっている檻が運ばれてきました。広い広い体育館にいたのは、私たち五人と先生とドーブツだけでした。

「小学生の頃は、これが結婚相手とか言われていたわ」そよりさんが言いました。何となく、どの生き物と遊ぶか決まっていました。私は、いつも通りハリネズミと遊んでいました。そよりさんはゴールデンレトリバーと、ユキは白黒のブチ猫と、カスミはヤギと遊んでいました。すると、ヤギは間違えてカスミの足を踏んでしまいました。

「いったー!」機嫌の悪かったカスミは、一気に手が付けられなくなりました。

「いっやー! きらいー! あっちいけー!」ヤギは、見るからに困っていました。

「(ヤギって、困るんだ・・・)」私は不思議に思いました。

『ばっひょこ~ん』変な音とともにヤギの姿が変わり始めました。ヤギは困り果てて、カマキリになってしまいました。

「(? ヤギって、困るとカマキリになるの?)」私は混乱しました。そこに黒い柴犬と遊んでいたここあちゃんが、やって来ました。先生は、体育館の端っこで動画を見ていました。

「あら、あら、カスミさん。困ったわね~」

「きーらーいー!」カスミの不機嫌は、治りませんでした。ここあちゃんが、そっとカスミの肩に手を置いて言いました。

「だいじょうぶよ・・・」そして、ニコリとしました。

「・・・」カスミの不機嫌が収まりました。

「(あんなに怒っていたのに・・・)」私は不思議に思いました。

「ちょっと、ここで待っててね」と言って、ここあちゃんはカマキリを連れて体育館のステージ裏に行ってしまいました。私は、気付かれないようについて行ってみました。

「こんどは、こっちね」と言って、カマキリの背中を優しく撫でました。

「だいじょうぶよ・・・」そして、ニコリとしました。

『どにてぷ』カマキリは変な音を出しながらヤギに戻りました。

「(! カマキリって、成長するとヤギになるんだ!)」私は、不思議な発見をしました。先生は、動画を見ながら音楽を聴いていました。

「カスミさん、この子キライ?」ここあちゃんが、カスミにヤギが嫌いか聞いていました。

「キライじゃないよ~。痛かっただけだよ~」カスミは小さくここあちゃんに伝えました。

「そぅ、それならば脱落しないわ」とヤギに伝えると、ヤギは小躍りしていました。

「(何だろう・・・。このやり取り・・・)」私の不思議は、消えませんでした。

気になったので、あとで私は、ここあちゃんに聞いてみました。

「ここあちゃん、質問があるんだけど・・・」

「何かしら? きよ美さん」ここあちゃんの声は落ち着いていました。

「ここあちゃんは、カマキリを治せるの?」

「んふっ」ここあちゃんは優しい笑顔を見せました。

「あなたに見られたのは、二度目ね・・・」私は思い出しました。

「! 昔、外人の子がいたよね? その子もカマキリと遊んでいたよね?」

「そう」と、ひと言だけ言いました。

「可哀想に・・・。フェリシアちゃんは、脱落(きこく)しちゃったの・・・」深くて重い一言でした。

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