〔4〕学食と桜美雪
「あんた、またハンバーグ食べてるの?」ユキがカスミに言いました。
「そ~だよ~。好きなんだもん」カスミは毎日夕食で、ハンバーグを食べていました。
「好きったって、同じ味でしょ?」
「違うよ~。今日は、おろししそチーズインハンバーグなの~」
「おろししそとチーズがあうのかしら~?」ユキは不思議そうでした。
「あんたは、いつも焼き魚ね~。今日はサンマかしら?」ユキが私に聞きました。
「そうよ。ここの焼き魚は、とても美味しいのよ」私は言いました。
「そうだけどさ~。あんたたち、毎日似たようなもの食べてない? いろいろなメニューがあるんだから、いろいろ食べてみれば~?」そういうユキは、洋食が多めでした。
「ユキは、なに食べてるの~?」見てみると、本日のおススメ『ずどどど・ドリア』でした。
「何これ?」
「ドリアなんだって~」
「お米の入った、グラタンでしょ?」カスミが言いました。
「ん~、まぁ、そうね。『ずどどど』が気になったんだけど関係ないみたい」
「それに惹かれて頼んでみたの?」私は聞いてみました。
「好奇心には勝てなかったわ~」
「昨日の夕食は『せせらぎ牛丼』を食べてたよね?」カスミが聞きました。
「何のせせらぎも感じられなかったわ・・・」
「ユキって、そういうところあるよね?」と、私が言うと、
「はい、はい。私は個性的な表現に釣られやすいのです」
「面白いと思うよ。もし今日注文しなかったら、次は食べられないかもしれないでしょ?」
「そうなのよ~。そう考えると、変わったものを注文してしまうの・・・」
ユキが変わったメニューを注文してくれるので、私とカスミはそれを楽しんでいました。ユキのメニューが、結果的に毎回平凡なので、自分の選択の正しさを確認していたのかも知れません。
「そういえば、ユキの名前って、どうやって決まったの?」私は質問しました。
「親が、季節感を無視したのよ」
「どういうこと?」
「私が産まれたのは夏なんだけど、『名字が春で、夏生まれだから、名前は冬にするんだ!』って、お父さんが決めてしまったの」
「秋は無いの?」カスミが珍しく質問しました。
「『飽き(秋)が来ない』性格になって欲しいんだって~。ヒトの名前で遊ばないで欲しいわ~」ユキはウンザリしていました。
「お~! 上手い!」私は感心しました。
「結婚したら、名字が変わるかも知れないのにね~」
「変わらないかも知れないよ」カスミがこんなに会話に入ってくることは、珍しいことでした。
「そうよね~。将来なんか分からないわ~」
食後のプリンを食べているカスミは、『この世の幸せを独り占め』していました。
「なんか、機嫌がいいと思ったら、今日のプリンは特に大きいわね~」ユキが納得していました。
「そうだよ~。今日はラッキープリンデーなんだって~。あ~っむ」と、大きな口でプリンをチョコチョコ食べていました。『ラッキープリンデー』と言っても、普通のプリンにサクランボとキウイがのっているだけでした。
「(余った果物かな~?)」とも思いましたが、カスミが喜んでいるので何も言いませんでした。
「口が大きいのに、プリンは小さいんだね」私は、気になりました。
「大きな口で、小さいプリンを食べると味が変わるんだよ」カスミはご機嫌でした。
「アナタは、朝はアイス。昼はヨーグルト。夜はプリンを欠かさずに食べてるわね」
「食べることをなまけてはダメなんだよ」カスミは訳の分からないルールに縛られていました。
「そういえばユキって、小学生の時、バスケットボールやってなかったっけ?」私は気になりました。
「クラスでみんなやってたからね~。人数合わせで何回かやっていただけよ」
「・・・てことは、やっぱり小学生の時は公立の小学校だったんだ」
「それが、思い出せないのよ~。公立の小学校に通っていた記憶もあるし、この学園に小学生の時からいた記憶もあるの」
「カスミも同じ~」
「何故だろう・・・」私たちには二つの記憶が同時に存在していました。頭の中が混乱してくるので、私は話題を変えました。
「ユキは、あたしがやりたいから吹奏楽部に入ってくれてるの?」
「そうだよ~。部活なんか何でもいいもん」
「他にやりたいことないの?」
「『他に』ったって、こう人数がいなくちゃ、何にも出来ないわよ」
「そうだね~。吹奏楽部も三人しかいないから休部状態だし・・・。そよりさんは部活なんかに興味を示さないし、ここあちゃんは存在自体が謎に包まれているし・・・」
「どうしようか・・・」
「何かやりたい部があるんなら、参加するわよ」と、ユキは言ってくれました。
「ん~。カスミは何かやりたいことある?」とユキは、カスミに聞いてみました。
「ダンス~」
「お? ダンスか~」ユキが食いつきました。
「面白そうね~」私も気になりました。
「そんなら、明日やってみる?」
「やる~」
「やってみよっか」毎日毎日、部活のような遊びのような日が続いていました。小学生の頃は毎日、何教科も勉強していたのに、この学園ではあまり授業がありませんでした。そもそもなぜこんなに生徒が少ないのか、なぜこんなに勉強が少ないのか、分かりませんでした。
吹奏楽部に挑戦しようとしましたが、人数が全然足りませんでした。私がフルート、ユキがトランペット、カスミはパーカッションだったので、一曲も演奏できませんでした。




