〔2〕第一印象
校長先生のひと言に私たちは驚きましたが、先生たちは落ち着いていました。そもそも校長先生の話を聞いていなかったのかもしれません。私たちの中で最も積極的な生徒会長が、校長先生に挙手をしながら質問しました。
【涼風そより】通称そよりさん。好きな色はブルー。ロングヘアーで、毛先が青色に染まっている。生徒会長をしているせいか、細かいことにこだわる性格。まつげが長く、細めの眼鏡をかけている。
校長先生は、もう一度言いました。
「今からこの場で、あなたたちの結婚相手を決めて頂きます」
「え? 何言ってんの?」私たちは、あらためて驚きました。前列の四人も驚いていました。
「すいません校長先生。質問があります」そよりさんが手を挙げて、校長先生に質問しました。
「何でしょう?」
「結婚相手を決めると聞こえましたが、気のせいでしょうか?」
「ん?」一瞬だけ校長先生の顔色が変わったことに、カスミ以外が気付きました。
「気のせいです。あなたたちに交換留学生のクラスメートを紹介するだけです。仲良くしてください」
「校長先生、聞き方を間違えていました」
「何でしょう?」
「小学1年生の夏休み明けの全校集会でも、同じ様なことがありました」
「ありましたね~。懐かしい限りです」
「その時は、犬や猫と遊ぶだけの時間でした」
「そうでしたっけ?」校長はしらばっくれました。
「今回も前回と同じ、『友人を紹介するという名目の動物と遊ぶだけの時間』なのでしょうか?」
みんなが聞いてみたいことだったので、この質問はみんなを安心させました。やはり、そよりさんは、私たちの代表なのです。
「おおむね、そうです」
「では、なぜそれが私たちの結婚相手を決めることになるのでしょうか?」
「みなさん、キチンと私の話を聞いてください。単語だけで会話をすると、相手に誤解を与えるのです」
「(それは、あなたに言いたいわ!)」みんなが、心の中でそう思いました。
「みなさんが触れ合うのは動物たちです。今は動物の姿をしていますが、次に会うときは変身しています。今日どれだけ仲良くできるかで、次に会うときは姿が変わっています。ですから出来るだけ仲良くしてみましょう。
どのように姿が変わるかは、あなたたち次第なのです!
育てるのです! あなたたちの伴侶を!
作り上げるのです! あなたたちの絆を!
分かり合うのです! お互いのことを!
信じるのです! 明るい未来を!
食べるのです! 美味しい食事を!
新しい形の『育成型恋愛ファンタジー物語』が始まります!
これが興奮せずにいられるかー!」校長先生はゼーゼーと息を切らせていました。そして、私たちの予感が、嫌な方に流れて行きました。そして、ざわつく私たちをよそに、私たちの目の前に、シートを被せられた巨大な箱のようなものが運ばれてきました。
「何これ?」
「それで、体育館の真ん中に座らされたんだ」
「何か、臭くない?」
「別に臭わないわよ」
「何かの鳴き声がするよ」
「こわ~い」
「あは~」カスミは状況を理解できていませんでした。
みんなの反応は、まちまちでした。
ブルーシートが取られると、およそ5m四方の檻の中に七匹の動物たちがいました。
茶色のイヌ(ゴールデンレトリバー)、ヤギ、黒い柴犬、ピューマ、白黒のブチ猫、ハリネズミ、白ウサギがいました。
「!」
「?」
「かわいい~」
「?ど~すんの、これ?」
「何が始まるの?」
「あは~」
「・・・」
みんなのリアクションは、それぞれ個性的でした。
「交換留学生の方々です。それぞれに仲良くしてください」
校長先生は、能天気に言いました。
「これが交換留学生の訳がないでしょう! な~にが、仲良くよ。動物と仲良くしろと? 何よー、小学生のときと一緒じゃない!あたしは、お断りだわ!」そよりさんが大きな声で言いました。
「今は動物の姿をしていますが、彼らが心を開けば少しずつ人間の姿に見えてきます。中には、社長や資産家のご子息もおられます。これは一つのチャンスなのです」
「!」
「?」
「あは~」
「・・・」
「かわいい~」
「ブツブツ・・・」
「う~~~ん・・・」そよりさんは、どのドーブツさんと仲良くするか考えていました。
そよりさんは茶色の犬に、ユキはブチ猫に、カスミはヤギに近づいて頭や体を撫でていました。私は、誰も近づかなかったネズミに近づいてみました。小学校の時よりも、動物たちの身体は一回り二回り大きくなっていました。それぞれに、小学生の時に最初に遊んだ動物を選択していました。
「やっほ~。怒っていないかな?」
「やっだ~っ、キヨはネズミに触るの?」ユキが言いました。
「大丈夫でしょ。毒はなさそうだもん」
「そうじゃなくってさ~」ユキは行ってしまいました。
ネズミに近づいてみると、ハリネズミでした。
「おっほ~っ、針がこんなに飛び出るんだ! チクチクするよ」
警戒したらしく、優しく声をかけると針を引っ込めてくれました。頭をナデナデして声をかけました。
「緊張していたんだね~。知らないところに連れてこられたもんね~」
「ナデナデ、すやすや」ハリネズミは眠ってしまいました。
この学校で、まともな授業を受けたことがありません。七人しかいないのでテストをしてもしょうがないし、大学まで行けることが決まっていました。
「?(あれ? 七人いたっけ? いつも五人じゃなかった? 思い出せない・・・)」いつもこうなるので、細かく考えることを止めました。
学園では、体育や、家庭科や、音楽の授業が多く、演劇の練習もしていました。他の学校のことは分かりません。世の中の学校というものは、みんな同じだと思っていました。
「(そもそもこの学校は何なのだろう?)」疑問を持っても答えが出ないまま、時がたってしまいます。合唱祭や、体育祭など大勢が参加する催しには、大勢の生徒が参加していますが、一人ひとりの顔が思い出せません。この学園と私たちの存在自体が謎に包まれていました。
核心的なことを思い出そうとすると、眠くなるのよね~。まだ授業中なのに~。
「ZZzz・・・」




