第8話 測定不能領域
絶壊皇は拳を振り上げると再び光の輪が光出した。
何をしようかなんて考えたくないが、嫌でも分かる。
とんでもな技で僕を殴り殺す気だと。
「ちょいと手加減くらいしろ!」
「そんな言葉ワシャ知らん!!そんな優しくは出来んぞ!」
こんなところで消されてたまるか!
と殴られる直前に僕は別のスキル"スライム化"をした。
身体を透明なスライムへと姿を変えた。そして捕まっている状態から、絶壊皇の後ろへと回った。
ガラ空きだ!っと背後から脳天に悪魔の爪で突いた。
だが、壊皇がダメージが受ける訳もなく、そのまま拳を大地に叩きつけた。
「ふんッッッ!!」
その瞬間、感じたことのない衝撃波が地面より解き放たれた。
建物を消し、自然の木々を、大地を削りながら衝撃波がこちらに迫ってきた。
「くっ!バリア!!」
咄嗟にバリアを貼った。だが、そのバリアは衝撃の波によって瞬時に割れて無力化されてしまった。
防御が崩れ、僕は地面にしがみ付くしかなかった。
だが、地面は割れ、破壊され、僕はあらゆる建物の残骸に巻き込まれて行った。
目が覚めると、僕は地面にぶっ倒れていた。
起きるが、辺り一面が何もない。
変な事を言うが、開拓ゲームの初期画面のように草木も山も川の自然。建物や車などの人工物も全てが消し飛んでいた。
遠くの地平線まで見えてしまうほどに、綺麗さっぱり無くなっていた。
「と、東京が更地に!?関東平野に!」
「この輪が無ければ、もっと力を出せるんだがなぁ」
「!?」
絶壊皇は背後に立っていた。
僕は咄嗟に距離を取り、コピーしたスキルを発動した。
「スキル"サーチ"!」
異世界で勇者が持っていた敵の力を可視化する能力。
あの神は10万のパワーを誇っていたが、こいつは──
「パワー……測定不可能!?体力も、防御、能力も全てが測定不可能だと!?1億まで測定可能なのに!?」
「ワシの事、ちょっとは学べたかのう。人間」
「あの神よりも何十、いや何百何千も強いのか!」
「そこらの神とは違うに決まっておろう。なにせ、羅将だから……なぁ!!!」
大声の衝撃波により、またも吹き飛ばされた。
更に目の前に拳を振り上げている絶壊皇が移動して現れた。
僕は腕を交差して咄嗟に防御した。それに加えて、異世界でコピーした全身をジオメタルへと変身させた。
「これはダイヤモンドよりも──」
「ふんぬッ!!」
拳は僕のジオメタルの身体を貫いた。
まるで豆腐をパンチするかかのように。
「ぐはっ!」
僕は勢いよく地面に叩きつけれた。
上空を見上げると絶壊皇は移動していた。
拳を大きく振り上げて、僕の方へと急降下を始めた。
「まだ、やる気かのう」
「ぐっ……」
何だ……目の前がグニャグニャとグチャグチャと視界が狂って来たぁ?
それに腹が異様な程減っへ……肉が、食べたい。
僕の中で何か呼びかけてくる。捕食しろと、危険な信号が発令され始めた。
「くっ!あの時と一緒だ!!うがぁぁぁぁ!!」
我を忘れてしまう。本物のゾンビになってしまう!
僕は自我を保つために叫んだ。それに頭を何度も地面に叩きつけた。それでも、精神汚染の速度が早い。
我を忘れそうになる。
その異様な光景に絶壊皇も一度、後ろへと下がった。
「なにが起きとるんじゃ?」
「彼は生きる屍となって死に、不安定な体の状況下で他次元で蘇生された。その影響で屍の特徴である肉や血を欲する身体となってしまったのだよ」
「じゃが、あの様子は異常じゃな」
「血を欲して意識が屍に乗っ取られようとしている。容易に強力な力を持ったが、それを扱えるほどのタフさは兼ね備えてはいないのだよ」
「代償って奴かのぉ!!」
再び絶壊皇は再び突撃してきた。
そして身体をうまく動かせない僕の全身に無数のパンチを繰り出した。みるみるうちに僕の身体は凹んだ跡が形成され、潰した粘土のような見た目へと変形した。
「それでもまだ、動けるのだろう」
「が、がが……」
や、やばい……あ
その瞬間、金吾の眼は意識は遠く闇の中に封じられた。
金吾の目から光が消え、グニャグニャだった身体が瞬時に元へと戻った。
そしていきなり目から光線を放った。
「はは!!自我崩壊を起こしよったか!」
「お前が遊びすぎだからだ」
壊皇が避けた。
金吾はすかさず炎を纏った拳で殴りかかり、壊皇の顔面に直撃し、大爆発を起こした。
無傷の状態で煙から出た壊皇は上を見て、拳を振り上げた。
「あまいわ!」
金吾が真上から巨大な岩を押し込んで来た。
岩に壊皇の拳が当たると真っ二つに割れた。
だが、真上から金吾の姿は消え、目の前から殴りかかるも、壊皇の反撃が放たれた。
拳は直撃するも、金吾は実態ではなく霧と化した。
「能力が多いのも厄介よな」
真上から炎を纏った金吾。ドラゴンに変身した金吾。
左右後ろから魔法使いの杖を構えた金吾。悪魔の魔力を放とうとする金吾。神の力で稲妻を放とうとする金吾。
そして正面に現れた金吾。壊皇に手を触れると、身体全体が凍りついた。
絶対零度。その能力で壊皇の動きを封じた。
そんな中でも装皇は関心を示しながら戦いを見守っていた。
「ほう。自我が崩壊している中でも、よく動く身体だ」
「違うますね、これは」
「お主か」
「お久しぶりです、装皇さん」
装皇の隣に金吾と同じくらいの歳の背中に腰に刀を差した優男が降り立った。
「あれが奴を倒すための鍵?ですか」
「あぁ。厄介だがな」




