第6話 破壊の羅将"絶壊皇"
その声がする人物は僕の目の前に着弾した。その衝撃で砂煙が台風の如く舞う。
大量の砂煙を浴びて、僕は何度も咳き込んだ。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「いやはや失敬、失敬」
「絶対ワザとだろ!」
「オッサンは歩くのが疲れるからのぉ!はっはぁ!」
目の間に落ちて来た絶壊皇と名乗る男。
絶装皇子よりもひと回り大きい。
それに、とても白く長い髪にだらしない。それに伸びきった髭。それに肌も剛毛でトケドケしく痛そう。
上半身裸。見たことも無いような筋肉。テレビで見たようなマッチョを超えていると思うが、正直暑苦しい。
「ほぉ、お主が佐々本金吾。だな」
「あ、あぁ。いい加減要件を……」
目の前にするととてつもなく迫力がある。
威圧感というか、オーラというか、迫力というか。
言葉には表せない強者の圧力を感じる。
僕が圧倒されていると、絶装皇から口を開いた。
「では要件を告げよう。君に──」
「足が滑ってもうたわぁ!!はっは!!」
いきなり話を腰を折るように絶壊皇が僕を蹴り飛ばした。
見えなかった。あらゆる強者の力を得ているのに。
捉えることすらできなかった!
まるで発射されたミサイルのようにぶっ飛んでいき、富士山から九州の阿蘇山の火口まで飛ばされた。
「おい、話の腰を折るな」
絶装皇が注意する。だが、絶壊皇は相変わらず笑っていた。
「はっは!すまんなぁ足が滑ったもんでな!」
「何故お前が壊輪を持つのか出来ん」
「素質があるっつう事だろうさ」
僕は身体が半分溶けていた。正直熱い。
火口から飛び上がり、すぐに身体は元に戻った。
徐々に不意打ちされたことに苛立ちが募って来た。
「くっそ!要件言う前に殴りやがって!一撃だけでも喰らわせてやる!気が済まん!」
神の雷の力を発動し、空に指を掲げた。
あの二人がいる場所を思い浮かべ、指先に雷を溜め始めた。
「断罪の雷を受けろ!」
指を振り下ろし、二人のいる位置に強烈な一撃の雷を降らした。
「ん?」
二人が上を見上げた。
その時、頭上より閃光と共に雷が降り落ちた。
二人がいる場所は雷により、爆発を起こした。
爆煙で状況が見えない。でも僕はまだ足りないと感じ、さらなる一撃を加えた。
魔法使いの力を使用して、富士山上空に戻った。
そして巨大なドラゴンの姿に変化し、口にエネルギーを溜めた。
「ダメ押しの一撃!!ドラゴンバスタぁぁぁぁ!!」
二人がいた位置に口からビームを撃ち放った。
ビームは一直線に飛んでいき、富士山山頂を粉々に消し飛ばした。
「何が羅将だ。不死身の僕に勝てるわけないだろ」
二人の力は感じない。
消した。安心した僕は、竜の姿を解いて消し飛んだ富士山山頂へと降りた。
誰もいなくなった世界に、一人強がって自慢気になった。
「十メートルくらいは標高下がったかなぁ。はは」
「山をちょっと削るのがお前の限界か?」
「!?」
後ろから絶壊皇の声が──
咄嗟に振り向いた。だが、見えない速度で攻撃を受けてまたも遠くへと殴り飛ばされた。
今度はスカイツリーが突き刺さっている東京ドームの客席にぶっ飛ばされた。
「くっ……あの一撃に耐えただと!?」
全身の骨が折れた。
すぐに回復して立ち上がると、スタジアム上空に羅将の二人がいた。
すぐに反撃に出ようとした。
手を構えた瞬間、絶壊皇がその場から消えた。瞬時に目の前に現れて、僕の手を掴み取った。
「これがさっきワシらをつついた悪い御手手か」
腕をギュッと握りしめ、小馬鹿にするように笑う。
「くっ!離せ!」
すると絶壊皇は笑った顔のまま、低い声で言った。
「羅将への喧嘩、買わせてもらうぜ」
「え?」
僕の腕を引っ張り、身体ごと小物を持つように持ち上げた。
そして円を描くように僕を振り回し始めた。
対抗しようにも回転の軸移動で頭の血が昇り、思考回路が閉ざされた。
「な、何をッ!」
「お仕置きだ!!」
タオルを振るように振り回し、今度は野球ボールを投げように投げ飛ばした。
その際、腕が引きちぎれだが、そんな事関係ない。
僕は訳もわからない内に投げ飛ばされて、海を超えて何処かの国へと飛ばれた。
「すまんな絶装。少しだけ遊ばせてもらうぞ!」
「好きにしろ」
絶装皇は半ば諦めた形で絶壊皇を見送った。
「全次元が危機に陥っている中、何をしているのやら」




