第5話 羅将降臨
「戻ってきた!ってあれ!?」
地球に降り立ち、東京のビルに着地した。
ここから復讐の時間だと思った。
でも、それは違った。
真っ先に思った事。それは──
「空が赤い……それに」
空が真っ赤だった。
基本的な赤色の如く真っ赤で目に痛い。
それに人の気配が感じない。
何処にもいた形跡すら無さそうだ。
「本当に……誰もいないのかな」
僕は東京を日本全国を世界を飛び回った。
何周、いや何十周と。
色んなコピーした能力を使って探知した。
それでも人は居なかった。
僕は富士山の頂上に行き、真っ赤な空を見上げて寝転んだ。
「父さんも母さんも弟も姉さんも……死んだのかな」
せっかく復讐だ!と言っていたのに、なんて様だ。
これじゃあ僕が学園祭の舞台でイキってイメチェンしてステージに上がったのに、誰一人知り合いは見ておらず、知らない近所のおじいちゃんしか居なかったみたいじゃないか。
もうどうでも良くなった。
「誰か殺してくれ!って言っても不死身の身体になったんだった」
生き返る目的がもう失った。
さぁさぁ、どうする金吾。
自問自答しても何も浮かばない。
「これじゃあ宝の持ち腐れじゃんか。誰か来てよ、獅子野さんでもいいからさぁ!」
「本当に誰でもいいのか、佐々本金吾」
空の上から誰かが僕を呼んだ?
「だ、誰!?何処の誰!?ねぇ!」
僕は立ち上がり、空を見上げていると謎の影が僕の目の前に降り落ちて来た。
「だから誰だよ!」
「私は天凛羅将"絶装皇"」
「てんりんらしょう?」
何だこの男?
赤く空に一つ輝く白銀の鎧とマント。
身長は2メートル?いや、僕の倍近くの3メートルはある!?
空飛んでるし、デカいし、何なんだ。
まともな人間ではない事は確かだけと、生きている何かと出会えてホッとした。
「おい」
「は、はい!」
その鎧の隙間から見える強烈な威圧感を感じる眼差しに、身体がビリビリと痺れを感じた。
「アンタは何者だい」
「我が名は絶装皇。羅将である」
「そうじゃなくて!アンタの正体だよ。何をしにここに?」
「貴様を探していた。と言えば分かるか」
「僕を探していた?」
「あぁ、この仮世界に呼んだのも貴様をここに誘き寄せる為だ」
「仮世界!?」
何を言ってるんだ?
いきなり話がぶっ飛びすぎて、理解ができないぞ?
とにかく今の状況を理解する為に僕は彼と話を続けた。
「ここは僕の世界じゃないって事?」
「何度も言わせるな、ここはお前の世界じゃなく、お前の世界を形取った俺が作り出した偽物の世界」
「……?」
「先ほどのモンスターも貴様を試すまで試練だと思えばいい」
余計に混乱して来た。
理解が遠く及ばない。
そろそろ頭が痛くなりそうだ。
「話を戻すけど、要件は何ですか?引き寄せるって何さ!」
「それは──」
僕の問いに絶懐皇がようやく本題に入ろうとした時だ。
『絶装よ!!やっぱりお前は堅苦しい奴よのぉ!!』
「え?うわっ!!」
また天から声が聞こえて来た。
しかも今度は荒々しく煙草を吸ったようなオッサンのガラガラ声であった。
そして何より声がうるさすぎて、大地に亀裂が入り、川の水も激しく波を打った。
脳の奥まで声が届き、頭が引き裂かれそうになる!
『はっはっはっはっは!!!』
何故かずっと笑っており、耳を閉じても音は響き、大賢者の結界を張っても瞬時に割れてしまう程の破壊力。
「いあたた!!今度は誰だよ!しかもオッサンボイス!何よりもうるさい!」
「お前も来たか。俺一人で十分なのだが」
絶懐皇はこんなにもうるさく痛いのに、平然としていた。
「あんたのお仲間なのかい!?このオッサン!!」
「あぁ」
「早くオッサンの止めてくれ!」
早く止めろと懇願すると声のギアが何段階も跳ね上がった。
『さっきからオッサンとオッサンと!!失礼ではないか!!オッサンとは!!はっはっは!!今からハン!サム!なワシ!を見せてやる!』
「分かったから早く降りて来てくれ!頭が割れる!!」
周りの高層ビルは崩壊し、更には至る所で爆発が起きる。
偽の世界とは言え、このままだと地球が持たんと思った時、ようやく声が止んだ。
そして空に小さな穴が空き、一筋の光が僕の前に照らされた。
「やっと出てくるか……」
ホッとしたのも束の間。
その光の穴から、猛スピードで何か巨大な物体が飛び出して来た。
目を凝らすと、絶壊皇よりも一回り大きいくらいのオッサンが笑顔でこちらに飛んできた。
「はっはっは!!ワシが!絶!壊!皇!で!ある!同じく羅将で!ある!」
「あーー!!全く!耳にキンキン来る!」




