第4話 カミグライ
ワープをして天の城の前まで来た。
そこには大量の天使たちが各々の武器を構えて、僕を待ち構えていた。
「ここから先は通さない!」
「聞き飽きたよ、そんな言葉!」
僕は以前食べたドラゴンよりも更に巨大なドラゴンに変身し、攻撃を仕掛けてくる天使達を一撃で薙ぎ払った。
そのまま僕は城内を進軍し、神がいる最上部へと到達した。
神は眩い光が差す部屋に居た。
想像通り老人の見た目だ。ドラゴンの姿の僕を前にしても、至って冷静な顔付き。
「お主はこの次元の者ではない迷い人じゃな」
「迷いたくて迷ったんじゃないんだけどね」
「では何故にこの世界を滅ぼす」
僕がこの世界を滅ぼしたい理由──
「復讐したい奴がいる……かな」
「なんじゃと?」
「僕を裏切り、殺した奴を殺しに行くために蘇るんだ」
「そのような理由でか」
「だからこそ、あんたの力が欲しい!!世界のあらゆる魔術師も戦士も、ドラゴンや悪魔を食らった。あらゆる能力を我が物とした。最強の屍軍団を手に入れた。もう恐れるものなどない!!後はあんたを喰らえってその力を奪えばね!!」
右手をドラゴンの鋭利な爪に変え、神様に襲いかかる。
だが──
「神様!!」
背後から、僕を消し炭にしたあの勇者が現れた。
横から剣を払い、身体を半分にぶった斬ぎられた。
だが、僕の二つの身体はすぐに引っ付こうと動き出した。
「ミラ!」
「はい!!」
勇者の後ろから共にいた魔法使いも現れた。
勇者の言葉に続いて僕の身体に魔法を撃ち放った。
すると真っ二つに割れた身体は動かなくなり、僕の身体は引っ付かなくなった。
「これで貴様の能力は断ち切った!!」
「ところがどっこい!」
僕は魔法使いのミラを睨みつけた。
頭の中に乗り込み、精神を揺さぶってやる!!
「うっ、うわぁぁぁ!!」
「ミラ!!」
ミラは頭を抱え始めて、魔力が弱っていく。
魔力が弱った事で動かなかった身体が少しずつ動き始めた。
「よくも!!」
「馬鹿め!」
突っかかってきた勇者に対して僕は目からビームを放ち、横腹を貫通させた。
「ぐっ!!何の!!」
横腹から夥しい量の血が出ながらも勇者は足止めなかった。
剣を振り上げて僕の左腕を切り落とした。
「腕を切ったのがミスだったな!!」
僕の切り落とした右腕を動かして、勇者の身体を掴んだ。
「離せ!!」
「すぐに離すよ。噛んでからね」
必死に抵抗するがそんなの関係ない。
強引に引き寄せて、思いっきり首から噛み付いた。
「ぐわぁぁぁ!!」
身体に染み渡るよ。この勇者から流れる正義の血が。
ゾクゾクするよぉ。
「ゆ、勇者様……」
「この野郎!!」
勇者は無理やり引き離して首を触った。
自分が噛まれた事を知り、勇者は神へと目を向けて叫んだ。
「神様、ミラを別の次元に送れ!!」
「わ、私も最後まで戦います!」
「俺はもうダメだ!お前だけでも生き延びろ!」
勇者は自分の死を悟ると、短剣を取り出して僕の腕を地面に刺した。
そして上半身を蹴り、剣で肩を刺して壁に押し付けた。
勇者の言葉に神でも流石に驚いた。
「この世界はどの道終わりだ。ならば、彼女だけでも生きてもらう!俺からの最後の願いだ!!」
勇者の必死な顔に神は渋々頷いた。
「分かった……貴様の願いを叶えよう。彼女だけでも、他次元へと送り込む」
「勇者様!!」
神はミラに向けて手を翳す。
「勇者様!!」
「いづれ来る戦いに備えるんだ!行け!!」
背後より次元の穴が空き、ミラは勇者に手を伸ばしながら次元の穴へと吸い込まれて行った。
「欲しかったなぁ、あの子の能力」
「はぁ!!」
勇者が剣を振るった。
力がない勇者の一撃なんぞ、もはや脅威ではない。
僕は龍の爪で弾き飛ばした。
「ぐわっ!!」
「悪あがきはよした方が身のためだよ。もうじき君もゾンビになるんだから」
勇者の能力も手に入れた!
これで厄介な奴をようやく排除した!
僕は自分の身体を引き寄せようとした。
だが──
「忌まわし存在となり、神様に刃を向けるなら!!」
勇者は落ちた剣を魔法で拾い上げた。
何をするんだと思った矢先。勇者は自分の元に神速で引き寄せた。
おぼつかない足で僕の前に立ち、自分の剣で自分もろとも僕に剣を突き刺した。
痛──
僕と勇者は剣で貫かれて壁に突き刺さった。
「申し訳ない……みんな」
その言葉を最後に勇者は絶命した。
下半身は途中で止まった。確かにこれでは動かない。
でも、関係ないね。
僕はこんな時のためにもっと便利な能力を手に入れたんだ。
身体をスライムのようにドロっと変化させた。突き刺さった剣から簡単に抜け、下半身と身体を合体させた。
これには神は驚きを隠さなかったようだ。
「お主は神にまで反逆する気か!」
神は僕にそう言ってくるが、そんなの関係ない。
今の僕は復讐の一言で動いている。
奴を殺すために。
「こんな事しても無駄なのに。それなら、最初から僕に噛まれれば良かったんだよ」
「本来は地上の事には神は手を出さない掟。だが、神に手を下す気なら私とて容赦はしない!」
神は僕に手を向けて、上空から雷鳴を無数に降り注がせた。
僕は腕を上げて、自分の周りに結界を張り、雷を神に弾き返した。
「なっ!?」
「大天使の力だよ。アンタだって知ってるだろ。天界の力は天界の者には威力が低下するって」
「貴様、我が弟子達も!」
「そうだよ。そして今、僕のしもべになった」
僕は両手を広げた。
その瞬間、神の背後から無数の黒い穴が出現し、その穴からゾンビと化した天使達が神の手足を掴み止めた。
「なっ!何をする!」
「ちっとばかり、力をくれれば良いんだよ。それに噛まれた方が楽だよ」
「神の禁忌を犯すととんでもない事になるぞ!上級天使でもない者がむやみやたらと次元に穴を開けると──」
「うるさいよ神たま」
神は抵抗できず、僕は神を喰らった。
身体の中に計り知れない衝撃が走った。
ビリビリと身体全身に感じた事のないパワーと見た事もない光景が広がっていく。
更に神の領域だ!
「これだよ!これ?これが欲しかった力だ!」
全ての力を手に入れた。
あらゆる力を僕の元に集まり、僕は屍の神となった。
神の御前から外を眺めると、世界は黒く染まっていた。
まるで今の僕の心を見ているようだ。
真っ白く平和なこの世界ももう終わりだ。
「さぁて!戻るぞ!!」
今、元の世界に戻り、獅子野さん。いや、獅子野。
君に復讐する時だ!
「早速使わせてもらうぞ!次元突破!元の次元に開け!」
僕は吸収した神の力を使い、次元の穴を開けた。
「東京よ、僕は帰って来た!ってね。行くぞ!」
僕は次元の穴に飛び込んだ。
この最強無敵の力はもう誰も止められない!
自衛隊だろうと核だろうと僕を殺す事は出来ない!




