第1話 大切なあの人が──った
突如として世界主要都市10カ国に正体不明のウイルスをばら撒かれた。
その液体を体内に含んだ者は体内が腐り、ゾンビとなった。
誰が何のためにバラ捲いたのか分からない。発見された事のない未知のウイルスに世界は対策を打つ時間はなかった。
この感染病は瞬く間に広がり、ものの一ヶ月で世界中を感染病が蔓延した。
日本にもウイルスがばら撒かれてしまい、そのウィルスは東京を中心に日本全国へと広がって行った。
全国が大パニックに陥り、初日でおよそ1000万人が感染したと言われた。
それから約半年後──
僕は佐々本金吾。修学旅行の最中に、感染爆発が起きてしまい、クラスメイト達と剥がれてしまった。
その際に同じクラスメイトの獅子野千代さんと共に、ビルへと逃げて、現在も二人で細々と生きている。
感染は世界にも広まっているとも言われているが、もはや驚かない。
僕も獅子野さんも、あまり面識がない事もあって最初こそは距離感があった。
でも、互いに協力し合って生きていく事を目標として互いに手を取り合って生きて行った。
僕達は毎日のようにビルの窓に"SOS"と書いた布をぶら下げて救助を待っていた。
そして数日前に救助ヘリが僕達に気付き、屋上にて救出するとなった。
だが──
ビルの階段──
僕と獅子野さんは下から迫るゾンビから逃げ、屋上へと向かっていた。
救助ヘリが来たのはありがたい。
でも、すぐそこまでゾンビ達が押し寄せている。
逃げる為は、階段で屋上に上るしかなかった。
でも獅子野さんも僕も運動部じゃない。体力はあまりない。僕らはすぐに疲れ果ててしまった。
「だ、大丈夫?千代ちゃん!」
「私は大丈夫……金吾君は?」
「へ、平気……」
本当は休みたい。だが下からゾンビ達が迫ってくる足音が徐々に大きくなっている。
ここで弱音を吐いちゃダメだと自分を鼓舞した。
そして同じように、獅子野さんの背中を押して鼓舞した。
「疲れているけど、屋上までもう少しだから頑張ろう!」
「うん! ありがとう金吾君」
そして僕達は悲鳴を上げる足を動かした。一歩一歩少しずつだけど、確実に屋上へと足を進めた。
だが──
あと一階。と言うところでゾンビ達は目と鼻の先に迫っていた。
だが足が現界を迎えている。これ以上全く踏み出せなかった。
「あと少しなのに……」
「いや、まだ諦めちゃダメ。まだ方法がある」
そう言って獅子野さんは足を少し進めた。僕の前に出て、上から手を差し伸ばして来た。
「まだ貴方には役目があるんだから」
こんな時に僕よりカッコいい事を言われたらまだ歩ける。
僕は獅子野さんの手を握り返した。
「貴方一人で死ねばアタシが生き残れる」
「え?」
「じゃあ」
突然人が変わった。冷たい顔になった獅子野さんは握った手をそっと離した。
ゾンビ達の群れの中に僕の体を突き飛ばした。
あの聖人君子の獅子野さんがこんな事をするわけが……
「優しくすれば簡単に手ごまに取れるから一緒に居たまでよ!アンタと居れば他の男に襲われるリスクは下がるもの!」
「し、千代ちゃ──」
「貴方は簡単に私に惚れてくれたおかげでこんな時にも役に立ってくれてありがとう」
ゾンビの群れに落とされた僕は抵抗出来る訳もない。無抵抗のまま、身体のいたる所を嚙まれていった。
身体の節々が引き裂かれるくらい痛い。
だが、それよりも僕は涙と共に怒りの感情が一気に湧いて来た。
「くっ!典型的な屑が!!僕を囮に!!」
「何とでも言いなさいよ!どのみち噛まれたんだから、あんたはもうゾンビになるのよ!それに勝手に大和撫子のように思うから悪いのよ」
「お前に恋した僕が馬鹿だった!恨んでやる!殺してやる!」
「お生憎様、勝手に恋したそっちの問題でしょ。生き残る為に貴方に捧げたんじゃない。下手くそチェリーボーイ君」
そう言って獅子野は僕を襲っているゾンビの群れを後にした。
颯爽と階段を上がり、ドアをしっかりと閉めた。
そして自衛隊が待つヘリに乗り込んだ。
「あの女ァァァ!絶対に恨み晴らしてやる!死んでも蘇ってやる!」
僕の意識は遠のいていく。ひたすらに恨みの念を抱きながらゾンビの群れから何とか抜けた。
身体中引っ掻かれたり、噛まれたりして血みどろになった。
自由が利かなくなり始めた。薄くなる意識を保ちながら、必死に身体を動かしてた。
そしてドアを開けて、屋上へと出た。
もう痛みは感じなくなっていた。もうゾンビになるんだと分かっていた。だけど、あの女だけでも道ずれにしてやる。
屋上にはヘリに乗り込んでいる獅子野の姿が見えた。
僕の姿を見るなり、汚らわしい物を見る眼をした。
そして自衛隊員の服を引っ張り、僕を指差す。
「お、まえを……殺して──」
その時、ヘリに乗っていた自衛隊員が銃を撃った。
弾丸は真っ直ぐと飛んだ。そして僕の脳天に穴をあけた。
それと同時にヘリは離陸を始めた。
僕が眼にした最後の光景。それは腹黒く僕をあざ笑っている獅子野の顔だった。
「ぜ、たいに……おまえ……を……」
僕のその顔を最後に短く、無念たらたらな人生は幕を閉じた。
こんな醜い姿で死ぬなんて、ごめんだ。
復讐したい。何としてもアイツに復讐を果たしたい。
絶対に死んでなるものか。アイツを──ぜ
──ったいに殺してやる。
「ここは……」
死んだはずなのに僕の目が開いた。
いつもの僕。それに制服も着ている。
それに身体も自由に動──
「うわっ!!」
身体が真っ青になっている。
薄橙色の肌。全体的に青みがかっている。
それに何か生臭い気がする。
昔嗅いだことのある。これは動物の死体の匂いにそっくりだ。
というよりもゾンビの匂いだ。
この血の通っていない体にこの腐臭。
もしかして……
「僕はゾンビになった?」
状況を把握する為に身体を調べた。至る所に噛まれた跡。額にはぽっかり開いた小さな弾痕の跡。
自分の置かれた状況が分からない。
でも、落ち着いて状況把握に集中した。
周りは草原ばかり。明らかに東京ではないの確実。
というよりも日本なのか?
ここは何処だろうと考察ようとした。
それよりも血の匂いが鼻についた。
「血の匂い?」
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