第17話 最強の弱点
「僕が自分自身の能力を使いこなせてないだと!?」
「お前自身がその能力に過信しすぎでいる。不死身、コピー、完全服従。一見その能力を聞くと最強だと思う。誰もが羨むだろう。正直俺だって羨ましい」
清政はスカジャンを脱ぎ捨て、上半身裸になった。
スカジャン越しで分からなかった。清政の体には幾度の激戦を潜り抜けて来たであろう様々な傷跡が刻まれていた。
首にも、腹にも腕にも。一体何と戦ったらそんな傷が出来るんだと言わんばかりの傷。
見ているだけで痛々しい。
「だが、お前は!」
清政は遠くにいる僕目掛けて、人差し指で突いた。
その瞬間、腹に痛みを感じた。
石を投げられたような痛みが。
「お前の能力じゃ伝わらんはずだろ!!」
清政は僕に接近しながら指を突いた。その度に僕の腹部が凹み、痛みが徐々に蓄積されていく。
だが僕は動かなかった。
動けない訳じゃない。彼の言葉の真意が気になった。この傷に彼は何を伝えたいのか。
どうしたいのか、僕自身が知りたくなってきた。
どうせ傷はすぐに治癒するし。
「この技は俺がじいちゃんから受け継いだ"怒球弾"っつう技なんだ。指先に気を溜めて気の塊を撃ち放つ技だ。そして」
清政は僕の前に立ち、喉元に人差し指を突きつけた。
そして目にも留まらぬ速さで指を突いた。
その衝撃は喉を貫通し、喉元と口から血が止まらない……声がまともに出ない。
「遠くから撃てば小突く程度の痛み。だが、至近距離で撃てば喉くらいは貫通できる威力」
「がっ……」
「お前の能力だ。すぐに治るはずだ」
でも治るからとは言え、これは……痛い。
「お前は治るからダメージを受けても大丈夫と思ってんだろ」
「……うん」
「それがダメなんだよ。その回復するのが当たり前だと思っている事が慢心と言うんだよ」
「つまり君は何が言いたいんだ!」
「最強の能力がお前を弱くする」
「何故だ!最強は最強なんだろ!それ以上でもそれ以下でもないだろ」
その時、再び清政が拳を突いてきた。
二度は喰らわん。と、今度は拳を受け止めた。
反撃をしようとどの技でやってやろうかと考えていると。
「それが問題なんだよ!」
清政は僕の顎に膝蹴りを喰らわせ、僕の額に指を当てた。
いつでも殺せると言う意味なのだろうか、指を当てたまま清政は喋り続けた。
「強さへと慢心こそが弱さになる。努力もなしに手に入れた力をお前はどれだけ使いこなしている?いろんな技を適当に組み合わせているだけで、無双できるとでも思ってんのか?」
「だって強い能力をコピーして来たんだ。強いに決まっているだろ」
僕の言葉に清政は指を離した。
「なら、もっともっと力を使ってみな。俺もこれ以上技の出し惜しみはしない。隠されたとんでも技も見せつけてやるからよ」
「後悔するよ」
「お前の最強の心、へし折ってやる」
清政は笑っている。
やはり、勝てると踏んでいるからか?
なら、君が言った通り、先手必勝と行かせてもらうよ。
逆に僕が君の心をへし折ってやる。
「時間停止!!」
技を発動した。
フィールド内の全ての時が止まり、清政の動きも止まった。
清政へと近づき、思いっきりぶん殴ってやる。
何回も何回もいたぶられたお返しだ。
これで──
「ごふっ!!」
「敵を前に余裕ぶる余裕があるなんて良い御身分だこった」
な、何だ!いきなり、いきなり清政が腹を殴って来た。
時は止まっていたはず。
「言ったろ。出し惜しみは無しだってな!」
「何故動ける!!」
「正解は……戦いの後!」
そう言って僕を思いっきり蹴り飛ばした。
すぐに態勢を整えて、反撃に移った。
右手に剣を出して振るった。だが、清政は一歩下がって攻撃を避けた。
続き様に左手に槍を出して突いた。今度はしゃがんで避けた。
それならと。今度は固い鱗に覆われた龍の尻尾を生やし、身体を捻ってフルスイングした。
「だから動きが読みやすいんだよ!」
清政はしゃがんだ状態で攻撃を避けつつ、飛び込むように距離を詰めて来た。
武器が使用できない間合いに入られた。拳を突き出した瞬間に僕は清政の背後にワープした。
大きく拳を突いた事により隙が生まれた。
再び炎の刻印を纏ってすかさず攻撃を仕掛けた。
「はぁ!!」
この攻撃は当た──
じゅっ!
肉が焼けるような音に目を疑った。
清政が炎の拳を素手で受け止めていた。
こいつ。馬鹿か!?
「へへ……また隙だらけだぜ!」
清政の顔からは焦りもやせ我慢も感じ取れない。
本当に何も感じていないのか!
僕が焦りの表情を見せたのか、清政は掴んだ腕を引き寄せた。そのまま勢いで思いっきり頭突きを喰らった、
清政は拳を引き、拳に力を込め始めた。
分かる事は一つだけ。彼の拳に莫大なエネルギーが集中している。
あの時戦った勇者よりも高いエネルギーだ
「喰らえ!!蒼穹怒球弾!!!」




