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刻印戦記〜カミグライ〜  作者: ワサオ
第三章 ユナイテッド編
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第16話 実戦訓練

「ここが実戦訓練場だ」


 清政に案内された実戦訓練場。

 部屋の大きさは体育館片面コートぐらいのサイズかな。

 何も置いていない。真っ白で密閉された空間であった。


「広いっちゃあ広いけど、実戦訓練にはちと狭いんじゃないかな?」

「ところがどっこい。ここが密閉なのはマルチ・エリア・システム。通称”M.E.S”によってこの部屋、様々な状況下の疑似空間を作り出せる。こんな感じで」


 清政は腕、腕時計のような物を装着させ、画面より浮かび上がったモニターを操作する。

 すると真っ白な部屋が、いきなり東京のスクランブル交差点のど真ん中に移動した。


「東京!?それに人もいっぱい!!」


 交差点を人が行き交い、車もバスも飛行機も動いている。

 お店もやっている……活気づいている。感染が起こる前のように。

 あの時の光景が浮かび上がり、僕は東京の街に見惚れてしまった。


「凄い!こんな事が出来るの!?」

「所詮は疑似空間だけどな」


 歩いている人が僕の前を通ると、僕の身体をすり抜けてしまう。


「あっ……」

「リアルに見えてもあくまで人間はホログラムで投影された虚像だ。だがこのフィールドはちと違う」


 清政は後ろに飛んだ。

 だが、不思議な事に訓練場の範囲を超えた距離を飛んで着地した。


「広くなった!?」

「これがMESの凄さ。疑似空間は一定の範囲内じゃない。その世界そのものの作り出して、そこに転送されているんだ」

「そんな事ができるなんて……まじで未来じゃん」

「未来からの技術者もいるから出来る事だ」


 疑似空間。ゲームでも味わった事がないぞ。

 こんな臨場感あふれる空間なんて。

 すると、上空からアレックスの声が聞こえてきた。


『一通り説明し終えたかい?』

「理解が早くて、文句も無し! 若い奴は見込みがいいねぇ」

『君も僕も若いでしょうに』

「へへ、それもそうだな」


 清政が空に手を振り、返事をする。

 ボタンを操作して元の真っ白な空間に戻した。

 すると、二人とも離れた距離から元の位置に強制的に戻された。

 本当に凄い機能だ。これが現実にあれば、新たなゲームが作れそうな技術だと、変な目線で見てしまう。


『準備は良いかい!実戦訓練を開始するよ!今新しいデータを取り込んだから、そのフィールドで戦ってもらうよ』

「よっしゃ来い!!」

『フィールド転送開始!!』


 アレックスにより次なるフィールドが転送された。

 そのフィールドは、僕が過ごした崩壊した東京であった。


「ここは……僕がいた東──」

「オラァ!!」


 僕が空を見上げていると、突然清政に殴り飛ばされてビルに叩きつけられた。


「先手必勝!!」

「いきなり……過ぎる」

「卑怯とは言わせない。敵は待ってくれないからな」

「それは、そうだけさ……」

「お前も遠慮せずに来い!俺は負けないから」


 自信満々に言う清政に遠慮はいらない。

 今の攻撃もなかなかの一撃。体に染み渡るダメージ。

 彼もこのユナイテッドのメンバーと言うなら強さに自慢があるはすだ!


「分かったよ。全力で行かせてもらうよ!」


 僕は炎の刻印の力を発動し、身体に炎を纏った。


「やっぱりそれくらいじゃないと楽しめねぇよな!」

「行くぞ!」


 猛スピードで清政へと接近、清政が拳を構えた。

 二人の距離が1メートルに差し掛かった時、僕は魔法使いの能力を使用して、四人に分身した。

 四人に分かれた僕は全方位から一斉同時に攻撃を仕掛け──


「はっ!?」


 囲んだはずなのに目の前から清政の姿がない。

 何処だ!?

 僕は慌てて辺りを見渡したがいない。

 まさか後ろに?

 本体の僕が振り向いた瞬間に背後から拳が飛んできた。

 僕の顔面を真っ直ぐと捉えて、地面に殴りつかられた。


「ぐはっ!」

「初歩的なんだよ!」


 清政は僕の身体を思いっきり蹴り上げ、再びビルに叩き付けられた。それと同時に分身達も消滅した。

 確実に攻撃する瞬間まで目の前にいたはずなのに。なのに、何故消えたんだ。

 何かワープ的な能力なのか?


「どうして?って顔をしてるから答えるが、シンプル。早く移動しただけだぜ」

「早く移動してあんなの!?」

「出来るんだよ。強い奴は」

「くっ!」


 信じられない。あの異世界で僕は強かった。

 いろんな攻撃を避けてきたし、見切っていた。

 なのに、こんなヤンキーみたいな清政の動きを読めないなんて。

 まだ僕は信じられなかった。

 速度なら僕だって。

 僕は炎の刻印を発動したまま、ワープした。

 もちろん、清政の背後に!


「これな──」


 僕が現れた瞬間に、後ろを振り向こうとする清政と目があった。

 ニヤリと笑った清政。まるで僕が後ろから現れるのを分かっているように。

 振り向き様に顔面に裏拳をかまされた。怯んだ僕に清政は腕を振りかぶって腹部を突かれた。


「がはっ!!」


 斬られても痛くないのに、何だこの痛みは……

 ただの拳なのに。


「そらっ!!」


 再び大きく腕を振るって僕は顔面から殴り飛ばされた。

 車に激突。その衝撃で車は爆発を起こした。


「能力が強いのは正解だ。不死身に刻印にワープと。だが、それだけじゃあ勝てない」


 それだけじゃダメなのかよ。


「じゃあ!何が足りないんだ!もっと強い力か!」

「それはお前自身が能力の強さと比例して弱い事だ」

「僕自身が?」

「そうさ。お前はその強さに頼り切っているんだ!」

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