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刻印戦記〜カミグライ〜  作者: ワサオ
第三章 ユナイテッド編
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第15話 変人だらけの空間

 

「作戦と言っても、あの繭の中にいる女の子を助ける。と言えば簡単やもしれん。でも、そうは行かんもんなのだよ」

「どうしてさ?」

「繭の周りにはインフェクターに感染した傀儡が守っている。だから、それを突破しつつ。繭へと侵入する。露払いはユナイテッド実戦部隊が排除する」


 それが清政と兵次らの事である。

 彼らも戦闘に加わると言う事か。


「よろしく頼むな。大将さんよ」


 そう言って清政はまたも僕の肩を叩いてきた。


「僕が……総大将か」

「そうさ。お前が死んだら戦いは終了だ。だから、お前を少しの間だけ鍛え上げる!」

「はぁ!?鍛えるったって、僕はもう十分強いんだよ!鍛える必要なんてないよ!そんな時間だってないし!」


 こんな所でのんびりしている暇なんてない。

 少しでも早く元の世界に戻って、事を終わらせたいんだ。

 僕が渋っているとキイラが答えた。


「ユナイテッド本部は別の次元同士を繋ぐ道"マルチバース空間"と呼ばれる言わば部屋と部屋を廊下のような空間にある。時間の経過はもっとも遅いとされる空間さ」

「つまりは時間はあるって事?」

「うん。あちらの一分がこちらの約8時間に及ぶ。少しは時間があるはずだよ」


 少しの時間は出来た……か。

 その一分でも大勢の人々や僕の家族が被害に──

 でも、彼らが言っていたように無策で突っ込むよりか、訓練して少しでももしもの時に備えた方が良い。


「分かった。特訓を受けさせてもらう!」


 僕の決意に清政は嬉しそうに肩を組んできた。


「少しだけでも鍛えるのと鍛えないのではかなり違うぜ。独学で強くなるのもいいが、誰かの手を借りてもっとこだわりを教えてもらうのも悪くないぜ」

「能力を多種多様に使えるようにしよう」

「よし来た!」


 やる気に溢れているのか、清政はより強く肩を組む力が増す。

 兵次も清政なら任せられると思ってるのか、安心した様子で後押しをした。


「実戦は君に任せる。手加減はなしで良いから」

「訓練に手加減なんていらねぇっつの。いつでも全力投球だよ」

「手加減の意味を知らない君なら適任かもね」

「言ってくれるねぇ」


 そして僕は実戦訓練施設へと移動した。

 僕らを見送るキイラは兵次に聞いた。


「彼に任せて良いのかい?」

「僕らのような頭の固い奴より、彼のような頭が豆腐くらい柔らかい方が金吾君の心を動かせるのさ」

「豆腐のようにねぇ」


 道中、清政は色々と話してくれた。


「今回の作戦には俺もキザ兵次以外も召集できたメンバーらで露払いを行う」

「何人くらい実戦メンバーは所属しているの?」

「一般の兵隊のように何万、何十万とはいない。今時点だと二十人もいないくらいかな」

「そんなに少ないの!?」

「当たり前だ。少数精鋭?ってもんなの。俺ら質より量」

「逆でしょ量より質でしょ」

「そうだっけな、ははは!」


 呑気に笑う清政。

 でも久しぶりに人とまともに話しているのかもしれない。

 ずっと異世界では一人だったから。


「ビヨンドはいるか!ビヨンド!」


 清政は上や下を向きながら誰かを呼び始めた。


「ビヨンド?」

「そいつも今回の作戦に加わってくれるぞ。はじめはビックリするだろうから今のうちに合わせてやるよ」

「ビックリ?」


 その時、僕らの眼前に真っ白い顔をした人体模型のような男がワープしてきた。


「うわっ!!」

「うおっ!!」


 僕も清政もいきなりの登場に思わず尻もちをついてしまった。


「私をお呼びでしょうか」

「いきなり目の前に現れるなって何度言ったろ!」

「申し訳ないです。大声で呼ぶもんで、すぐにでも私に会いたいのだと」

「会いたいっちゃあ会いたいけど、ドアップすんな!」

「ですけども、私は──」


 二人がしばらく漫才のようなやり取りを繰り広げ、ようやく清政からの説明が入った。


「まぁ、コイツがビヨンドだ。見ての通り人間ではない。コイツの次元で作られた超合金ロボットみたいなもんだ。めちゃくちゃ強いぞ」

「ビヨンドです。よろしくお願いします」


 ビヨンドが手を差し伸ばした。

 僕は戸惑いながらも握手を交わした。

 だが、ビヨンドは表情を変えずに、僕の目をじっと見つめて中々離そうとしない。


「な、何か?」

「貴方から遺体とも言える腐臭を感じますが、生体反応は正常ですね」

「……僕の事は、生きるゾンビと思ってくれればいいよ」

「なるほど、後で皮膚の一部の採取させてもらっていいですか?私も研究をしたいと思うので」


 本当に研究者が多いなここって。

 呆れてしまうほどに。


「ま、まぁ。少しくらいなら……」

「ありがとうございます。では、二人の訓練の後に」


 そう言って一度深々と礼をすると、ビヨンドは僕らの前からまたワープして消えた。


「まっ、いつもあんなノリだから気にすんな。ユナイテッドは変わり者だ。人間もロボットも」

「そうだね……」

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