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刻印戦記〜カミグライ〜  作者: ワサオ
第二章 東京編
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第12話 因縁の決意

 

「獅子野ちゃんがインフェクターに!?」

「そう。彼女は君が死んだ少し後に、現れたインフェクターに精神汚染をされてしまったようだ。インフェクターは人に宿る心の闇を糧として増殖していく。彼女の闇は相当深いようだ」

「そうなのか?」


 獅子野さんが、まさかのインフェクターに汚染された人物だなんて。

 嘘だろ?と言う反面。まぁ、あんな人間だから汚染されてもしょうがないだろう、としか思えない。


「それに君を選んだのはもう一つ。その力もだが。彼女の関係性が深い人物だからだ」

「僕が?獅子野さんと!?」

「そうだよ。長い間一緒にいたんでしょ?」

「何でそれを……」


 何で知っているんだ。

 僕が驚いていると清政が後ろから肩を叩いて来た。


「お前さん、散々良い事して来たんだからよぉ。あんな事やこんな事をよぉ。調べるこっちの身にもなってほしいよ」

「な、なぜそれも!?」

「こっちも仕事柄、敵さんの情報もしっかりと調べておくもんだね」

「どんな仕事だよ!」


 色々と見られていた事に恥ずかしさが湧いて来た。

 顔が真っ赤になってしまう。


「リサーチだよ。リサーチ。お前さんと獅子野って女の情報を調べる為に記憶を確認したんだよ。そしたらって訳さ」

「人の恥ずかしい情報までも……」

「まぁまぁ気にするなって。別に他言はしないからよ!」


 呑気に笑っているが、他言無用じゃなくてこんな奴らにも見られた事が恥ずかしいのだ。

 だが、兵次が彼の顔を押し除けて前に出て来た。


「君は隣で作業を見ていただけでしょ」

「それ言うな」


 そして兵次は一度咳き込むと再び話を本筋に戻した。


「話を戻すと、インフェクターの突破方法に必要なのが君なんだよ。彼女を知る人間はもうあの次元には君しかいない」

「獅子野ちゃんの家族とか友人とか、親戚なり恩人なりよぉ」

「彼女の血縁者などは全員ゾンビウィルス感染になり、死んでしまった。他次元で蘇った君だけが彼女を知る最後の人物だ」

「いや、マジかよ」


 いきなり話が飛躍しすぎだろ。

 僕しかいないって、漫画のヒーローの立場じゃんかよ。

 呆気に取られていると、次に清政が話した。


「あの女の心の中にあるインフェクターの邪念を打ち消す事が目的だ。一度は心を開かせたお前が再び開かせて、奴の心に入り込み、心の闇を見つけるんだ」

「心を開かせる?」

「そうだ。そして俺らがその手伝いをする。お前が奴の心に入り込むまで。時間がないんだ。細かい事は後で説明するから、早く来い」


 早く来いってそんな事言われても……


「自分の世界を守るか。それとも、見捨てて他の次元をも巻き込むか。君はどっちを選ぶ」

「いきなり、そんな事言われたって……」


 兵次が二択を迫って来た。

 正直言ってどうでも良い。

 自分で言うのも何だけど、今の僕はヒーローと言うよりヴィランよりだからな。

 むしろ、この能力で一つの世界を破壊してしまったからな。


「今の僕はそんなのやる気起きないよ。最悪僕は別の次元に逃げれば良い話なんだから」

「君にはそうかもしれんが、君の家族はどうなる。お父さん、お母さん、お姉さん、ペットの猫ちゃん。近所の仲のいいスーパーのおばちゃんと。全員を見殺しにする気か」

「……」


 そんなの卑怯じゃんか。大事な人達の話を持ち出すなんて。

 でも、獅子野ちゃんの家族のようにもう……死んでいるんだろう。僕のやる気を出させる嘘だ。そうに違いない。


「君は嘘かと思ってるかもだが、もしも生きているならどうする」

「!?生きてる?」

「それはわからない。そっちの情報は調べてないんでね。君が断るとなれば、僕はこれ以上手助けもしない。次の次元での対策を打つ会議を行うだけ」


 僕の目で確かめてやる。家族は生きてるって。

 僕は次元の穴を開けて自分の世界に戻ろうとした。

 だが、清政がその手を止めた。


「対策打たずに無策で行く気か」

「だって君達が勿体ぶるからだろ!」

「行ったところでお前は感染するだけだ」

「僕は無敵なんだから大丈夫だ!」


 僕は絶対的な自信がある。

 感染なんかする訳ないんだ。


「いい加減しろ!」


 清政が僕を思いっきり殴り飛ばして来た。


「能力の強さに過信して戦いに行く奴がいるか!敵の情報も知らずに戦場に突っ込む気か!」

「だけど、両親が……皆んなが」

「だからこそ、俺らに手を貸せ。インフェクターの感染が広がって時間はそうは経ってはいない。俺らが出来る事をやって生きている人間を助け出すんだよ。復讐なんか忘れて、善に生きろ」


 自分でももう分からない。

 自分が何故この力を手に入れたのか。復讐の為だとか、自己満足じゃんか。

 ただの利用された男の哀れな一生だ。

 でも、家族は生きてるって信じたい。

 またあの世界に戻るとするなら、僕は──


「分かった。君達の協力を受ける。ただし、獅子野ちゃんは助けてから殺す。いいね」

「そこはご自由に」

「そして!」


 僕は清政を殴り返した。正直スカッとした。

 清政はぶっ飛ばされたが、倒れたまま笑っていた。


「ははは!!吹っ切れやがったな!それで良いんだよ!それで!」

「……変な奴。でも、少しはスカッとしたよ」

「だろ!思いきってやりゃあ何でも気持ちいいもんさ」


 奴の言う通り少しは気分が落ち着いた気がする。

 僕と清政がハイタッチを交わすと、装皇がこちらに来た。


「話は終わったようだな」

「……はい。獅子野ちゃんを殺すと言うよりも、自分の帰る場所を探すつもり行きますよ」

「なら、我々はこれにて身を引く」

「え?羅将のアンタらはこれ以上なにもしないの?」

「しないと言うよりも、脅威はインフェクターだけじゃない。お前が想像するよりも果てしない量の脅威が存在する。人間達で対処できるなら我々は深くは関与しないという方針でな」


 装皇は手を差し出して来た。


「え」

「健闘を祈るぞ。戦士よ」

「あ、はい」


 僕は何倍もでかい装皇と握手を交わした。

 そして装皇はいまだに寝ている壊皇を掴んで、この空間から消え去った。


「帰っちゃった」

「託されたからに頑張ろうぜ」


 そう言って僕の肩をまた清政が叩いて来た。


「うん」

「なら、行くぞ。俺らの支部に」

「支部?」


 僕が不思議に思っていると、兵次が言う。


「僕達は次元の危機に立ち向かったり、対策を打つ機関。次元監視機構"ユナイテッド"のメンバーだから」

「ユナイテッド?」

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