第11話 インフェクター
僕は兵次から話を聞く事となった。
「僕らが来たのは君の力を借りに来た。インフェクターを倒す為に。他の次元からね」
「他の世界?僕の世界じゃなくて」
「まぁ、話をすると長くなるから簡単に言うと他の次元から来た者と思えば良いよ」
他の次元?
漫画とかであるマルチバースって事なのか?
「そっちの後で聞くよ……それよりもインフェクターって何さ」
「"インフェクター"。次元侵食をする上位悪魔だ」
色々と情報が入ってきて、さっそく頭がこんがらがって来た。
でも、上位悪魔は以前吸収した悪魔が言っていた気がする。悪魔の中でも最上位に君臨する者だと。
「でも、上位悪魔ならアンタらでも十分に対処出来るんじゃないのかい?僕より強い君たちなら簡単でしょうに」
「それが行かないからお前の力を借りに来たんだよ」
「どうゆう訳?」
聞かないと話が進まない。
だから僕は彼の話を疑心暗鬼で聞くことにした。
「インフェクターは実体を持たない存在。ウィルスと言って良いかもしれないね。奴は無差別に次元を越えて、心の闇を抱える者に侵食して行き、その次元に存在する者の心や身体をインフェクターが蝕んでいく。侵食されたものはいたら闇の因子と化し、その姿を消してしまう。そして地球を超えて、あらゆる星を侵食し、銀河や宇宙を超えて次元を破壊してしまう」
な、何を言ってるんだ。
何がしたいのか分からず、何が起きているのか分からず、僕は頭がこんがらがって来た。
「おい、兵次。コイツ、混乱してっぞ」
「……流石に一気に話し過ぎたかな……」
「あぁ、俺だっていきなりこんな事言われたら、こうなっちまうよ」
それから僕に分かりやすいように二人は話してくれた。
主に清政のおかげか、話がだいぶん分かりやすくなった。
「要約すると、インフェクターは僕の世界以外もある次元へと無差別に現れる。そして生命の精神に乗っ取ってウィルスのように感染していく。その後、星そのものも飲み込み、やがて宇宙の星々、次元を感染させて次元の生命維持活動を破壊してしまう。その後、インフェクターは次の次元に移動し、同じ事をすると」
「そうゆう事、お前は理解力あって助かるよ」
「あ、ありがとう……」
嬉しそうに僕の肩をドガバキ叩く清政。
少し痛い。
そして兵次が総括を報告する。
「すなわち、インフェクターを放っておくとマルチバース中に存在する全次元が危機に陥る」
「ま、マルチバース?話が飛躍しすぎじゃないか?」
「そんなのじゃなかったら、僕はこんな所に来てないよ。インフェクターが侵食する速度は約数ヵ月と言われており、一年に3、4の次元が奴によって侵食されて次元崩壊を起こしてしまう」
「マジかよ」
そんなヤバいのが僕の知らない世界線で活躍していたなんて、考えたこともなかった。
ていうか、ウィルスで世界が感染したって事は……
「僕の世界にインフェクターが現れたから、ウィルスに塗れたって事?」
「あぁ、それはインフェクター関係ないね。そうゆう運命だよ」
「え?それ関係なく!?」
兵次は平然とした顔で頷いた。
「えぇ!じゃあ僕の世界はインフェクター関係なく!?」
「うん、だけど君の世界にインフェクターが現れたのは本当だ。君が死んでからね」
「っぱ、そうだよね。だから、その次元の中でも力を持つ僕を探していたの?」
「正解」
話を聞き、やっぱり色々と情報が頭の中を錯綜する。
僕の世界にそのインフェクターが侵食しに来ている。
でも、僕しか助けられないのか。
「僕の世界には君達のような力を持つ人間はいないの?」
「そうだね、まだ存在しないってのが正直な所だね」
「まだいないの?」
「多分、未来の世界にね」
「……おぉう」
「それと君を頼ったのはもう一つ」
兵次はスマホを取り出した。
「そう、それがこれだ」
僕に画面を見せつけて来た。
画面には見慣れた奴が写っていた。
その画像を見た途端、冷や汗が止まらない。コイツが関係しているなんて……
「それって……まさか」
「奴が選んだ宿主が、君もご存知の"獅子野千代"だ」
「し、獅子野ちゃんが!?」




