第10話 不良のレッテル
う……僕は何を……
どれくらいか知らないが僕は意識を失っていた。
ゾンビになるって必死に耐えていたら、意識が遠のいた所で記憶が……
「お目覚めかい、金吾君」
目を開けた僕の目の前にいるのは、羅将の二人とロングコートの男とオールバックの男の人間?
「き、君達は!?」
「僕は神沼兵次。祓魔師って悪魔祓いを生業にしている者さ。少しだけ縛らせてもらってるよ」
「この鎖は!?」
地面から生えている鎖に動きが封じられている?
「今は金吾君の能力は封じられているよ。その鎖の効力でね」
「なんで僕を知っているんだ!それにこの鎖は!」
「少しだけ話をさせてはくれないか。ちょっとばかし。そしたら鎖は解いてあげるよ」
「え?」
「手荒な真似はしたくないからね。彼のように」
彼とは多分壊皇の事だろう。
「君は自分の能力まで把握している。そのゾンビ能力を」
「分からないよ。そんな事言われても。あっちの世界に着いた時には自然と身についていたんだから」
「暴走した事は?」
「今回が初めてだよ。こうなるのは」
「なるほど……戻り方も分からないのか」
まるで尋問みたいじゃないか。縛って色々と聞き出すなんて。
彼らの事もなんも知らないのに。
「おっす」
「僕の話している途中だろうが!」
「いいじゃんかよ。俺だって話したいんだし」
兵次と名乗る男の後ろからヤンキー風の男が話を遮り、姿を現した。
「俺は廣瀬清政。俺も強いからよろしくな」
「よ、よろしく」
いきなり強いとかマジで武闘派ヤンキーの言葉じゃんか。
すると清政と名乗るヤンキーは腰に手を当てて笑った。
「お前、今俺の事ヤンキーと思ったろ」
「え?」
「顔を見りゃあ分かんだよ。人を見下しているって。自分の方が強いと自信に溢れているからそう思えるんだよ」
縛られて身動きが取れないからって、言わせておけば。
「僕の方が君達よりも強いに決まっているだろ!何せ僕は不死身なんだから!!」
「あのなぁ……」
「先程の壊皇って奴にも僕は負けてなかった!妨害が無ければ勝敗なんて──」
痛ッ!!
清政がいきなり顔面に拳を叩き込んできた。
しかも全力の振り被りで。
「鼻血が……それに歯が……」
「お前の能力なら、すぐに戻るから何番取れたっていいだろ」
い、痛みが引かない……
ズキズキと鼻と口から痛みが次第に顔全体に広がっていく。
「おっと、すまなかった。その鎖に縛られている間は能力を失っているんだったな!」
ぐふっ!
今度は僕の腹部に拳を。
こんなに痛いのはゾンビに噛まれたあの日以来だ。
「くっ!縛られているからってイキるんじゃいないよ!こんな鎖さえなければ僕は君達なんかすぐにゾンビ化させられるのに!」
こんな鎖さえなければ、僕は彼ら二人なんて殺せるし、その力を奪えるんだ。
そして情けなく跪かせてやるんだ。
「あのなぁ……心の中でイキるのは全然構わんから何も言わん。だが、言っておくが俺を含むここの四人はお前なんて本気を出せば軽く倒せるんだぜ」
「そんなの嘘だ!さっきのオッサンだって──」
そうだ。さっきのオッサンだって良い勝負をしていたはずだ。もう少しすれば勝てたに違いない。
「お前にとっては良い勝負かもだが、あのイケオジは本来の力の100分の1、いや1000分の1も出してないんだぜ」
「え?」
「当たり前だろ。羅将の力は本気を出せば次元そのものを破壊出来る程の力を持っている。だからこそ、腕を輪を付けてその力を制御しているんだよ」
そんな、僕が全力で戦っていたのに。あの壊皇からすればただ遊んでいただけなのか。
持ちうる力を全て使用したのに、それでも勝利には程朝遠かったのか……
「不死身だろうとも奴らにとっては造作もない事って訳。そして俺達もオッサンらまでとは言わないが、お前の不死身を攻略する方法なんていくらでもある」
僕は最強じゃなかったのか。神の能力も、魔法使いの能力も、刻印の能力も持っている僕が。
そう考えると身体の力が無意識に抜けてしまった。
「兵次。もう良いだろ。飾りを解いてやれ。ずっとは流石に辛いだろう」
「流石に力の差を知ったら、力も無くなるよね」
兵次が手を突きつけると、僕を縛る鎖は解かれた。
やはり僕は……最強じゃない。
いや違う──!
鎖が解かれた瞬間に僕は、清政に向かって目からビームを放った。
どんな事をしても僕が最強なんだ。この能力がある限り。
「勝つのはぼくだ!」
だが、清政は首を傾けて避けた。少しだけ髪の毛を焦がして。
自分の髪が焦げてしまった事を知った彼は額に皺を寄せて、拳を振るわせていた。
「なぁ、兵次ぃ」
「時間がないって言っているよね。壊皇さんと同じでここで道草食う気?」
「一般だけだ。躾の時間だ」
これはまた僕と戦うつもりか……
だが、人間相手に負ける気は──しない!
「と言いたい所だけど、これ以上は待てないよ」
兵次が僕と清政の間に刀を振って割り込んできた。
「喧嘩をしに来たんじゃないよ、僕らは。ここに来たのは"インフェクター"の現状を彼に知らせる為に来たんだよ」
「インフェクター?」
「あぁ、今現在僕達が追う悪魔の事さ」




