第8話 破壊神
「‥‥ここは?」
「おお、破壊神サーガス様がお目覚めになられた!」
「やりましたな!」
「そうか、我は眠っていたか。うくく、体が動かない、まだ力は戻りきっていないようだ」
「我々は少し早く起きてようやく力を取り戻したところです」
「忌々しい人間どもめ、力が戻ればすぐにでも滅ぼしてやりたいところだが」
「ロマジラ、一足早くここから出て調べてきてくれ。人間どもに見つかりここを悟られぬように気を付けるのだぞ」
「承知しました、ではひと暴れしてきます」
「話聞いてた?」
「ハハハ、よいよい。お主は血の気が多かったよな」
「許しをいただけたとはいえまだサーガス様の力が戻っていないんだ、ほどほどにな」
「わかりました」
昼ご飯を食べ武器屋へ。
「いらっしゃい」
様々な武器が並んでいる。俺が装備できるのは剣と盾だけど盾は置いてないな、とりあえず剣だけでも買おう。銅の剣を購入し店を出て今度は防具屋へ。防具は頭、鎧、脚、手と数が多い。お金はあるし一通り揃えるか。盾をみつけて確保、続けて銅の兜等の銅シリーズを探し出しすべて持って行って購入、装備はこんなところか。ギルドに戻り掲示板の前に立ち良い依頼があるか探す。仕事の内容は魔物退治から探し物まで何でもあり、稼ごうとするなら魔物退治が一番かな、依頼数もこちらが圧倒的に多い。安全な仕事は安かったりする。魔物退治は命懸けだから当然高額になるわけだ。
「この地域最弱の魔物ことレッドビークを三体討伐、これにしよう」
初期に戦う魔物に関してはすでに調べてある。赤いくちばしに二足歩行の鳥型の魔物。縄張りに入ると巣穴から飛び出し襲ってくる。痩せていていて素材なしの魔物。一段階上に肉が取れる魔物がいて本来はそちらがいいが、混んでいて人目があるからスキルを試したいという関係上しばらくはこちらに。依頼紙を剥がし受付に持っていきライトボードと一緒に提出。
「レッドビーク三体討伐ですね。今手続きします」
受付の子は依頼紙を奥にしまい、ライトボードに差し込み端子を接続して情報を読み込ませこちらに渡す。
「今回初めての討伐依頼ですね。討伐の証を忘れず三つ持ってきてください。それから黒獣石も持ってきていただければ各種の品に変換してお渡しできます。では気を付けて」
討伐の証は倒した魔物の死体から一部を切り取った物、レッドビークはくちばし。そして魔物を倒すと黒獣石という水晶が生成され死体の上に浮き上がる。これをギルドに持っていくと変換器を使ってお金や素材に換えてくれる。素材の用途は武器や建材等様々。これらは基本売らずに持っておいた方がいい。素材は鍛冶や錬金術によって加工することもできる。運が良いと変換後にレアアイテムが出ることもあるとか。こちらは状況によっては売ってもよし。ライトボードに依頼内容が載っている、こうやって確認できるわけだ。街から出て狩場に向かう。どの狩場も距離が近いから走竜は不要だ。少し歩くと目的地に到着、周りを見渡すが誰もいない、よしよし予定通りだな。
「戦闘準備だ」
この世界の戦闘はRPGに似ている。HPが無くなれば死亡、スキルはSPというポイントを使用する。強力なスキルほど使用量が多く最大値は5、ポイントは自然回復する。スキルは同じ効果の重ねがけは不可能でかぶった場合は強い効果がだけ残る。レベル制で魔物を倒すと経験値を入手できてレベルが上がると各ステータスが上がりスキルを覚えたりスキルの能力が上がったりする。スキルの同時装備は四つまで、覚える数は個人差あり、それでも皆四つ以上は覚えるようだ。
「スキルを使おう」
まずは防御スキルのゴーディプロテクトを使用。能力は全員の防御、魔法防御、速度アップ。全属性50%耐性、ダメージ50%カット、使用者のみ攻撃された場合敵対心アップ。PT全員が硬くなって速くなるというこの世界ではとんでもなく壊れなスキルだ。消費SPはもちろん最低消費の1。そして属性なんて関係ないねとばかりにルール無用の強力な属性耐性を持っている。何とかここを通り抜けたダメージさんもトドメのダメージカットで更に少量になってしまうだろう。もう滅茶苦茶だ。
「ゴーディプロテクト!」
どれだけ硬くなったかはわからないが速さは動けばわかるか、試しにあの岩場まで走ってみよう。
「せーのっ、うわっ!!」
岩に向かって駆け出した瞬間、速すぎてコントロール不能に陥り止まれず岩にめり込む。
「ここまでの速度は想像していなかった」
力を入れ岩から体を離す。岩に突き刺さってもダメージがないから相当な防御力になっていそうだ。今度はセカンドスキルの騎士のたしなみを確認。
「PT全員SP回復速度アップ、最大HPアップ、体力アップ、常時リジェネ」
これもぶっ壊れ、戦闘のかなめであるスキルを通常の冒険者より早く使うことができる。体力が大幅にアップしてしかも徐々に回復する。ディフェンダーの騎士というだけあって防御寄りのスキル構成だなとオーバーフォーススラッシュに目を背けつつ一人納得する。
「討伐を始めるか」
準備が完了し魔物の生息地に足を踏み入れる。歩いていると地面に空いた穴から一匹の鳥が飛び出してきた。お目当てのレッドビークだ。剣を構え戦闘態勢、スキルのオーバーフォーススラッシュを使ってみよう。内容をもう一度確認してと。敵単体に攻撃力800%の8回攻撃、攻撃後に闘気よる追加ダメージ。200%の確率で敵の攻撃、防御、速度ダウン、敵対心アップ、必中、距離無限。くちばしに当てないよう横に回り込みスキルを発動。
「オーバーフォーススラッシュ!」
スキルを使用した瞬間に敵が青色に光り各種デバフが即時発動。近づかずその場で剣を振るとレッドビークに斬撃が走り一刀両断、そのまま事切れた。距離無限は便利だな。
「強いっていいね、後はくちばしを切り取ってと。ふふふ、ここから俺の最強異世界人生が始まる、ってええっ!?」
斬撃がもう一つ、さらに一つと合計八回斬りつける。すでにレッドビークはミンチの状態、もちろんくちばしも粉々だ。相手を倒しても問答無用にスキルが続くのか。
「おいおい、ということはまさか」
今度は打撃を受けている状態になる死体。巨大な鉄球を勢いよくぶつけたような攻撃が四方八方から死体めがけて発動する。これも八回きっちりおこなわれ、残ったのはミンチ以上によくすり潰された死体。見事なまでのオーバーキル!
「は、はは。強すぎるのも問題だな」
ま、まあいいさ。レッドビークは弱いから攻撃スキルを使わなくても倒せるだろう。魔物を倒したことで経験値を入手、そして死体の中から黒いもやのようなものが浮き上がり形を形成し、最後には黒い水晶に。
「これが黒獣石か」
黒獣石を入手し袋に入れ狩りを続行。レッドビークを発見後通常攻撃で戦闘、労せず倒しクチバシを三つ入手。目的を達成し一息つきやれやれと街へ帰った。
(圧倒的な力‥‥、見つけた、彼が恐らく。しかしこれ以上の力を持つ者がいるかもしれない、もう少し調べるとしよう)
ギルドに戻ってくちばしと黒獣石とライトボードを渡し精算。石は変換器に入れられお金と素材が出てくる。レアアイテムは残念ながらなし。
「依頼達成です、お疲れ様でした」
報酬を受け取る、もっとも簡単な討伐ではあるが攻略成功。ギルドのテーブルにつき休憩しながらどれだけ稼げばいいか頭の中で簡単に計算してみる。今の依頼を数枚達成するだけで宿代ご飯代を得られて十分生活していける、これなら冒険者として生きていけそうだな。満足げにしていると先ほどの受付の子が受付から出てきて話しかけてきた。
「レッドビークの狩場に小さな滝があって今日そこで事故が起きました。狩りの際は気を付けてくださいね」
新規冒険者一人が滝から落ち意識不明になったとのこと。明日もあそこで狩る予定だ、狩りを始める前に確認だけしておくかな。
「そうだ、十五歳からお酒を飲めるんだったな」
冒険者デビューお祝いといこう。ギルドを出て店へ。お金ならかなりあるからたらふく食べて飲むとしよう。