第6話 スキルが長い
翌朝、冒険者になるべく冒険者ギルドへ向かう。街道を歩き冒険者ギルドと書かれた目立つ大きな看板がある三階建ての建物に到着。扉を開けギルドに入る。中には多数の冒険者たち、初心者の街ということで少年少女が多く皆新規冒険者なわけだが装備をしっかり身につけていることもあり強そうだ。さて手続きを済ませてしまおう、空いている受付の女性に話しかける。
「冒険者希望の方ですね、こちらのご案内に目を通して問題がないようなら氏名をお書きください」
冒険者は危険な職業、その覚悟はあるかといった注意書きや契約内容が書かれた案内を受け取る。事前に内容は把握しているから問題はなし。ソシャゲだと読まないけど仕事だからね。ダンと名前を書き提出する。
「では少々お待ちください」
テーブルにつき座って待つ。
「世界の異変から十五年か」
「おかしな現象が立て続けに起きたんだったな」
「世界樹が枯れたり、邪悪な者を倒したとされる善なる兵器が砂になったり」
「あれから破壊神の信者が勢力を強めているそうだ」
近くのテーブルにいる冒険者たちの話声が聞こえてきた。世界の異変とは今から十五年前に同時に起きた不吉な出来事のこと。破壊神は古代文明の世界を破壊した邪神で古代人が作り出した人造神。あまりの強さに封印するしかなかったとされているが、大昔の話のため詳しい資料は存在せず実際には倒したのかどこかで眠っているのか本当に存在していたのかはっきりしていない。近頃信者たちはその破壊神が復活すると騒いでいるようだ。しかも信者の中には古代人の末裔を名乗る者がいるとか。末裔者は教祖になり破壊神をあがめれば救われると活動して世界各地で信者を増やしている。破壊神を祭ってどうするのって思ったけど暴れる神に祈りをささげるってのはよくある事ではあるし一応理にかなっているのかな。怪しい集団ではあるけれど。
「ダンさん準備ができました、こちらへどうぞ」
先ほどの受付の女性に呼び出されギルドの奥へと通された。そこには魔法映写機という魔法の力を使って撮影し写真を作り出す機材が置かれている。撮影には膨大な魔力が必要で繊細に取り扱わなければならないため使う人間と回数は限られるのだそう。魔法の力が必要だから現代の物とは似ても似つかない代物だ。撮影を終えると撮影者は非常に疲れた様子で部屋から出ていった。受付さんが来て誘導、さらに奥の部屋へ。
「こちらの部屋に入ってお待ちください」
部屋に入ると俺の他に五人の少年少女が座って待っていた。二人は一緒に竜車に乗っていた子たち、どうもと軽く挨拶をする。他三人は仲がよさそうに会話をしている、十五歳になっていればいつでも冒険者になれる、日にちを合わせたのだろう。少し待っていると男性の職員が箱を抱えながら部屋に入ってきた。
「お待たせ、では始めようか」
職員の男性は箱から大きな注射器のような物体を取り出し持ち上げてこちらに見せる。
「これからこいつで覚醒石を君たちに埋め込む」
覚醒石を打ち込まれると力が覚醒、レベルを上げて強化できるようになったりスキルを覚えたりと様々な効果を得ることができる。こちらに近づき後ろに回り、少しチクッとするぞと声をかけ首に注射を打つ。太めの針の注射で刺された感覚がして結構痛い。
「おおう、これは」
覚醒が始まる。一瞬目の前がブラックアウトし、視界が戻ると力が沸き上がる感じがした。今まではとは違う自分になったようだ、まるで生まれ変わった感覚を味わう。注射器から小さいカードが出力されそのカードを俺に渡す。五人にも覚醒石を埋め込む。次にスマホのような物を俺たちに配る。
「ライトボードといって、これを使い手続きをしたり仲間にしたりと冒険者必須の道具だ。先ほど渡したカードを差し込むと起動する。本人以外は操作できない仕様だ」
カードをセットすると画面が光り起動。スマホのような操作感覚のライトボード。充電は不要で空気中に存在する魔力をエネルギーとしているとか。エネルギーの技術面に関しては現代社会を超えている。さらっと出したがとんでもない道具だ。
「よーし、自分の能力を確認してみろ」
言われた通りライトボードを操作して能力を確認する。ソシャゲをやっていたせいか操作はすぐに慣れた。
(俺は無属性のディフェンダー、剣と盾を使い敵と戦うクラス騎士か、これはまずいな)
兵種は大きく別けて、アタッカー、ディフェンダー、サポーターの三つがあり、基本的にアタッカーが当たり、ディフェンダーはハズレ扱いになる。属性は、火、水、風、土、光、闇、無属性の全七種類。火>水>土>風>火、光と闇はお互い弱点、無属性は有利不利はなし。
「どうだった?」
「ディフェンダーです」
「そ、そうか」
「まじか」
職員が引き周りがどよめく。大げさに見えるかもしれないがその反応は仕方がない。ソシャゲに似ていて強いアタッカーが大正義の世界だからだ。次点でサポーター。ディフェンダーを引いた場合は能力によっては冒険者をやめることを推奨されるほど。それくらい人気がない。非常に気まずい空気が流れている。
「さあ気を取り直して。次はスキルを見てみよう。スキルは二つ覚えるはずだ。それからセカンドスキルという自動発動のスキルも覚えただろう」
手を叩き急に気を使い明るく振舞う職員の男性、皆も苦笑い。まあまあ気にせず続けようか、考えるのは後だ。言われた通りスキル画面を開く。一番上のスキル、オーバーフォーススラッシュを確認する。名前からすると攻撃スキルか。確か事前情報だとこの世界では攻撃力百数十%アップだけとかシンプルなスキルを覚えるはず。ディフェンダーだからもっと弱い、威力が少し上がるくらいのスキルになりそう。下の欄に載っているスキルの説明を読む。
「敵単体に攻撃力800%の攻撃を8回、攻撃後に闘気による追加ダメージを8回。200%の確率で敵の攻撃、防御、速度ダウン、敵対心アップ、必中、距離無限」