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第5話 新人冒険者

姉さんと別れバルトワの街へ。街は大木から近くそのまま徒歩で向かう。平原から隣接する道に入る、横幅が広く土でできた道。現代のように全面アスファルトなんてことは当然ない。そう考えると今の時代って発展してるんだなと実感する。


「うん? あれは」


地面を足で叩きつけるように走行する生物がこちらに向かってくる。走竜という二足歩行の生物、ドラゴンというよりも恐竜の見た目に近く、頭が小さく足は太く筋肉質。この地域では一般的な乗り物として活用される。戦闘は不可で一人乗り。国や場所によって乗り物生物は変わってくる。また、個人で特殊な生物の乗り物を有している場合も。五体の走竜が俺の目の前を走りすぎていった。見た目からして冒険者かな、この先の狩場か街から街への移動だろう。彼らを見送り俺も街へと歩を進める。


「見えてきた」


バルトワに到着、相変わらず大きな街だ、人の数も凄まじい。全世界から集まっているから当然かもしれないが。


「今回は残念ながらバルトワが目的地ではないんだよね」


様々な施設があり街の中を歩くだけでも楽しめるが名残惜しいけど観光はまた後で。街に入り数匹の走竜が荷車を引っ張る竜車を発見、お金を払って竜車に乗り街から出ていく。目指すは新人冒険者が多数集まる街リマラ。冒険者になる場合は必ず専用の新人向けの街から始めることになる。リマラのような街はこの国にはいくつかある。俺以外にも少年少女が数人乗っている、おそらく同じ目的だろう。各街にある竜車を乗り換えて揺られながら旅を続けて二日、リマラの街前まで来ていた。大きな川が流れていて橋を渡ると小さな平原がありその奥に街はある。山に囲まれていて天然の要塞のような街。街の中に入り宿を取って街を散策。やはりというか俺くらいの世代の子が多い、皆新人冒険者かな。日が沈みそろそろ晩御飯、おいしそうなにおいが店から流れ出てくる。こいつはたまらんとふらふら匂いに誘われるように店の中へ。


「いらっしゃい」


席につき料理を頼む。お客さんが多いな、結構な繁盛店なようだ。野菜スープとパンと肉を乗せた皿を俺の前に出す。


「お待ち。見ない顔だね冒険者志望?」

「そうなんですよ」

「やはりね、肉おまけでつけとくよ、頑張ってね」


肉の上に肉を盛ってくれた。お礼を言い皿を受け取る。ありがたい、では遠慮なく。骨を持ち肉にかぶりつく俺、ふむふむ、竜人の国よりも少し味付けは薄めかな、でも美味しい。竜人の人達はみんな若い体育会系のような人たちだったから塩分が多めだったのかも。それにしてもこちらの世界に来てから食べ物は非常に充実している。会社員時代は頬がこけていて周りから心配されていたくらいだった。異世界へきてからの方が健康体で過ごせているな。思い起こせばパスタばかり、流石にほぼ炭水化物だけだったのはよくなかったかな、反省反省。


「満腹になったら眠くなってきた」


食事を終え宿に泊まってこの日は終了。翌日からも観光し街を一通り見て回った。竜人の国とは色々と違いがあるが元々現代で人間としてやってきたからかこの街にすぐに馴染んだ。竜人は竜に変身できることもありなんでも様々な施設が巨大で人間の俺は不便なところもたまにあった。飛んで移動なんてできないしね。こちらの方が正直住みやすいな。


「いよいよ明日か」


明日は冒険者ギルドへ行きついに冒険者に。街には慣れた、当初の目的は達成したしこのままのんびりと過ごすとするか。今日も街に繰り出し散策。お日様が昇りそろそろ昼どき、ご飯にしよう。店に入り料理を注文し昼食を食べていると隣でサイコロ遊びをしている若い男たちを見かける。お金を賭けているようだ。この国では賭けは合法、様々なギャンブルが存在している。少々気になり食事をしながら賭けの様子を眺める。


「やりたそうだな少年。どうだい一勝負?」


俺の視線に気が付いた男性がサイコロ賭博に誘ってきた。数個のサイコロを手のひらで転がしながらこちらに笑みを投げかける。賭けか、竜人の国は賭け事は禁止されていた。お金はまだまだ残っている。大人のたしなみとしてやってみるのもいいか、一勝負くらい問題ないさ。誘いに乗りサイコロ賭博をすることに。それからしばらくして。


「この辺でやめておいた方がいいんじゃないか?」

「もう一勝負!」


お金が底をつきかけていた。だけど大丈夫、冒険者になれば国からお祝いとしてお金が貰える。宿は取ってあるから最悪全額失っても問題ない。最後の大勝負、いくぜ!


「はい俺の勝ち。金がないならここで終わりだな、んじゃ」


大爆死。お金はすべて消え去り無一文に。やってしまった、ま、まあある意味予定通りではある。晩御飯と朝ご飯は抜きだがなんの問題もない、現代の時なんて数日間食べなかったってこともあったしへーきさ。こうして宿に帰りその日の夜は悔しさのあまりマクラを涙で濡らしたのだった。

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