第32話 始末屋
「ちっ、なんだよありゃ」
先ほどの攻撃から逃れた人間が数人。攻撃を仕掛けようと回り込んでくる。そこへ金属マスクの男が握った拳の上に乗せた金属の玉を親指ではじいて打ち出し攻撃を仕掛ける。
「へっ、こんな攻撃弾いて、ギィャーー!」
盾で防御しようとしたが弾丸が盾を貫通、脚を打ち抜き身動きが取れなくなる。さらに残りの者にも弾丸を発射、一瞬にして制圧してしまった。
「流石ですね、スカー」
「‥‥」
ギャンブラースカー、戦闘中は寡黙でギャンブルで生計を立てているという事が知られている人物。手を後ろに回し立っている。
「ちっ、応援か。だがまだ二百五十いる。てめーら、叩き潰せ!」
後方の部隊が彼らに向かって進撃を開始。
「マウス」
「ええ」
怪しい販売員マウスがスキルを発動。怪しい壺や絵画を召喚、そして仲間の身体能力が向上、バフスキルか。アギスがアイテム袋から銃を取り出す。この世界の銃は火薬ではなく魔法の力で弾丸を飛ばす魔法銃。さらにアギスがスキルを使う。
「ゴールデンバーングレイン!」
銃を構え集団に向けて弾丸を発射。うん? 一瞬銃口からありえない量の弾丸が出たような、気のせいか。特殊な弾丸のようで、一粒一粒が金色に光輝いている。
「グワー!」
「ひっ、ひぃ!」
弾丸は野盗たちを撃ち抜き、一瞬にして大多数を行動不能に陥らせた。残りはスカーが片付ける。始末屋さんたちも強い、この街は安泰だな。
「お見事」
「いやいや、セダさんには敵いませんよ」
残りはドブズと数人の取り巻きのみ。
「こ、こいつは勝てねえ、逃げるぞ!」
逃げ出すドブズ。あっけなく戦闘は終了、お疲れ様でした。
「後は私どもでやっておきますんで、セダさんたちは旅を続けてください」
「お願いします」
戦いは終わり解散、と木の上から見守っていたのだが。どこからともなく轟音が聞こえてきた。
「ありゃなんだ?」
指をさし上空を見上げるツバキ。そこにはこの星に流れ落ちてきた隕石が。
「ダンさん!」
「ああ、わかってる」
なりは小さいがこの辺り一帯は消し飛ぶくらいの破壊力はありそうだ。しかしなぜ隕石が? 偶然にしてはできすぎているが。そうか、ドブズの近くにいた取り巻きの一人がずっとスキルを唱えていた。彼は隕石を引き寄せていたのか。ソシャゲのスキルの中には超強力だが出が遅かったり、条件をクリアしないと威力を発揮しないようなスキルがたくさんある。今回は時間がかかるが威力は極大といったスキルか。
(くくっ、かかった。始めから正攻法で挑んでも勝ち目がないことはわかっていた。そこで奥の手の隕石だ。少人数で挑んでスキルを使うと怪しまれるからな。こちらも全力、大勢で襲い時間を稼いで本命は隕石と。木を隠すなら森よ。奴らはもう逃げられない、俺がセダを倒して後世に語り継がれる伝説の冒険者になるんだ!)
「隕石は俺が何とかする、レリン」
「わかった、天使の翼!」
スキルを唱えるとPT全員の背中に羽が生えた。そしてそのまま隕石に向かって飛び立つ。へー、ってことは空中戦もできるのか。空中で止まり武器を取り出す。杖のようで槍、斧のようでもある特殊な武器。武器が変形を始める、刃部が開き、本体が二つに分かれる。手、腕、脇でもち、先端を隕石に向ける。
「サンニュークリア!」
スキルが武器内部を走り、中央の宝石により増幅、そして先端から高エネルギーのレーザーが発射された。
「この攻撃なら隕石を破壊できそうか、いや念のために」
剣を取り出しスキルの準備。隕石にレーザーがぶつかる。
「光が隕石を包んだ、今だ!」
隕石にオーバーフォーススラッシュを発動、斬撃は見えない、うまくいったかな。俺の攻撃と高出力のエネルギー波が直撃、隕石は落下途中で爆発四散し見事破壊に成功した。
「いやいや助かりました。まさか隕石を破壊するほどの力を持っているとは」
「‥‥まあ」
言葉少なく手を振り去っていくセダ。仲間も彼の後を追いここから離れる。
「よかった」
「大木を潰されたくないしね」
「お昼にしましょう」
この木の上での食事がまた格別なんだよな。肉を噛みちぎり、スープを飲みながら絶景と食事を楽しむ。
「どしたのセダ? 珍しく考えこんじゃって」
「あの隕石に斬撃が入らなかった?」
「斬撃かどうかはわかりませんが薄っすらとは」
「俺よりも近くに当然人はいないのに斬撃、しかも隕石を破壊できた一番の理由はあの攻撃だろう」
「マジか? まあ俺は興味なくて見てなかったんだけど」
「ああ、自分のスキルの威力をわからないわけないだろう。斬撃がなくても隕石は破壊可能だったが、破壊にはもっと時間がかかるはず」
「何者かが隕石に攻撃を?」
「間違いない」
「なんかセダの顔怖ーい」
「はは、正直この世界に退屈していたんだ。だがいるんだな、頭がおかしいほどに強い強者が」
「あの場に潜んでいた者が?」
「じゃあ探す?」
「相手は隠れていたいんだろう、そんな野暮なことはしないさ。縁があるなら会えるさ。いつかその時が来るのを願っているよ」




