第26話 200%
翌日から作戦開始、全員の避難を始める。荷に紛れ込ませたりして盗賊に悟られないよう慎重に街の外へ運び出していく。冒険者も運び出し準備完了。こうして作戦決行日、盗賊たちが街の近くの平原に暗闇の中集結しだす。その数約三百、かなりの数の悪人共が集まった。ここまでは予定通り、後は街に誘い込んでまとめて処理するだけ。静かに橋を渡りだす盗賊たち、闇夜に生きる者達なだけに暗闇の中灯りもつけず大勢の人数が静かに移動するのは感心してしまった。
(あれは何だ?)
最後尾、布をかぶせた大きな荷車が橋を渡ってきた。略奪した物を乗せる荷車? いやすでに物品が乗っている。正体不明の荷か、ここだけは予定外ともいえるな。
「よし、野郎ども突っ込め! 自由に奪え! 赤獣石の回収を忘れるな!」
盗賊のボスらしき男が大声で指示する、盗賊たちが声を上げ街に向かって突進を開始する。
「て、敵襲ー!」
「なんて数だ!」
突然現れた多数の盗賊を前に門を守っていた二人の守衛は抵抗もせず一目散に逃げ出す。これを受け街中に鐘の音が響き渡る。
「へっ、腰抜けが!」
「門を閉じることもしないとは間抜けどもめ、楽でいいがな」
まあその逃げ出した衛兵は俺とギガさんなんだけどね。鐘の音もラインが鳴らしている。自分で言うのもなんだけど見事な演技、足に当たってないけど痛がるふりをしてデッドボールを勝ち取ったあの時を思い出した。外壁に入り秘密の通路を通り衛兵の服から着替え出口の岸壁へ。音を立てないよう位置につく。ギガさんは一仕事とここで別れる。そのまま盗賊たちは街になだれ込んでいった。見通しがきかない闇夜の中、寝静まった街を思い思いに散り散りになり金品を奪うため扉を強引に破壊して家に押し入る。一瞬にして何十件もの被害が出るが、ここで彼らは奇妙な状況になっていることに気が付く。
「おい、人がいねーじゃねえか」
「こいつはまさか!」
四分の三は入ったかな。残りは盗賊たちは門の前で待機している。それではここでネタばらしといこう。
「地面から水が、いや粘液!?」
「スライムだー!!」
街の内部に粘液が出現、入り口付近は一瞬にして粘液に包まれ街の奥に向かって広がり盗賊たちをからめとっていく。逃げ惑う盗賊たち、しかし奥側は自然の山の壁、逃げ場はない。哀れ盗賊たちはなすすべなく悲鳴を上げながら飲み込まれていく。街はそこそこの大きさだがラインは全体を覆うほどの粘液を放出している、ここまでの力を持っていたとはな。
「はあ、本当なら良い男を抱きしめたいんだけど、お仕事だから仕方がないわね」
文句を言いながらも盗賊を鎮圧していくライン。内部で移動させ呼吸ができず体をびくつかせている瀕死の盗賊を掘っておいた大穴にペッと吐き出す。こうして街の中に入った盗賊を全員窒息させ捕らえることに成功。
「おい! 逃げるぞ!」
異変に気が付いた外にいた盗賊たち、橋に向かって逃げ出した時、巨大な物体が空から落ちてきて橋を押しつぶした。橋を落とすのは予定通りだがどう潰すかその方法は聞いてなかった。やり方はわからないが豪快に破壊したな。
「橋が落とされた!」
焦る盗賊たち、そこへトドメとばかりに巨大な森が広がった。
「迷いの森!」
サラが迷路を作りマティさんが盗賊たちを叩いていく。殲滅が進んでいく盗賊、あっという間に残りはボスと取り巻きの数人のみに。ここでギガさんと合流、先ほどの水をかぶったのかずぶ濡れだ。
「後はアイツらだけだね、最後の締めといこう」
「はい」
松明に火をつけ彼らの前に俺とギガさん二人で姿を現す。
「諦めるんだ、さっさと投降しろ」
「ちっ、まさかここまで追いつめられるとはな。だがこいつを使えば状況は一変する。テメーらを皆殺しにして悠々と帰るのよ」
盗賊ボスが合図をすると取り巻きが荷にかけた布をひっぱり外した。中には金属の塊が、よく見ると人の形をしている。
「ゴーレム、奴らを殺せ!」
ゆっくりと立ち上がる金属の塊。魔物? 生物? 見たことも聞いたこともない物体。ギガさんもわからないと答える。そして二体のゴーレムは俺達の前に立ちふさがった。成人男性二人分くらいの高さがある、なかなかでかい。
「たとえどんな敵でも叩き潰すのみ。私も本気を出そう。ギガンティックモンスター、これが私の正体さ」
ギガさんが変身を始める。彼女の体が巨大化していく。ひと山はあるだろう巨大な魔物に変化した。暗くて全体像はよく見えないが六足歩行のその姿は正に圧巻。ああ、橋を破壊したのはギガさんだったのか。
「この化け物は!?」
構わずゴーレムに強烈な蹴りを食らわせる。その蹴りで吹っ飛んでいくゴーレム、岩壁に叩きつけられて落下。一撃KOか。そりゃこんな巨大生物の蹴りを食らえばな。
「いや、まだ動いている」
なんとゴーレムは立ち上がり何事もなかったようにぴんぴんしている。なんて頑丈なやつなんだ。
「はっはー! そのでかさに驚いたがこれなら勝つ可能性は出てきたな。やっちまえ!」
もう一体が俺に襲い掛かってくる。ここはオーバーフォーススラッシュを試してみるか。ゴーレムに向かってスキルを発動。まずは弱体が発動する。
「ん? 防御ダウン等のデバフか。あっはっは、無駄だぜ、そいつは耐性100%だ。どんなスキルも効きやしないさ」
彼の言葉とは裏腹に速度が遅くなり攻撃力と防御力が落ちるゴーレム。その様子にボスは思わず声をあげる。
「ば、馬鹿な何故!?」
「俺のスキルは200%だからな」
「なんだよその数字は!? 100なら完全耐性だろうが普通は!!」
叫ぶ盗賊ボス。ソシャゲ初心者はみんなそのつっこみをすると思う。




