第15話 ギャンブルの恐ろしさ
「俺は高レベル冒険者だからもちろん本気は出さない。装備は刃挽きのこの斧だけでスキルは使わない」
まあそうだよな、高レベルに本気を出されたら普通勝てないし。練習場中央に移動後俺とアルマジさんが向かい合う。
「さあ来い」
「いきます」
二人が武器を持ち構え試験が始まった。すかさずスキルのゴーディプロテクトを使用し守りを固めておく。一方アルマジさんは遠い間合いで巨体に似合わぬ素早い動きでこちらを翻弄してくる。連続バク転バク宙を軽々とこなし身軽さをアピール。流石高レベル、重量があってどう見てもパワータイプなのに素早く身軽な動き。
「いくぞ!」
突如一直線に向かってきて斧を振り上げ攻撃してくる。盾で受けるか? いや高レベルの冒険者の攻撃を受けてしまうとそのまま叩き潰される可能性がある、ここは避け一択だ、斧の一撃をよけて距離を取る。
「やるじゃねえか、だがよけるだけじゃ終わらねえぞ」
(速い、低レベル冒険者の動きじゃない。やはり彼が?)
再びアルマジさんが接近、今度は足元の砂粒を蹴りこちらに浴びせかけるいうダーティ-ファイトを展開、とにかく実戦を意識しての動きか。殺し合いに正々堂々も汚いもないからな。これを盾を使いカウンター気味に砂をはじいて逆に目つぶし。目に砂粒が入るが、かまわず斧を振ってくる、それをかわし足を引っかけ倒してアルマジさんの後頭部に剣を突きつけた。やったぞ、試験合格だ!
「てっ、てめえ!!」
剣を斧で強引にはじくと後ろに下がり装備を取り出し装着し始めた。殺気をこちらに向けまた戦闘が始まってしまった。これは熱くなってしまったか、話ぶりからして熱血タイプっぽかった。装備が整い攻撃を開始するアルマジさん。
「パワークラッシュ!」
スキルを発動、かわした斧が地面に突き刺さる。完全に沸騰してしまっているな。まずい、このままでは普通の冒険者なら殺されてしまう。俺としても正当防衛としても殺すわけにはいかない。だが心配無用、対人用に準備しておいたスキルがある、マジックストーンサモン!
「ラプスとアン!」
花の仮面をかぶる筋肉質で水着のような服装の美女二体が俺の前に出現。
「なんだー? こいつらは」
(ガーディアン? いやあんな聖獣見たことがない)
「ねえおじさん、私たちと良いことしない?」
「えっ、戦闘中にそんなことを言われてもなぁ」
舐めるように顔を上げ指を波打たせセクシーに手招きする二人。アルマジさんは困った様子を見せたがまんざらでもない様子、そして鼻の下をのばしてスケベ顔をさらしながら不用意に近づいてしまった。美しい花には棘がある、こうして彼はこちらの罠に引っかかったのだった。
「おらぁっ!」
ラプスがアルマジさんにラリアットをかますと凄まじい威力のため空中で回転、今度はアンが反対側から膝を打ち込み動きを止め、二人で上空へ投げ飛ばし空中へ飛びあがり技を決めていく。そしてスキルを発動。
「ギャンブリングスピリット!」
「や、やめっ」
アルマジさんがもがくがラプスが脚、アンが腕をがっちりと決めていて外すことができない、そのまま頭から高速で落下し地面に激突する。
「ごげっ!」
痙攣し泡を吹きながらその場に倒れる。この技の素晴らしいところはどんなにダメージを与えても相手が死なないところ。絶対に瀕死までのダメージで止めてくれる。まさに生かさず殺さず、ギャンブルの恐ろしい一面が透けて見える。もうちょいで死ぬけどアルマジさんなら納得してくれるはず、覚悟が決まっている人だからこれくらいは問題ないだろう。用意しておいたこのスキル、女性が相手の場合はイケメンの男性が現れる。それよりもこの後どうしたらいいのかという問題が発生。困っているとマンハントの時に助けてくれた職員さんが訓練場に入ってきた。
「合格で構わないよ、会議室に戻っておいて」
「ありがとうございます」
やった、これで星二だ。喜びながら会議室に向かう。
「さて、起きろアルマジ」
「ひへっ!?」
「受かったというのに一本取られて頭に来て新規に本気出し殺そうとするとは。全て見させてもらったよ。今回の件だけではなくお前には他数件でも過度な暴力行為をしたとの報告が来ている。裏側にいる奴の話までじっくり聞かせてもらうから」
「ぐ、ぐひぃ~!!」
会議室で待っていると職員の人が来てライトボードに端末を差し込み、手続きを行う。
「はい、合格おめでとう」
星が一つ追加された。星が三になるとこの初心者の街を卒業してどこへでも行けるようになる。会議室から出てギルド内で休憩をする。
(無傷!? まさか合格か)
(そうか、一人だけだからか。それなら金もたいしてかからない。奴の気まぐれで合格にしたのかも)
(運のいい奴)
「まだ時間があるな」
この後は軽く仕事をして今日一日が終わる。しかし一つ目の試験だというのに結構大変だったな。次回はもっと気合を入れておかないと。




