世界の修正力を超えて――転生者の勝利
爆音と閃光が収まったとき、セレナは腰を抜かすようにしてその場にうずくまっていた。横にはアレクシスも息を切らし、光の残滓が舞う中で剣を握りしめている。
周囲を見回すと、青い結晶体は真っ二つに割れ、かすかに蒸気のようなものを放ちながら次第に崩れていった。――調律石らしき“世界の修正力”は、ついにその形を失ったのだ。
「や、やったの……?」
セレナは半信半疑。だが、耳に響いていたあの“運命に従えない者を排除”という声が消え、神殿自体の揺れも静まっているのを感じる。どうやら本当に破壊に成功したのだ。
「セレナ……生きてるか……」
アレクシスは疲労困憊の声で問いかける。セレナはかろうじて頷き、手を伸ばして彼の腕にしがみつく。
「ええ……私たち、勝ったのね。ゲームの修正力なんて、消し去ってやった……」
二人で弱々しく笑い合う。視界の隅では、穴の壁がぽろぽろ崩れかけているが、今のところ大規模な崩壊は止まったようだ。――急いで脱出する必要はあるが、危機的状況は脱したと言える。
やや遅れてノエルや騎士たちが穴の端へ駆け寄る。彼らは驚きと心配の入り混じった表情で二人を見下ろす。
「殿下、セレナ様……! ご無事ですか?」
アレクシスが力ない声で「なんとか」と答え、「ロープを垂らしてくれ」と指示。ノエルらが慌ててロープを下ろし、二人を引き上げる。
上がってきた二人を見て、騎士たちは歓声を上げ、ノエルは深い安堵の息を吐く。
「本当に……よくご無事で。あの光は何だったのです?」
「調律石、なるものだろう……だが、もう破壊した。二度と世界を修正などさせない」
アレクシスがはっきりと言い切り、セレナはうなずく。
――これで“転生者排除”という古代の仕組みは消えたのだ。自分たちがバグルートと呼ばれようとも、もう何者にも奪われることはない……
「さあ、ここから脱出だ。まだ天井や壁が脆いから、長居は危険だ」
アレクシスが騎士たちを促す。ノエルがセレナに肩を貸して歩き出し、一行は崩れかけのホールを抜けて、ようやく神殿の外へ戻るのだった。




