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転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした  作者: はりねずみの肉球
【第六章】ヒロイン、覚醒。そして暴走
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魔物の襲撃――悪役令嬢と王子の共闘

出発から二日目の昼。北方の山脈麓の森を抜けようとした一行の前に、予想外の敵が現れた。――魔物の群れだ。森の深部から現れた牙の長い狼型の魔物が、一斉に吠え声を上げながら騎士たちを取り囲んだのだ。

「来たか……! みんな、戦闘準備!」

アレクシスが鋭い声で号令をかける。剣を抜いた騎士たちが馬から飛び降り、狼型魔物へ迎撃体制を取る。セレナは馬車の陰に身を伏せ、咄嗟に防御魔法の詠唱を始める。


「くっ……“ウルフクロー”という種類か。牙も爪も強力なんだって……」

セレナは前世で読んだファンタジー小説や、この世界の魔物図鑑の知識を思い出しながら、護身の魔法を張り巡らせる。

一方、アレクシスはすぐに魔物の群れに突撃。剣を閃かせ、連携をとりながら騎士たちと共に魔物を順番に倒していく。閃光のような剣筋に、ウルフクローがうなり声を上げて次々に倒れていく。


「セレナ、そっちは大丈夫か!」

アレクシスが戦いの合間に声をかける。セレナはすかさず、魔物の数体が馬車に向かって突進してくるのを確認し、構えをとる。


「防御魔法・ウォールシールド!」

床から光の壁が立ち上がり、ウルフクローが馬車に接近するのを遮る。魔物が跳ね返され、バランスを崩した隙に騎士が駆け寄ってとどめを刺す。

セレナも精一杯援護しながら叫ぶ。


「こっちも何とかやれてるわ!」


激しい戦闘は十分ほど続いただろうか。騎士たちの統制の取れた動きと、アレクシスの華麗な剣技によって、魔物の群れは次々と退散するか討伐される。最後の一匹が森の奥へ逃げ去ったあたりで、戦いは終わった。

周囲に魔物の死体が散らばり、騎士たちが息をついている。幸い、大きな犠牲は出ずに済んだようだが、数名は怪我を負っている。


「だ、大丈夫ですか、セレナ様?」

近づいてきた騎士が安堵の声を漏らす。セレナは自分自身も火傷や擦り傷がないか確認しつつ、魔法の消耗を感じて膝に力が入らない。

アレクシスが駆け寄り、剣を収めながらセレナの背に手を添えた。


「よく耐えたな。魔物がこんな大量に襲ってくるなんて予想外だが……被害が最小で助かった。お前の防御魔法のおかげだ」


「いえ、私は大したことしてないわ。……あなたの指揮が的確だったからよ」


二人でお互いを労わり合う視線が交わされ、ホッとする。――リリィとは違う、対等な絆で助け合って戦った証だ。

でも、セレナの胸には別の違和感が残る。まるでこの魔物襲撃が“誰かに仕組まれたもの”のようにも感じたのだ。――第二王子派が意図的に魔物を誘導した可能性は?


(考えすぎかしら。でも、この辺りの魔物は普段そう簡単に人里に出てこないって図鑑にあったわ。タイミングも良すぎる……)


一方、アレクシスは騎士たちに指示し、怪我人の処置や馬車の修理を進めながら、セレナに小声で語りかける。

「もしこれが仕組まれたものなら、先はさらに危険だな。無理に進むのはリスクが高い。……それでも行くのか?」


セレナは迷いを打ち消すように、きっぱりと言い切る。

「進むわ。ノエルが待ってるでしょう? それに、ここで引き返したら第二王子派の思うツボよ」


アレクシスもうなずき、顔を引き締める。――多少の負傷者が出ても、この旅を諦めるわけにはいかない。神殿遺跡まであと半日ほどの道のりだ。

休憩を終えて、隊列を組み直した一行は再出発する。どれほどの困難が待ち受けようと、もう後戻りはできない。セレナも改めて心を固めた。


(私は転生者でも、悪役でも、自分の道を諦めたくないんだから……!)

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