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転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした  作者: はりねずみの肉球
【第六章】ヒロイン、覚醒。そして暴走
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想いのすれ違い――ノエルの秘めた想い

数日後。

ノエルが学園を出発する朝、私は彼を玄関先で見送っていた。護衛の馬車と最低限の物資を用意し、彼は単身で北方へ向かう。私としては心配で仕方ないが、ノエルは笑顔で「大丈夫ですよ」と繰り返すばかりだ。


「セレナ様、どうかお元気で。……私がいない間、殿下があなたを守ってくれるでしょうが、くれぐれも無茶はなさいませんよう」


ノエルの穏やかな声に、胸が温かくなる。彼はいつも私を気遣い、支えてくれた。

「ありがとう。本当に、気をつけてね。わざわざ危険を冒してごめんなさい。あなたを失うのは嫌だから、絶対に無理しないで」


私がそう懸命に言うと、ノエルは微かに眉を下げて、そのまま「セレナ様……」と小さく呟く。

その瞳に、ほんのわずかに揺れる感情が見えた気がする――もしかして私に何か言いたいことがあるのか? だが、ノエルは言葉を飲み込み、軽く首を振った。


「いえ、何もありません。私には、セレナ様が幸せになってくださるのがいちばんの望みです。それだけは、どうか忘れないで」


その言葉だけを残し、ノエルは馬車へ乗り込む。御者が手綱を鳴らすと、車輪がきしむ音とともに学園の門を出ていった。私はその後ろ姿を見送るしかない。

――私の知らないところで、ノエルは複雑な想いを抱いているのだろうか。セレナがアレクシスを選んだと知りつつ、彼自身が何か感情を押し込めているのかもしれない。

けれど、今はそれを深く問えない。ノエルは私たちのために、危険な旅へと向かったのだ。私は信じて待つしかない。


(がんばって、ノエル。あなたが帰ってくるまで、私も“修正力”なんかに屈するものですか)


そんなエールを心の中で送りながら、私は学園の校舎へ戻る。あとに残ったのは、微かな孤独感と、アレクシスの庇護だけだ。

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