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転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした  作者: はりねずみの肉球
【第六章】ヒロイン、覚醒。そして暴走
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王子への報告――一抹の不安と決意

翌日。アレクシスが学園へ視察に来るというので、私は図書館の裏口にて待ち合わせをし、集めた情報を彼に伝えることにした。

昼休み、控え室で再会したアレクシスは少し疲れた顔をしつつも、「詳しい話を聞かせてくれ」と座る。ノエルも控え、私が“調律石伝説”と“神殿遺跡”について説明すると、彼は深く考え込む。


「そんな伝説が本当にあるとは思えないが、リリィの禁術だって誰も信じていなかったのに実在した。この世界ならあり得るかもしれん……。第二王子派がそれを利用するなら、厄介だな」


「殿下はどう思う? ‘神殿遺跡へ行って確かめる’みたいな公式な動きは、できるかしら?」


私が尋ねると、アレクシスは渋い顔で首を振った。

「父王は今、リリィ事件の後始末と各地の魔物被害への対策で忙しい。そんな“伝説の石を探す遠征”を提案しても、真剣に取り合ってはもらえないだろう。まして、第二王子派の動向を探るのに正規の許可を取るのは難しい」


つまり、私たちが公的な立場で動くのは厳しいわけだ。

ならば、こっそりと調べに行くしかないのか……危険を伴うし、アレクシスが派手に出張るのも目立つ。何より、私の安全を心配する王子が“セレナ単独行動”を許すはずがないだろう。

私は唇を噛むが、アレクシスが先に口を開いた。


「……だったら、俺とお前で、非公式に偵察するしかないのか。だが、王宮を空けるにも限界があるし、学園の授業もある。短期間で行ける範囲か? 北方の遺跡は結構遠いぞ」


「そうね。地図で見る限り、馬車だと片道数日はかかるかも。私たちにそんな時間があるかしら……」


二人で思案していると、ノエルが一歩進み出る。

「殿下、セレナ様。私が先行して下見を行うという手はいかがでしょう? 私はセレナ様の従者ではありますが、王都や学園に縛られる立場ではございません。転生者の噂がどうこう言われても、私自身はさほど標的にならないでしょうし」


私とアレクシスは顔を見合わせる。確かに、ノエルが単独でこっそり北方へ行けば、私や王子ほど目立たないだろう。

アレクシスが慎重に口を開く。


「……なるほど。その案は現実的かもしれない。ノエル、お前一人の旅は危険だが、騎士としての腕前ならそこそこ守れるだろう。だが本当にやる気か?」


ノエルは静かな決意を宿して頷く。

「はい。セレナ様がいつまでも不安なままでは、私も落ち着きません。少しでも情報を得てくれば、次の一手も打ちやすくなるのではないでしょうか」


そう言われると、私も胸が痛む。ノエルを危険な目に遭わせることになるが、彼がここまで言うなら止める理由もない。むしろ、そこまで信頼してくれるのは嬉しいけれど、何か申し訳ない。

私は握った拳を軽く振りほどくようにしながら、ノエルの目をまっすぐ見つめた。


「……ありがとう、ノエル。でも、無理しないでね? もし第二王子派と鉢合わせることになったら、すぐ逃げて。私にはあなたが必要なのよ」


ノエルは少しだけ微笑み、「セレナ様がそうおっしゃるなら、必ず生きて帰りますよ」と優しく応じる。

それを聞いていたアレクシスは深くうなずき、目を伏せる。


「決まりだな。ノエル、頼む。何かあればすぐ伝書か魔術通信で報せてくれ。俺も可能な限り援軍を出す」


こうして、私たちはノエル単独の北方遺跡調査を決定した。――いよいよ、リリィを超えた“転生者の修正力”との戦いが本格化するのかもしれない。私もアレクシスもまだ自信はないが、ここまで来たなら逃げるわけにはいかない。

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