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転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした  作者: はりねずみの肉球
【第六章】ヒロイン、覚醒。そして暴走
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封印されし調律石――図書館での手がかり

転生の噂――すなわちゲームの世界観に関わるような事柄について、学園に何か資料がないか探してみようと考えたのは、それから数日後のことだった。

リリィが使った“禁術の黒杖”や、私のようにゲームを知る転生者が何を頼りにこの世界へ来たのか……もしかしたら、古い蔵書に手掛かりがあるかもしれない。


そこで、私はノエルを伴い、学園の大図書館の奥にある“資料室”を訪ねる。この場所は普通の生徒が滅多に入らないが、私やノエルは特例で許可を得て閲覧している。

かつてリリィが潜り込んだ“封印書庫”ほど厳重ではないが、それでも歴史の闇に関する書物が並んでいるため、要注意のエリアだ。


「ノエル、何か怪しい本があったら教えて」

「はい。……しかし、この資料室は量が膨大ですね」


壁一面に積まれた古書、埃をかぶった巻物、年代物の写本などが多数。短時間で探せる内容は限られている。私は手当たり次第にタイトルを眺め、転生や禁術に関する記述がないか確認する。

すると、ある棚の下段から、妙に光沢をもった青い装丁の書籍を発見した。


「“世界調律の秘術――神話と伝承”……?」


好奇心を刺激されて、私はそれを引き抜く。表紙には古語で文章が並んでいて、一見解読困難だが、ページをめくると何やら“世界の歪みを調整する石”が存在すると書かれているらしい。ノエルが覗き込み、声を潜める。


「世界の歪み……何でしょう。もしかすると、リリィのように‘ゲームの筋書きから逸脱した存在’を修正する力、みたいな記述でしょうか?」


「さあ、どうだろう。でもこの本、やたら‘調律石’という単語を繰り返してる。世界の秩序が乱れたとき、それを戻すために使われる石……?」


急いで読み進めるが、一部の文字が擦り切れたり、古い言語が混ざっていたりして正確にはつかめない。ただ、どうやらこの書物は伝承をまとめたもので、実在するかすら不明なシロモノ。

(もし実在するなら、“ゲームの修正力”みたいなものが、こうした伝承に結びついている可能性もある……?)


ふいに背筋が冷たくなる。もし“調律石”のような力を持つ存在が現実にあって、私たちの“バグ展開”を正そうとするなら? それこそが“もう一人の転生者”や“第二王子派”が狙っている手段かもしれない。

……そう考えると、先日の手紙の文面とも繋がりそうな気がする。――“ゲームを壊すな。修正されるぞ”という警告は、まさにこの“世界調律の秘術”に通じるニュアンスがあるではないか。


「ノエル、これってただの伝説かしら。それとも本当に存在して、私を修正しようとしてる人たちがいる……?」


「わかりません。ですが、もしそんな強力な秘術を手にした者がいれば、セレナ様や殿下を脅かす可能性はありますね。しかも、リリィが使った禁術とは違う形で、合法的に‘世界’を正そうとするかもしれない」


禁術は邪道だが、“世界調律”なる力は神聖視されている節がある。だとすれば、敵対派閥がそれを利用して“あえて悪役令嬢を排除”しようとする計画も plausible。

私は本を抱え込むようにしながら、暗い不安を抱く。――転生者として、こんな形で世界に否定される危険があるなんて想像していなかった。


「……もう少し調べてみよう。リリィを倒したからって安心してたけど、まだ戦いは終わってないみたいね」


「そうですね。私も微力ながらお手伝いします」


ノエルが力強い眼差しを向けてくれて、私は少しだけ心強さを感じる。もう一度本をパラパラとめくり、一部ページをメモしながら、当面は“世界調律”という伝承に注目してみることにした。

敵が本気でその力を使い、私を“世界の歪み”とみなすなら、私はどうなる? リリィ以上に厄介かもしれない。――だが、私は諦めない。悪役だからといってやすやすと修正される覚悟はない。


(私が歩んでいる道は、もう私自身の意思で選んだ道。たとえ世界が相手でも、絶対に大切なものを守ってみせる)


資料室を出るころには、決意がさらに強まっていた。

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