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転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした  作者: はりねずみの肉球
【第六章】ヒロイン、覚醒。そして暴走
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新学期開始――平穏と、その裏の波紋

数日後、学園は正式に新学期を迎えた。進級した生徒たちは新しいクラス編成や役職に割り振られ、学園内は再び活気づいている。私はこれまでどおりアレクシスと同じ学年ではあるものの、クラス自体が少し調整されたことで、一部メンバーが変わった。

もちろん、リリィがいるはずの席は空っぽのまま。教師も「エトワール嬢はしばらく休学することになった」としか説明していないが、私を含む一部は“永久に戻れない”と知っている。


私に対するクラスメイトの態度はおおむね良好で、前に比べれば遥かに居心地がいい。今の私は悪役令嬢などではなく、“殿下の婚約者”として尊敬され、時には親しみをもって接してもらえる立場だ。

一方で、リリィの影響を色濃く受けていた平民出身の生徒たちの中には、いまだにリリィを慕う者や、私を「彼女を蹴落とした存在」と見る者がいる可能性もある。

だから油断はできない。私は学業に集中しつつ、周囲を観察して問題が起きないか敏感にアンテナを張るようにしていた。


そんな中、ある昼下がりの休み時間、私の机に一通の手紙が置かれているのを発見する。

「なにかしら……?」

学園ではよくある“ラブレター”や“ファンレター”かもしれないが、表紙にはただ“セレナ様へ”としか書かれていない。

ノエルが警戒して「私が確認を」と言うが、私はそれほど危険はないだろうと思い、自分で封を切る。


中には短いメッセージが綴られていた。


『――あなたは本当に“この世界の住人”なの?

リリィが消えた今、次に不幸が訪れるのは、あなた自身かもしれない。

ゲームの筋書きを乱す者は、いずれ“修正”される――

気をつけることね。

あなたは既に転生者として、どうしようもない道を歩み始めているのだから』


背筋に冷たいものが走る。まさに、“転生者”というワードが露骨に使われているし、“ゲームの筋書きを乱す者は修正される”という一文が不気味だ。

ノエルも覗き込み、「これは……一体、誰がこんなことを?」と声を潜める。私も答えが出ない。

やはり、あの“もう一人の転生者”説という噂の延長なのか。何者かが私を危険視しているのか、それとも警告してくれているのか――意図すら読み取れない。


(こんなの、リリィ派が仕掛けた嫌がらせ? でも、文面を見るに、リリィに同情しているとかそういう気配はないわね。むしろ私に警告しているような……)


いずれにせよ、気味が悪い。

「とりあえず捨てるか、アレクシスに報告するべきかしら……」

私が小声でノエルに提案すると、彼は少し考えてから頷く。


「殿下に共有しておきましょう。セレナ様が危険視される可能性もあるし、今後も似たメッセージが届くなら対策が必要です」


そう、力強い言葉で言ってくれるノエルは心強い。私は手紙を封筒に戻しながら、胸の奥がざわつくのを抑えきれない。

――転生者として“修正”される? リリィは確かに破滅したが、それがゲームの修正力だと言うのなら、次は私の番……? そんなありえない考えが頭をよぎる。


(馬鹿馬鹿しい。でも……私はゲームのヒロインでもないし、今この世界でおかしなルートを歩んでいるのは事実よね。でも、だからこそ自分で運命を選び取るんじゃない。なんでわざわざ修正される必要があるの?)


混乱しそうな思考を何とか振り払い、私は手紙を鞄にしまった。――アレクシスに報告すれば、何か助言が得られるかもしれない。少なくとも、リリィが失墜したあとも、私の前にはまた“新たな危機”が潜んでいる可能性があるのだ。


「……リリィが消えたからって、私の物語が終わるわけじゃない。そんなの、最初からわかっていたことよ」


小声で独りごちる。悪役令嬢の私が王子と結ばれたという“バグ展開”を、この世界はそう簡単に認めてくれないのかもしれない。

だけど、私は譲れない。アレクシスと共に生きる道を、もう手放すつもりはない。

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