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【俺を見つめないで】  作者: 愛好未来
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「見ないで」

「見ないで」


如月視点

五月。日差しが眩しい。春の暖かい陽だまりを感じながら今日も生きる。

そんな平凡な日々を送りたかった。

俺は今日もあの人の視線を感じている。

いつもいつも俺を見つめてくる。

あの人は俺をいつも見つめていた。


隣のクラスの三組に生息する一条玲王。

なんの接点もない一条は俺を見つけては見つめ見つけては見つめてくる。

接点は無いが入学当初から存在は知っていた。はっきりとした目鼻立ちに整った顔立ち、すらっとしたモデルのような体型と身長。

あの人が通る度に女子達はコソコソしながら小さな声で何人もの人が騒いでいた。

羨ましくは無いが人から関心を持たれるのは少しいいなと思った。そして俺も一条の事を凄くかっこいいと思ってしまった。

だから嫌でも一条の存在を知っていた。


俺は一条さんの目が気になって仕方がなかった。

初めは気のせいかと思っていたが気のせいではなかった。

上らか見下してくるような目。俺は怖かった。

そうだと思えばただじっと見つめてきたり。

嫌だった。そんなに見つめないで。

気にしないようにしようと思っても気になって仕方がない。

あの人は俺が好きなのか?と疑問に思っても喋り掛けてくる訳でもなくそれ以上も全くない。

ましてや名前を呼ぶ関係でもないので一条と心の中で呼ぶのも少し気が引けるくらいだった。

そしてなんで俺の事をこんなに見てくるのかは検討もつかない。

なぜなのだろうか。男であるこの俺を見つめてくる意味も分からない。


初めて俺が一条に見られているなと感じたのは学食で一人寂しく昼食を食べていた時だった。

二席前の斜め右側からこちらを向いて友達何人かと席に座って昼食を食べていた。

一条は友達とは喋りもせず俺をじっと見ていた。

イケメンが俺を見て何なのだろうと少し不思議に思ったがBランチに付いている自家製プリンが美味しくて食べるのに夢中で気に留めなかった。

そこから気が付くと一条は俺を何度も見つめてきた。しかも少し遠くから。

それに気が付いた時俺は、少しだけでも近づいてきたり話し掛けてくれたりしてもいいんじゃないかと心の奥底でモヤッとしてしまった。

別に一条の事を気になっているとかではなく、ただそんなに見つめてくるなら近付いて話しかけてくれてもいいのではないかと思った。ただそれだけ。


それから少し経ち通学の電車が同じことに気がついた。

たまたま俺が座っている近くで立っていた。

それに一条も気が付いたのか次の日から同じ車両の俺の前に来るようになった。

俺の家の最寄り駅はいつも人が少ない。

毎朝決まった車両の決まった場所に座る。

俺はいつも通り電車に乗り席に座った。

そして二駅過ぎた頃、沢山の人と共に今日も一条が既に座っていた俺の前に立ち、ずっと上から俺を見下ろし見つめてくる。

上からじっと見てきて怖い。そしてドキドキして気が気じゃなかった。

毎日毎日その目を向けられるのが怖くなっていた。

でも少し嬉しさが混ざっていた。

でも俺は男が好きな訳じゃない。別に女を好きになった事も無いが男は対象外だ。

だからその嬉しいと思ってしまう感情は偽物だと思った。

俺は一条を気になっている訳では無い。好きでもなんでもない。

だから俺を見つめないで。




一条視点

今日も如月が気にって仕方がない。

如月をずっと目で追って見てしまう。

可愛いと言うかなんと言うか可愛い。

低い身長から小動物のような可愛さと中性的で女性寄りの綺麗な顔立ちで何よりも可愛いと思った。


あれは高校の入学式の時だった。

全校生徒の中でも一際目立って見えた。身長は低く中性的で女性寄りの綺麗な顔立ちをしている。あの時如月を見た瞬間から好きになった。いわゆる一目惚れというやつだ。


俺は女を好きになった事がない。何度も俺に告白してきた女子達はいるが一度も付き合いたいと思ったこともなければ可愛いとも思わなかった。俺は既に男が好きなのだろうとその時悟った。だか、好きだと思える人が出来たこともなかった。恋では無いが芸能人を見てかっこいいという感情と共に惹かれるのはいつも男だった。

だから俺は男が好きなんだろうと確信していた。

その確信は当たっていたようだった。如月に一目惚れし初めて好きな人が出来た。初恋だった。


俺は如月を見る度に目で追いかけこっそり見ていた。

それでも俺は如月に話しかける程の理由も勇気もなくただただ見ているだけだった。

だが、如月の情報を得る為に俺は如月のクラスのやつと友達になった。

ただ如月の情報を得る為に如月のクラスの口が軽そうなやつを見定めそいつが入っている部活にわざわざ入部し友達になった。

そいつの名前は青木一真。

友達という名の如月情報係でもあった。

俺が"あの小さいのだれだ"としれっと問うと"あぁ、あれは如月。如月凪紗。ちっちゃいし綺麗だよな"と簡単に答えた。青木も綺麗だと思っていたのかと少し驚いたがなぜ気になるのか等面倒な質問をしてくる訳でもなく、ただ言った答えを返してくれる単純なやつだった。

俺と青木と青木の友達何人かと一緒に学食で昼食を食べている時、ふと少し前を見るとたまたま如月が座っていてプリンを美味しそうに食べていた。その姿はまるで天使のように可愛いかった。そしてその空間だけが白いベールに包まれた様にふわふわとしていて可愛くて愛おしくて仕方がなかった。

青木はずっと話していたが俺は如月を見ることだけに集中していたので如月が居なくなるまで一切話が入ってこなかった。

それでも実際青木が居なければ如月の情報を得ることは出来なかったので一応感謝はしている。

そして今青木とは普通に仲がいいのだ。だが、青木のお陰で如月の情報を手に入れているのに違いない訳だが俺は如月をのことをもっと(の全てを)知りたいと思っていた。

如月をことをもっと知って近付きたい。(全てを知り全てを手に入れたい)

だが何を理由に近づけばいいのかも分からなかった。

好き?いやそれは流石に怖いだろ。男だし。じゃあ仲良くなりたいって?それもおかしい。多分。そう考えている内に何が正解なのかも分からなくなっていた。

如月はいつも一人でいるので普通なら話し掛けやすいのだろうが如月の事は男女共に影で近寄ってはいけない記念物、高嶺の花として扱われていた。中性的で女性寄りの綺麗な顔と低い身長そして礼儀正しい所から別次元の存在のように感じる者が多くいた。本人には伝わっていないと思うが一人でいるのはそういった理由があったのだと青木から聞いてその理由を知ってから自分が近付くのにもっと気が引けた。

当分は遠くから見ておこうと思っていた。


そう思っていた次の日、学校までの電車をいつも通りの時間にいつも通りの場所で待っていた。

電車が来て直ぐに乗り込んだ。俺が立っていた近くに如月が居るのを見つけた。

同じ電車なのかと嬉しくなったと同時に如月をもっと近くで目の前で見たいと思った。

その次の日俺はいつもより少しだけ早めに家を出て如月の目の前に立った。

可愛くて今にも触りそうになったが俺は自分の感情を沈めただ上から見下ろすだけ。ただそれだけ。

俺は今日も電車の中。如月を見ていた。

でももっと如月を知りたい。

如月。もっと見させて。

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