第4話
「…鋭治君…君、本当はいくつ?どう考えても、5歳の子供の答えではないわよね?」
「5歳に決まっているでしょう?なんなら、先生は俺が赤ん坊の捨て子だった頃から、見てらっしゃいますよね?」
「それは…」
「なら、話は終わりです。さっきのは、ちょっとした哲学者の言葉なので、気になさらないでください」
俺はその言葉を最後に、踵を返すと、図書室をあとにする。
幼女…朱莉もトテトテと俺のあとに続く…。
〜
さて、俺の名前が何故、今も鋭治のままなのかだが、それは俺の発見場所に名前のプレートを置いておいただけである。
それ以上でもそれ以下でもない。
それはそうと、戸籍を手に入れる為とはいえ、わざわざ赤ん坊からやり直したのは、失敗だったかも知れん。
何故か…
子供の頃はわからなかったが、精神年齢が大人で幼児の集団にいるのは、正直言って苦痛でしかない。
「えーじくん、おままごとイヤなら、なにするー?」
「…お前も俺みてえな、つまんねーヤツとつるんでねえで、他のヤツんとこで遊んでこいよ?少なくとも、俺よりはまともな相手してくれるはずだぞ?」
「ヤダ…えーじくんとあそぶ…」
「っち!?わかったから、泣くなっ!!」
子供は影響を受けやすい…
どうやら、コイツの中では、俺はヒーローになっちまったみたいだ。
全くガラにもねえ…
俺は思った。
〜それから約10年〜
「やめろ…やめてくれ…うぐぅぅぅぅ!?」
バチバチバチっ!!
部屋にスタンガンの音が響きわたる…
「ダメだよ?私たちのアガリの恐喝なんかしちゃあ…。いい大人が中学生の金に手出して恥ずかしくないの?ねえ?」
「朱莉?殺しちまうと、処理するのめんどくせーから、ほどほどにしろよ?深夜の穴掘りは極力やりたくねー」
「オッケー。まあ、えーじと、深夜デートもいいけど、死体処理はちょっとねー…」
俺と朱莉の会話を聞いて、たった今、朱莉のスタンガンの一撃を食らった男は真っ青になる…
「…わかった!!今日限りで俺たちピエロは、あんたらの下につく!!だから…」
朱莉が俺に目配せする…
俺はアイコンタクトで返す…
もう10年いっしょにいるコイツには、それだけで俺の意思が伝わる…
「待っ待てっ!?ぎぃいゃああああ!?」
何をしたか?
朱莉が鉄パイプを男の足に向けて振り下ろしたのだ。
そのまま、四股を丁寧に鉄パイプで砕いていく…
ついには、男は白目を剥いて気絶してしまった…
「死面を敵に回して、えーじがタダで済ますわけないじゃん。そのへんに捨てといて」
「「はい。姉御」」
朱莉の命令で四股を複雑骨折した半グレ集団、ピエロの総統の男は運ばれていく…