第3話
「おぎゃあっ!!おぎゃあっ!!」
俺の泣き声がこだまする…
ミラ、近くに生体反応は?
「ありますが、距離があり過ぎて気づいていない様です」
ミラは答えた。
ミラとの対話は別に念じるだけで可能だ。
そもそも赤ん坊の声帯じゃ、まともに会話をするのが難しいから、この仕様は助かる。
まあいい。
そのうち誰かが気づくだろう…
〜数十分後〜
「おい?なんだアレ…って赤ん坊っ!?大変だっ!!警察に…」
ようやく第一発見者が俺を見つけて、警察に通報したようだ。
もし、これが俺の時代の警察なら、その場で簡易キットでDNA鑑定されて、国際データベースに照会され、国際指名手配犯の俺は、そのまま逮捕である。
まあ、この時代にそんな心配はないが…
〜
警察が到着すると、俺を保護していく…
行方不明の届出が出されていない、身元不明の赤ん坊の俺はそれから数日で、児童相談所に引き取られることになった。
〜それから約5年後〜
「えーじくん、おままごとやろーよ?」
「…朱莉、知ってるか?人間ってのはな、判断力の欠如から結婚し、忍耐力の欠如から離婚し、記憶力の欠如から再婚するんだぜ?つまり、結婚の真似事である、おままごとなんかしたところで、なんの…」
「…やめなさい。鋭治君」
ここは児童相談所である。
今何してるかって?
ようやく、自力でまともに動ける年齢になってきたから、図書室で本を読んでいたところである。
この時代の背景については、数年でだいぶ頭に叩き込んだが、俺の目的…
まあ、この数年で明確になったそれを果たすには、圧倒的に、知識と素材が足りない…
まあ、児童相談所の図書室程度にある本なんか、役に立つかと言われれれば、はっきり言って話にならないのだが…
話が長くなった。
現在の状況である。
俺は最近、この幼女に付き纏われているのである。
原因は単純だ。
上級生にいじめられていたこいつを…まあ、助ける気は一切なかったが、あろうことか、俺にまで因縁をつけてきて、絡んできたそいつらを手加減して、ぶっ飛ばしたら、まるで金魚の糞のようについてきたのである。
当たり前だが、俺はガキに興味はない。
もう10年してから、出直してこいという話である。
まあ、幼女を適当にあしらおうとしたところ、バツ2の女性職員が、子供相手に大人気なく、突っかかってきたのが、ことの経緯であり、現在の状況だ。
「はあ…。別に先生のことを言ってるわけじゃありませんよ。まあ、俗にいう、一般論ってヤツですよ?」
俺はため息をつくと、先生に向き直り、言ったのだった。