EP02 怪物
「ガハハハハハハ、それは苦労したな!」
「そうですね」
僕は夕食に招待され、ガムドの仲間なのか数人の男たちに囲まれて、塩漬けの肉を食べています。
文明レベルが明らかに低いことが分かりますね、徒歩で旅をしている時点で論外ですし、腕時計も革靴も履いていません。
恐らく、本当にここは別の世界なんだと理解させられます。
ガムドは僕のどうでもいい話で大笑いしています。
何で両親がどっちも死んで、その後遺産争いで兄弟に殺されかけ、逆にそれを充分な証拠の元起訴して服役させた話で笑えるのかは分かりませんが、こういう笑いをする人って下品で嫌いなんですよね。
「お前も、苦労したんだな」
ガムドの仲間の一人が声を掛けてくるのですが、僕は心底不快になりました。
「当事者でもないのに、何を共感したように同情してるんですか? 思いあがらないでくださいよ、あなたは部外者なんですから」
「あ? おお......ああ、分かった」
返答までに時間がかかったという事は、そう言われることを想定してなかったという事なんでしょうか?
文明レベルだけでなく、知能レベルも低いんでしょうか.....?
いや、教育機関が無いので、教養がそもそもない可能性もありますね。
これくらい当たり前の反応だと思うので、対応できるようにしておくといいと思うんですけどね。
皆は食事を摂った後、しばらく談笑することになりました。
食後のお茶もお世辞にも美味しいとは思えませんでしたし、エミリアという娘がいるという自慢話も特に面白くありませんでした。
写真もあるようで見せてもらいましたが、そこまで可愛くないですし。
特に価値のない出会いでしたが、この世界が何も変わらないという事がよく分かりましたので、勉強代でしょう。
「じゃあ、また明日な」
「ええ」
僕とガムドは挨拶を交わし、就寝しました。
空を見上げたことで、満天の星空が見えました。
星空が綺麗だという人もいますが、僕にはよく分かりませんね.....
ただの光点の集まりに、規則的な並びを見つけて線を描き、星座なんていうあまり頭のよく無さそうな行為に興じる人々は、なんとなく見ていて滑稽です。
生理的欲求が余り湧かない様になってしまいましたが、眼を閉じれば、その意識は暗闇に沈みました。
翌朝、僕とガムドさんは別れることになりました。
彼等と一緒に行っても、収穫はありませんしね。
「たった一晩の付き合いだったけどよ、俺はお前とはまた会いたいと思ってるぞ」
「それは良かったです」
こちらは二度と会いたくありませんね。
ガムドさんが手を出してきたので、僕も仕方なくそれに応えます。
厚ぼったく、傷だらけで、豆だらけの手ですね。
頭脳労働者以外は基本的に付き合いたくないんですよね。
僕はその手を握りました。
その瞬間。
◇ガムド・ラーウェル 人族 43歳
という情報が頭に流れ込んできました。
同時に、ガムドに対して何かできるという情報も。
僕は早速、それを行ってみます。
「ぐあああああああああああああああああああ!!!!」
ガムドが大声を上げて暴れますが、どうしたんでしょうか?
気になるので、続けてみます。
「ぎゃああああああああああああああああががががああああああああ!!」
ガムドは血走った目で僕を見て、何かを言おうとしますが、何を言ってるかはわかりません。
「やめ、やめ、やあああああああがああああああああああああいいいいいいい!」
そして、最終的にガムドは干からび、骨になって崩れ落ちました。
煩かったですね.....
「お、お前! ガムドさんに何をした!」
「ぶっ殺してやる!」
お仲間の二人が、手斧と剣を抜いて襲い掛かってきますが.....
「うわぁああああああああああああああ!!!!」
「やめ、や――――――――」
この能力、特に触れてないと発動できないって事はないんですね。
あ、後、ローダとか呼ばれていた人は、別の能力で攻撃してみました。
眠ったのか、即死したのかは分かりませんけれど。
「ローダァァァァァァ!!!! が、あああああああぎゅあああああああああ」
「何が起こって.......テメエ!?」
ダグラスという男を骨に変えていると、最後のお仲間が馬車から出てきて、襲い掛かってきます。
「お前、皆に何を!」
「少し試したいことがありまして」
「昨日はあれだけ楽しそうに!」
「楽しそう? そう見えたなら節穴みたいな目ですね。僕はあなたたちの事が嫌いですよ」
「この........開き直りやがって......このサイコパスが!」
男は僕に向かって殴りかかり.........一瞬にして骨になって崩れ落ちました。
さっきより身体に力が満ちていますね、これはどうやら、人をただ白骨化させるのではなく、生命力を吸収し、肉体――――生体部分をエネルギーに還元する能力のようですね。
「ところで.....サイコパスってどういう意味でしょうか?」
広範的な意味では、精神異常者という意味なんでしょうけれど......
僕はいたって普通の人間なので、関係ないですね。
僕の後ろに誰かいて、そちらに向かって言ったのかもしれません。
「さてと........皆いなくなってしまいましたね」
勿体ないので、物資は回収していきましょう。
金貨と食糧だけ頂くと、僕は行こうとしていた方向とは別に進み始めました。
そちらの方が面白いかもしれませんからね。
これは、心を持たないバケモノの物語。
彼は人の姿をした怪物。
神..........邪神は彼を選び、世界が始まって以来の混沌を齎したのだ。
これはそんな怪物が、神話に描かれるまでの物語。
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