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EP14 蒼空

シエル視点の話です。

私の名前はシエル。

シエル・ラーウェル。

少し前まで、普通の村娘をやっていた。

村での生活は苦しかったけれど、お父さんが居て、お父さんが頑張って街にものを売りに行って稼いでくれたおかげで私は何とか暮らせていた。

お母さんは私を産んで亡くなってしまったので、私はお父さんに頼りきりだった。

お父さんも私を可愛がってくれて、私は幸せだった。

ずっとこのまま大きくなって、将来は村の誰かと結婚して幸せになるんだ………そう思っていた。

お父さんが帰って来なくなるまでは。




最初のうちは少し遅れているだけだと思った。

でも、4日を過ぎた辺りで何かがおかしいと思い始めた。

そして10日が経って……村の人が私を捕まえて、奴隷として売り払い…

元々私のお父さんは村ではあまりいい目で見られてはおらず、外から来て結婚した人だったので、

今までは作物やとれた肉などを街に売って居たから見逃されて居ただけで、厭われて居たのは確かだった。

しかも、お父さんだけではなくローダさんとダグラスさんという村の人まで居なくなり、私のお父さんは金欲しさに村人を殺して逃げた盗賊ということになってしまった。

当然、私の身寄りなどなく…私は奴隷として売られてしまった。

馬車の中で色々質問され、その結果【愛玩奴隷】として売られることに決まった。

泣きました、絶望した。

でも、私を助けてくれるお父さんはもう…居ない。

私はどこか知らないところに売られて、村の人が私に教え込んだ「良き妻としての教え」も守れずに死ぬんだ…そう思って泣いた。


「………………」


私は中々売れなかった。

私は檻の中に野晒しにされ、食事も殆ど貰えず、排泄も垂れ流しとなって、痩せ細り…

当然、そんな私を買う人などおらず…

でもある時、私は光を見た。

店にやってきた男の人。

貧乏そうでも、不潔でもなく、醜いわけでもない黒髪と黒目の珍しい異邦人。

彼は、なんだか頼り甲斐がありそうで、私のお父さんみたいだった。

私は咄嗟に足を掴んだけれど、物凄い力で蹴られ、どこからかばきりと嫌な音がした。


「わ、私を買ってください!」


この人なら私を救ってくれる!

そう信じて私は懇願した。

でも………


「嫌です」


お兄さんは私に嫌悪を向けず、かといって申し訳なさそうでもなくそう言い放った。

それは、無関心。

私などどうでもいいんだと悟り、私は落ち込んだが諦めるわけにも行かず、自分の持てる価値を全て叫んだが…結果は惨敗。

彼はそれら全てに興味を示さず、私はただその場に打ち捨てられた。

その後、お兄さんは再びやってきた。

私はお兄さんが私を買ってくれる気になったのだと、胸が躍ります。

でも、それは全く違ったのだった。


「今日はいい肉壁になりそうな奴隷を探しにきたんですよ」

「ああ、分かりませんでしたか? 僕が魔術を使ってる間に、敵の攻撃を全部庇ってくれる優秀な壁を探しているんですよ.........幅があってタフそうなら誰でもいいですね、どうせいつかは死にますし」

「はあ..........あなたと話してもらちが明かないので失礼します」


救世主だと思って居たお兄さんは、悪魔でした。

人を人とも思っていない、文字通りの。

でも、私に興味はないみたいだった/

お兄さんは奴隷を買って出ていき、そして私はまた残された。

奴隷は次の日になると居なくなっていて、もしかして生きていたのかな、と思った私は聞いて後悔した。


「あ、あの........連れて行った皆さんは......?」

「ああ、皆死にましたよ。僕の役に立ててよかったですね。何の価値もないその肉体に僕が価値を付けてあげたんです、彼等も満足しているはずです」

「ひっ.................」


やっぱりこの人は、悪魔なんだ…!

人間に化けて、人里にやってくる悪魔…

人が苦しみながら死ぬのを笑いと共に見つめる悪魔…!


「さて、今日は君を買いに来ました」

「私.......を?」


一瞬、言葉の意味が分からなかった。

でも理解した途端、恐怖が溢れてきた。

でも同時に、死んで冥界へといった方がましかもしれない、という思いが頭に浮かんだ。


「ええ、意思のない人形のような奴隷では、長持ちしませんので......意思のある奴隷を訓練して、盾役をやらせようと思いましてね、せっかくなので面識のある君に頼みましょう」

「ひ...........い、ゃ.........っひ!」


怖い、怖い。

人を人とも思ってないこの人が、私をどういたぶるのか。

奴隷に堕ちた時点で覚悟していたそれらが、恐怖となって私を殴りつける。


「大丈夫ですよ、魔銀製防具と盾も用意してますし、死んだらお墓くらいは作ってあげます」

「いや........嫌です!」

「君に拒否権はありませんからね、では」


防具があっても私には使いこなせない。

それに、まだ死にたくなんかない…!

でも、この人は私を買うお金を持っている、それに買われてしまえば私に拒否権はない。

私はそうして絶望して………………

更なる絶望を味わうことになる。


「お......お兄さん........私を買ったんですか?」

「いえ、既に買いたいという人が居ましたので。特にあなたに拘りがあるわけでもないですからね」


私はほっとしたけれど、同時にある疑念が頭に浮かびました。

もしかして…


「そうですか........っ、まさか、私を買いたい人って........ふ、太った人でしたか?」

「そうみたいですね」


そんな!

あの人はここで何人も女の人を買って、そして誰も帰って来なかったし、それらしい死体を持って帰ってきたこともある人だ………

あの人に捕まったら、死んでしまう。

それも尊厳まで壊されて。


「ひ...........お、お願いがあります!」

「嫌です」

「お願いです! あの人は何度もここに来て女奴隷を買ってる人なんです! 私も買われたら殺される!」


たとえすぐ死のうとも、苦痛と共に死ぬよりはお兄さんに使い潰された方がずっといい。

私はそう思って、お兄さんに懇願した。


「あなたは”商品”ですから、買った人が壊そうが捨てようが自由ですからね、では僕はこの辺で」

「助けて! お願いです、助けてください!」

「そう言われてもですね.......」

「炊事洗濯だって出来ます! よ、夜のお世話だって.......! お願いです、あの男に買われて死ぬのだけは!」


結局、お兄さんは後から来たあの男に何かを言われて、立ち去っていきました。


「シエルちゃぁん、いい名前だねぇ…ボクはジョージ・ヘンフリーって言うんだ、君を買うのをずっと楽しみにしてたよ」


その声を聞いて、私は背がぞくりとした。

ニチャニチャと粘つくような笑みを浮かべたヘンフリー男爵は、その脂ぎった顔を私に近づけて、囁いた。


「さあ帰ろう、ボクん家にねえ」

「い、嫌っ!」


私は振り払おうと体を捩ったが、


「“動くな”!」

「きゃっ!!」


途端に体が動かなくなり、そして男爵に抱えられ馬車に乗せられた。

目隠しをされ、そしてそのうち意識を失った。




「起きろオラァ!」


私は蹴飛ばされて目醒めた。

目の前には鼻の大きい男が立っていた。


「オラ歩け! 地下牢まで連れてってやる」


私は立ち上がって、歩きました。

館を歩いて、歩いて、歩くと地下牢に辿り着いた。


「ここで待ってろ、出番が来たら男爵様のメイドが呼びに来るからよ」


扉が閉まり、私は暗闇の中に取り残された。

手足は枷で縛られて、何もできない。

私はいずれくる絶望から目を背けるように、再び意識を手放して……………


「っ!?」


眩しさに混乱した。

目醒めた時、私は朝の陽射しに照らされていた。

首をなんとか動かして、側を見れば椅子でお兄さんが寝ていました。

ということは…お兄さんが私を助けて……?

そう思っていると、お兄さんの目が開きました。

まるで今まで起きていたかのように。


「お…おに…さ」


舌がもつれてうまく喋れない。

感謝を伝えなければならないのに。


「良いですよ、お礼なんか」


お兄さんは静かにそう言い、私に手を向けました。


「よく考えたらあなたから記憶を奪えば良い話でしたし」

「ま、待ってっ!」


私は言う。

このお兄さんは、悪魔じゃない。

ただ少し考えがおかしいだけの人なんだと、『本物』を目にした私は思った。

だから、私が変えてみせる!

その瞬間、世界が変質した。


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