EP12 熱意
「そうですか、じゃあ別の奴隷を...........後日また来ますんで」
「ああ.........はい」
別に彼女に拘る理由もないですからね、この豚のように太ってて臭い男が買い手でしょうか?
何が目的かは一目でわかりますが、商品をどう扱おうと人の自由ですからね。
「お......お兄さん........私を買ったんですか?」
「いえ、既に買いたいという人が居ましたので。特にあなたに拘りがあるわけでもないですからね」
「そうですか........っ、まさか、私を買いたい人って........ふ、太った人でしたか?」
「そうみたいですね」
「ひ...........お、お願いがあります!」
「嫌です」
「お願いです! あの人は何度もここに来て女奴隷を買ってる人なんです! 私も買われたら殺される!」
「あなたは”商品”ですから、買った人が壊そうが捨てようが自由ですからね、では僕はこの辺で」
「助けて! お願いです、助けてください!」
「そう言われてもですね.......」
「炊事洗濯だって出来ます! よ、夜のお世話だって.......! お願いです、あの男に買われて死ぬのだけは!」
少女は僕の足に縋りついてきます。
蹴り飛ばそうかと思いましたが、殺してしまいますね。
面倒ごとは勘弁ですから、ここは適当に振り払って..........
「チミィ、ボクの奴隷に何をしているのかね」
後ろから不快な声が聞こえてきました。
「すいませんね、縋りつかれてしまって」
「さっさと退きたまえ、下賤なクソガキ。ボクは君のような汚物が大嫌いでね、今なら見のがしてやろう」
「......................そうですか」
僕は歩き出しました。
少し苛立ったのは事実ですが、自分らしくありません。
「チィ、何故あんな汚らしい平民が大手を振って歩けるのかね」
「お、兄さん..........助けて! 助けてくださいいいいいいッ――――あああああっ!」
「黙れぇ! 薄汚い孕み袋風情がァ!!」
「ぎゃああああああっ!」
背後から声が聞こえてきますが、煩いですね.........
しかし場所替えで逃げると能力がバレてしまいますから......
「ぃぎゃあああああっ、たすっ、たすけ――おに、ぎゃあああああっおにいさ――――――」
「助けを求めても無駄だよ、キミはボクちんのモノなのだからねぇ」
「やっ、やめ――――――」
路地を曲がると、途端に声は聞こえなくなりました。
用も済んだので、帰りましょうか。
今日も恙なく仕事は終わりました。
地竜を17匹、森狼6匹を倒して納品、盗賊の拠点4つを壊滅させ、首級を上げ、賞金としてそれぞれかなりの額を受け取りました。
盗賊退治は儲かりますね、使い道がないんですが........
「さて、そろそろ寝ますか」
収入を纏め、今後の予算案を練っていた僕は、寝ようとしてふと鎧を見ました。
あれと同じものがもう一対ありましたね............
「.............何を考えているんでしょうか」
少女一人を助けるリスクに見合うものが得られるとは考えられません。
非効率で不合理、無駄な行動です。
僕は黙って灯りを消し、眠りにつきました。
「なんかお前、元気ないな」
翌日、小鬼4体と豚鬼6体を倒して討伐の証を提出した僕は黙ってゴードンにそう言われました。
元気があっても考えが無ければしょうがないので、元気より思考が大切ですよ。
「そうですか?」
「ああ、ちゃんと寝てるか? 冒険者は体が資本だぞ」
「ええ、早寝早起きですからね」
前世の感覚通り食後4時間後に就寝し、夜明けから2、3時間後に目覚めています。
「とにかくいいもん食って静養しろよ」
「善処します」
いいもんの基準はわかりませんが、普段よりは野菜を多めにしますか。
死ぬ事はなくても体調は崩れるんですね……
「まだ見つかりませんか?」
「丁度いい奴隷はあんたが全部買っちまったからなあ……兄ちゃん、惜しい娘を逃したな」
「何のことですか?」
「彼女は元々村娘だったんで、戦いも少々鍛えてやりゃあ楽に覚えられたんでさあ、しかも炊事洗濯に、食える草の選別まで出来る」
「おまけに処女で……」などと言う奴隷商の声を聞き流し、僕は考えていました。
彼女が惜しい人材だったのは確かなようですが、だからといってどうしろと?
人の物を無断で奪うのは罪になるでしょうし、痩せ型の多いこの世界での太ったあの男は富裕層でしょう、目を付けられれば確実に面倒な事になります。
「まあ、少しは残念でしょうか」
当たり前だというのに、何故か虚無感を覚えました。
奴隷商を出て、他に奴隷商人が居ないかスラムを歩くことにしましたが……
「兄ちゃん」
「なんですか?」
いんちき占い師の老婆が話しかけてきました。
初めて会った時は激しい舌戦の末に辛勝した、僕にとって強敵ともいえる相手です。
「何を悩んでいるかこっちは分からないけどね、その思っている事は今すぐ実行した方がいいと私は思うね」
「僕は占いなんて信じませんよ」
「ほっほ、信じる必要もないて。ただ、生い先短い婆の独り言位は心に留めておいて欲しいのさ」
「分かりましたよ」
この老婆には僕も強く出られませんからね…
思わぬ反撃を食らいますから。
僕は奴隷商に戻って、店主に尋ねました。
「あの豚男は何というお名前ですか?」
「ぶ……豚男…まあいいでしょう、お教えしましょうぜ、あの男はヘンフリー男爵、バカ貴族でさあ」
「住んでる場所は?」
「そればっかりは教えられません、兄さんが勝手に死ぬのは関わり合いになりたくないですからねえ」
「いいでしょう…」
「ぎゃああああああああっ!?」
僕は簒奪を使って奴隷商の記憶を探り、目的の情報だけを奪い取りました。
位置が分かったので今すぐ行けますが、夜まで待ちましょう。
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。
 




