今更ですが、「親ガチャ」と聞いて思ったこと。
最近耳にする、「親ガチャ」という言葉。
これについて自分の周りでも、「親ガチャ外れた!」なんて言う人もいて……とりあえずひと通り話を聞くのだが多くの場合、ただの子供っぽい不平不満だったりする。
例えば、「やりたいことをやらせてもらえなかった!」みたいな。
これについて「それは単なるワガママでしょ」と言ってしまえばそれまでなのだが、本人の歩んできた道のりも気持ちも、本人しかわからないものだ。
ただ、自分は歳を重ねるごとに「親の大変さ」を感じていて、「ガチャかあ」と、ちょっと複雑な気持ちにはなった。
今回は、そんな想いをちょっと語ってみたい。
まず第一に。
住む家があって、食べるものがあって、着るものがあって……幼児教育~義務教育~高校〜と就学して……ここまでの子育てを「誰にでも当たり前にできること」だと認識していたら、大間違いだと思うのだ。
前述の「やりたいことをやらせてもらえなかった!」と嘆いていた人も、衣食住に困ったこともなく教育も滞りなく育ってきたそうだ。
その上で、小さい時に自分がやりたかった習い事や夢に挑戦させてもらえなかったことが不満で、「親ガチャ外れた」と言う。
しかし自分はそもそも、「その上で」だけでも大変なことだと思うのだ。
つまり、衣食住を維持して学校に通わせる、これって誰にでも簡単に当たり前にできることじゃないと。
自分の父は一般的なサラリーマンで、休日はずっと家でテレビを見るかパチンコに出かけるか。
遊びに連れて行ってくれることはほとんどなかった。
そんな面白みのかけらもない父に不満を持ったこともあったが、しかし真面目に働き続けてくれたおかげで家計が破綻することもなく、自身は学生時代から音楽に専念することができた。
特に、一人暮らしをして生活にどれくらいお金がかかるのかを知ってはじめて、ありがたみがわかった。
今では感謝ばかりだ。
もし父がニートだったら、悠長に音楽なんてやってられなかったかもしれない。
そして自分も、不安定な仕事をしている上にコロナのような予測不能の事態に陥ったり、病気や怪我で働けなくなるかもしれないし、衣食住をちゃんと支え続けられるか、不安がなくもない。
そして「子育て」というのも恐らく、むっちゃくちゃ大変なのだ。
自分がそう思い始めたのは、妹の子育てを間近で見てからだ。
旦那が転勤族の妹が一人目を産んだ後、実家で父母と子育てをしていた時期がある。
時々自分も顔を出してオムツ替えなどを手伝ったりもしたが、赤ちゃんがしょっちゅう夜中に泣くし突然熱が出たりするし、寝ることもままならない妹が日に日にやつれていくのを目の当たりにして、「こりゃ大変だ……」と痛感した。
そして、子供に何かあった時に判断を誤ったり、目を離した隙に大怪我をしてしまったりして、生命に関わったり生涯に残る後遺症を負わせてしまったりしたら……。
世話をするだけでも大変なのに、そんなプレッシャーが常にかかり続けたらと思うと、育児ノイローゼになってしまう人がいるのも無理はない。
そもそも親というのは「親学校」があるわけでも「親免許」があるわけでもない。
子供ができたら「親」というクラスにレベルアップし、自動的に各種ステータスが上昇したり「育児」や「医学」のスキルを取得できるわけでもなんでもない。
ただの一人の人間であり、「親初心者」として知識も経験もほとんどないままスタートするのだ。
数年前に「インクレディブルファミリー2」というアニメ映画を見たが、一家に新たに生まれた赤ちゃんがまるでモンスターのように暴れまわっていた。
あれは単なるキャラクター作りではなく、子育ての大変さを投影してるのかな、なんて感じた。
そしてきっと自分も赤ちゃんそして子供時代、学生時代......無茶苦茶迷惑をかけまくったはずだ。
そんな自分のために、両親は身も心も削って、自身がやりたいことをいくつも諦めて沢山の我慢をして、日々試行錯誤しながら子育てに奮闘してくれたんだと思う。
普通に感謝しかないのだが。
冒頭の、「やりたいことをやらせてくれなかった!」と言った人の話。
もしかしたらその人のご両親は、育てるだけできっと精一杯だったんじゃないだろうか?
だとしたら、それはいけないことなのだろうか?
五体満足で小中高と通わせてもらって、自分はそれだけで十分、ありがたいことだと感じる。
いつか自分が親になる日が来たら。
ちゃんと、食べさせてあげられるだろうか。
ちゃんと、住まわせてあげられるだろうか。
ちゃんと、着させてあげられるだろうか。
ちゃんと、通わせてあげられるだろうか。
もしかしたら将来子供に、「親ガチャに外れた!」と言われるかもしれないがそれでも、できるかぎりのことはしたい。
その根底にあるのはやはり、歳を重ねるにつれ身にしみてわかった、両親への感謝の気持ちだ。
そして、これをお読みくださってる方の中にも、「親」の方が沢山いらっしゃると思う。
皆様に、心からの敬意と感謝を述べたい。