その8 ~ゲーム本編~
※こちらはカドゲ・ボドゲカフェ企画の参加作品となります。
全部でその9まであります。本日6/6中にその9まで投稿する予定です。
「さ、最後はわたしの番。わたしがワオンさんからカードを引けば、わたしの勝ちだわ」
「えっ、どういうことだよ、ルージュちゃん?」
マーイがまん丸い目をぱちくりさせます。ブランもワオンも、驚いてルージュの顔をのぞきこみます。ルージュは得意げに、5枚ある手札をみんなに見せつけたのです。お花カードが5枚、それも全部ローズマリーのかわいらしい絵柄でそろっています。
「わわわ、すごい、それじゃあこれって、ルージュの勝ちってこと?」
ブランの言葉に、ルージュは首を横にふって答えました。
「いいえ、まだわたしの勝ちじゃないわ。だってもしここでわたしが、ワオンさんからオオカミさんカードを引いちゃったら、あがれないものね。それに、お花カードを公開してあがれるのは、自分の番だけだわ」
「でも、ルージュちゃんの運なら、自分の番にカードを引いても、きっとお花カードを、しかもローズマリーの絵柄を引き当てそうだぜ。……てことは、ワオンがワインとパンカードを使ったのは、完全にルージュちゃんへのアシストになっちまったじゃないか。ずるいぞワオン、ルージュちゃんに気に入られようとして、アシストするなんて」
なぜかぷんすか怒るマーイでしたが、ルージュはやっぱり首を横にふります。
「ううん、違うわ。……というよりも、ワオンさん、ホントはワインとパンカードを使わなくても、あがってたでしょ?」
ルージュの言葉に、ブランもマーイもぽかんとして首をかしげました。しかし、ワオンだけは、うっと顔をそらしてだまりこみます。
「もう、ワオンさんったら、ホントに優しいんだから……。でも、勝負なんだから、ちゃんと勝たなくっちゃダメよ。ワオンさんが持ってるオオカミさんカードはあと1枚。ワオンさんの手札は今10枚……じゃなかった、ブランからカードを1枚引いてたから、11枚ね。11分の1じゃ、どうやったってわたしの勝ちだわ」
「あと1枚? なんでだ、どうしてわかったんだ?」
ワオンとルージュを交互に見て、目をまたたかせるブランに、ルージュはいたずらっぽく笑いかけました。
「種明かしはあとでね。まずはカードを引かせてもらうわ」
しかしルージュは、すぐにカードを引くのではなく、じっくりと一枚一枚を見定めていきました。ワオンもなんとかポーカーフェイスでいようとしています。
「……ん、待てよ、でもよ、ワオンがあと1枚しかオオカミさんカードを持ってないって、おかしくないか? あ、それともあれか、お前さん、さっき『あっ』とかいってたのは、あれもしかして引っかけか?」
マーイが考えこむようにして、ブランにたずねました。なんのことかわからず、ブランはきょとんとしています。
「もう、マーイちゃんったら、種明かしはあとでっていったでしょ。今は静かにして、集中させてね」
「あ、そうか、ごめんよ」
ルージュの言葉にうなずいて、マーイは口を閉ざしました。いろいろと質問したげな顔をしていたブランも、ルージュがいつになく真剣な顔で、ワオンの表情を探ろうとしているのを見て、言葉を飲みこみました。
「……これかしら、それとも……これかしら?」
ルージュもマーイがしたのと同じように、ワオンのカードを指でつかむふりをして、フェイントをかけて様子をうかがっていきます。ワオンは表情を崩さないように、必死で無表情を維持しようとしていましたが、どうやらそれがあだになってしまったようです。ワオンの視線が、ある1枚のカードだけに注がれているのに、ルージュは目ざとく気づきました。
「ふふ、ワオンさんったら、ホントに優しいんだから。……どうやらワオンさんのお友達のカードは、これみたいね?」
ワオンが持っている手札の、一番右端のカードをつかんで、ルージュがにこりと笑いました。ハッとして視線をそらすワオンでしたが、どうやらそれは遅すぎたようです。
「うふふ、それじゃあこれがオオカミさんカードで、これ以外のカードを引けばわたしの勝ちね。……なんちゃって。これ、お花カードでしょ?」
ルージュの言葉に、ワオンは目をぱちくりさせました。
「うふふ、うまいこと引っかけようとして、このカードをじーっと見つめて、さもオオカミさんカードですよって顔してたけど、わたしはだまされないわよ。これはオオカミさんカードじゃなくて、お花カードでしょ?」
またしてもワオンにたずねますが、もちろんなにも答えません。ですが、だんだんと無表情だった顔に、驚きととまどいの色が見え隠れしてきています。
「さ、それじゃあこのカードを引いて、そのあとわたしの番でカードを引けば、わたしの勝ちだわ! あとはこのお花カードが、ローズマリーだったら、絵柄もそろってとってもきれいなお花畑……えっ、あれ?」