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その5 ~ゲーム本編~

※こちらはカドゲ・ボドゲカフェ企画の参加作品となります。

全部でその9まであります。本日6/6中にその9まで投稿する予定です。

「それじゃあまずはおいらからいくよ」


 カードの束をシャッフルして、みんな3枚ずつ引いたあとに、ワオンがカードを1枚引きました。もちろん爪はしっかり引っこめています。


 ――今日はラッキーだぞ、おいら、もうお花カードが4枚そろってる――


 しめしめとほくそ笑んだあとに、ワオンはあわてて口元をカードで隠しました。


 ――危ない危ない、こんな浮かれてたら、みんなにバレちゃうところだった――


 フーッと静かに息をはくワオンでしたが、左どなりの席のルージュがくすくす笑っています。


「ワオンさんったら、ずいぶんごきげんね。それじゃあ次はわたしの番だわ」


 ルージュもカードを1枚引いて、それから場にカードを1枚出しました。ワオンがあぁっと思わず声をあげます。


「はい、ワインとパンカードよ。みんな右どなりの人からカードを1枚引いていってね。まずはわたしよ。ワオンさんのカード1枚もらうわね」


 もちろんワオンのカードは、全部お花カードです。どれを引かれてもお花カードが1枚減ってしまいます。


「そんなぁ、おいら、せっかく手札が……」


 あわてて口をふさぐワオンでしたが、もう完全にみんなにバレているようです。マーイもブランもにやにやしてワオンを見ています。


「はぁー、今度はおいらが引く番か」


 ワオンが右どなりのブランを見ます。ブランは口笛を吹きながら、3枚のカードをワオンに見せます。と、ワオンは目をぱちくりさせました。


「あれ、2枚しかないぞ? みんな最初は3枚引いてなかったっけ?」


 口笛を吹いていたブランが、ギクッと顔を引きつらせました。しぶしぶ持っていたカードをずらしていきます。どうやら2枚重ねて持っていたようです。ワオンはムーッと目を細めてブランをにらみます。


「ブラン君、ずるいぞ。でもおいら、わかっちゃったよ。隠してたってことは、そのカードがお花カードだな!」


 とたんにブランの顔が青ざめます。ワオンはへへっと笑って、重ねて隠していたカードを引きました。そして……。


「あぁっ! そんなぁ、どうして!」


 引いたカードは、なんとオオカミさんカードだったのです。がっくりうなだれるワオンを見て、ブランがしてやったりと笑います。


「へへっ、悪いけどぼくのほうが一枚上手だったみたいだね。あとはオオカミさんカードを捨てるか、猟師さんカードを引くかしないと、いくらお花カードを集めたってあがれないよ」

「うぅ、やられたよぉ……」


 肩を落とすワオンを見て、マーイがにゃししと笑います。


「ま、そうがっくりするなよ、ワオン。大丈夫、おれがすぐに助けてやるさ」


 みんなが右どなりの人からカードを引き終わって、今度はマーイの番になりました。


「マーイ、助けてくれるっていってたけど、いったいどうするのさ?」

「ほら、こうするのさ」


 またもやにゃししと笑って、マーイが場に出したのは、なんとおばあちゃんカードだったのです。カードを全部束に戻して、もう一度配り直すカードです。これにはワオンはもちろん、ルージュもブランもびっくりです。


「ええーっ、そんなぁ」


 頭をかかえるルージュを見て、マーイはぷにぷにの肉球でカードをいじります。


「残念だったな、ルージュちゃん。多分手札は全部お花カードだったんだろう? ちなみにおれの手札は、ほら、こんなだったのさ」


 マーイが得意げに、持っていた3枚のカードをみんなに見せます。それを見てみんなはまたもやびっくり。なぜならそのカードは……。


「わっ、全部オオカミさんカードだ!」

「にゃしし、これじゃあどうしようもなかったけど、おばあちゃんカードを持ってて良かったぜ。さ、それじゃあみんな自分の手持ちのカードが何枚あるか見せてくれ」


 マーイにいわれて、みんなカードを場に出していきます。ワオンは4枚、ルージュ、マーイ、ブランはそれぞれ3枚ずつです。


「あれ、どうしておいらだけカードが多いんだろう?」

「だってワオンさん、効果を持つカードを使ってないでしょ。このゲームきっと、カードをどんどん使って邪魔したりすると、その分手札が増えないから、あがりにくくなっちゃうんだわ。でも、カードをコツコツ貯めていくと、今みたいに意地悪されて邪魔されちゃうのよ。マーイちゃんったら、意地悪なんだから」


 ぷくっとふくれるルージュのカードは、3枚ともお花カードでした。しかも全部カモミールの絵柄です。


「せっかくカモミールティーとおそろいになってたのに」

「にゃしし、悪い悪い。でもゲームだからしかたないだろ。それにほら、新しくカードを引いたら、またお花カードばかりになってるかもしれないじゃないか」


 マーイの言葉に、ブランがめずらしくうなずきます。


「そうそう、マーイのいう通りだよ。危なかったなぁ、ぼくもさっきオオカミさんカード引いちゃったから、どうしようかと思ってたんだよ」

「あーっ、ブランったら、ずるいんだから!」


 じろりと向かいに座っているブランをにらむルージュでしたが、ブランはへへんっと得意そうに笑っています。


「まぁまぁ、ほら、またカードを引いて、お花カードを集めたらいいだろう? さ、それじゃあ全部混ぜて、もう一度シャッフルしようね」


 ワオンにいわれて、みんなはカードを全部混ぜてワオンに渡します。しっかり爪を引っこめて、ワオンは器用にカードをシャッフルしていきます。


「それにしても、お前ずいぶんとカードさばきがうまくなったなぁ。最初はシャッフルするどころか、カードを持つのも苦労してたのに」

「がんばって練習したのさ。さ、それじゃあまた配っていくよ」


 ワオンにいわれて、みんな今度こそはとワクワクしながらカードを待つのでした。

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