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その4 ~インスト~

※こちらはカドゲ・ボドゲカフェ企画の参加作品となります。

全部でその9まであります。本日6/6中にその9まで投稿する予定です。

「もちろん、どうにかするカードもあるぜ。それがこの『猟師さんカード』だ」


 今度は銃を構えた青年が描かれたカードを、マーイが肉球でぷにぷにしました。ルージュがふふっとほほえみました。


「この絵、なんだかブランに似てるわね」

「えっ、そうかなぁ? じゃあ、このカードはいいカードなんだね?」


 ブランに聞かれて、マーイはひげをなでつけながらしぶしぶうなずきました。


「ま、そういわれるとそうかもな。とりあえずカードの説明をすると、この猟師さんカードは、オオカミさんカードを持っているときに役に立つんだ。猟師さんカードとオオカミさんカードをセットで見せて捨てると、新たにカードを2枚引けるのさ。簡単にいうと、猟師さんカードとオオカミさんカードを別のカードに変えることができるってわけさ」

「ほら、やっぱりぼくに似てるから、カードの効果もすごくいいだろ」


 得意げにいうブランを見て、ルージュはくすくす笑いをします。


「ブランったら、やっぱり子どもじゃないの」

「ま、とにかく猟師さんカードはかなりいいカードだけど、枚数はそこまで多くないから、あんまり引けないと思うぞ。それと、猟師さんカードと同じく珍しいカードが、これさ」


 マーイはまたしてもぷにぷにの肉球で、今度は赤ワインとライ麦パンが描かれたカードをたたきました。


「このカードは『ワインとパンカード』っていうんだ。このカードを使うと、右どなりのやつからカードを1枚とることができるんだ。ルージュとブランは、ババ抜きってゲームは知ってるだろ?」

「ババ抜きなら知ってるけど、あぁ、なるほど、ババ抜きみたいにみんなで1枚ずつカードを引いていくってことか?」


 ブランが一人でうなずくのを見て、マーイはひげをなでて答えました。


「そう、正解だ。たとえば手札にオオカミさんカードばかりのときとかに、これを使えば、うまくいけば自分のオオカミさんカードを相手に押しつけて、自分はお花カードを引けるかもしれないぜ」

「でも、もしかしたら自分のお花カードを引かれて、オオカミさんカードを引いちゃう可能性もあるってことかしら?」


 ルージュがくりくりした目を輝かせて、いたずらっぽくたずねます。マーイもにやっと笑いました。


「そうさ。だから運の要素が強いけど、ま、これも使えば盛り上がって楽しいもんだ。……それじゃあ、最後に一番レアなカードを説明するぜ。ルージュちゃん、ちょっとカードを貸してくれないか?」


 マーイはルージュからカードの束を受けとると、肉球をぷにぷにさせながら、カードを一枚ずつ見ていきます。ルージュとブランが顔を見合わせていると、ようやくお目当てのカードを見つけたのでしょうか。「あったあった」とつぶやいてから、おばあちゃんの絵柄が描かれたカードを二人に見せたのです。


「このカードは、『おばあちゃんカード』っていうんだ。どんな効果があるかっていうと、これを使えば、場に捨てたカードと、みんなの持ってるカードを全部混ぜて、もう一回シャッフルするんだよ」

「えっ、それじゃあ最初からやり直すってこと?」


 ルージュがまゆをつりあげてたずねます。マーイはにゃししと笑い声をあげました。


「おしいなぁ。ちょっとだけ違うのさ。シャッフルし直したあと、みんなそれぞれカードを引いていくんだけど、もともと持っていた手札の枚数分カードを引くんだよ。だからカードの枚数はかわらないのさ。ただ、たとえばあと1枚そろえばお花カードが5枚になるってときに、これを使われたらすごいがっくりくるから、お花カードがそろいそうでも顔に出したらダメだぞ」

「ブランはそういうの、すぐに顔に出ちゃうからわかりやすそうね」


 ルージュにからかわれて、ブランはちぇっと舌打ちしました。


「余計なお世話だい! こうなったら、絶対ぼくが一番最初にあがってやるからな!」

「お、それじゃあマーイはルールをだいたい説明したみたいだね」


 リンゴのような甘い香りがするカモミールティーと、お砂糖をたっぷり入れた紅茶、それにホットミルクとコーヒーをおぼんにのせて、ワオンがテーブルに戻ってきました。


「はい、カモミールティーにお砂糖たっぷりの紅茶だよ。十分甘いと思うけど、甘さが足りなかったらはちみつもあるから、試してみてね」


 ルージュとブランにカモミールティーと紅茶を、そしてマーイにはホットミルクを差し出します。ワオンは今日はコーヒーです。


「わぁ、いい香り。甘いリンゴの香りが、わたしすっごくお気に入りなの」


 さっそくルージュがカモミールティーに口をつけます。ブランも恐る恐る紅茶を飲んで、そして二人とも同時に「おいしい!」と声をあげたのです。


「すごいいい香りだ! それに甘さもちょうどいいよ!」

「わたしのカモミールティーも、ちょっぴり甘酸っぱくて、なんだか新鮮だわ!」


 顔を見合わせてから、味わうように飲む二人に、ワオンも満足そうにうなずきました。


「よかった、気に入ってくれて。ブラン君の紅茶には、とっておきのダージリンを使ったのさ。ルージュちゃんのカモミールティーには、カモミールだけじゃなくてレモンバームも加えて、甘酸っぱさを出しているんだよ。でも、気に入ってもらえてすごくうれしいよ」


 よほどうれしかったのでしょう、ワオンのしっぽも、ふりふりとゆれて、まるで飼い主になでられている仔犬のようです。ルージュが思わずくすりとします。


「そうだわ、こんなおいしいお茶には、クッキーがきっと合うと思うわ」


 バスケットのお花をそっとハンカチに包んで、ルージュがクッキーを取り出しました。ワオンとマーイが歓声をあげます。


「わぁ、ありがとう! それじゃあさっそく、あ、そうだ、お手拭きも持ってくるよ。クッキーを食べたあとは手をふいて、それでカードを楽しんでね」

「ワオンもちゃんと爪を引っこめとけよ。こないだ熱中しすぎて、危うくカードを傷つけるとこだっただろ」


 マーイにつっこまれて、ワオンはへへっと苦笑いします。人数分のお手拭きを持ってきてから、みんなそれぞれ飲み物を飲んで、いよいよ『赤ずきんちゃんのお花畑』の開始です!

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