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その3 ~インスト~

※こちらはカドゲ・ボドゲカフェ企画の参加作品となります。

全部でその9まであります。本日6/6中にその9まで投稿する予定です。

 興味津々といった様子のルージュに、ワオンは待ってましたとばかりにカードの束を持ってきました。マーイと遊んだあの『赤ずきんちゃんのお花畑』です。その絵柄のかわいらしさに、ルージュはもう大喜びです。ワオンからカードを受けとり、一枚一枚じっくりながめていきます。


「わぁ、かわいいお花の絵柄だわ! いろんなお花が描かれてるのね。パンジー、コスモス、チューリップ、それにこれはラベンダーだわ。なんだかお花畑にいるみたい!」

「そうだろう? ね、ほら、このカード、ルージュちゃんがつんできたお花にそっくりだよ」


 ワオンがカードを指さして、それからルージュがつんできた白い花を同じように指さしました。ルージュがカードに書かれた花の名前を見ていきます。


「あ、これ、カモミールだわ。わたし、カモミールティー大好きなの」

「そうなんだ、ちょうどよかった、それじゃあルージュちゃんはカモミールティーだね。ブラン君はなにを飲む?」


 ワオンに聞かれて、ブランは「あっ」と言葉につまってしまいました。ルージュとワオンの顔を交互に見て、口をパクパクさせています。ルージュはくすっと笑って助け舟を出しました。


「ブランは紅茶をお願いしてもいい? お砂糖たっぷりの紅茶よ」

「わかったよ。それじゃあいれてくるから、それまで二人とも、カードの絵柄を楽しんでてね。マーイ、二人にルールも教えてあげてよ」


 マーイは待ってましたとばかりにコクコクします。ワオンは面白そうにアハハと笑って、カウンターの奥へ入っていきました。


「な、ワオンはお前さんを食べたりしないだろ」


 まん丸い目を細めるマーイに、ブランはムッとして口をとがらせました。


「まだわかんないさ。ぼくたちを油断させて、眠り薬入りの紅茶を飲ませようとしてるかもしれないだろ」

「ブランったら、まだそんなこといってるの? ワオンさんはそんなひどいオオカミさんじゃないわ。優しい目をしてたもの」


 お花が描かれたカードをうっとりと見つめながら、ルージュがブランをたしなめます。ブランは面白くなさそうに小さく舌打ちしました。


「チェッ、なんだよ、ルージュったら……。あれ、その絵、オオカミが描かれてるぞ?」


 オオカミの絵柄が描かれたカードを見て、ブランが思わず手に取りました。マーイがコホンッと小さくせきばらいします。


「それじゃ、そろそろこのゲーム、『赤ずきんちゃんのお花畑』について説明をしておこうか」

「『赤ずきんちゃんのお花畑』っていうの? 赤ずきんちゃんって、あのおとぎ話の?」


 ルージュの質問に、マーイはへへっと笑ってうなずきます。


「そうさ。このゲームは、童話の赤ずきんちゃんをもとに作られたんだ。人間たちのボドゲカフェで、おれも一足先にプレイしたけど、けっこうおもしろくって盛り上がるんだよ。じゃあまずゲームの流れを説明しようか。最初にみんな3枚ずつカードを引いて、それから順番に1枚ずつカードを引いていくのさ。で、誰かが最初に『お花カード』、このお花の描かれたカードを5枚そろえたら勝ちになるんだ」

「お花の種類は関係あるの?」


 ルージュに聞かれて、マーイは首を横にふりました。


「いいや。お花の絵柄は関係ないぜ。全部まとめてお花カードだから、ラベンダーでもチューリップでも、カモミールでもどれでもいいぜ。とにかく5枚集めれば勝ちさ」

「でも、それならこんなにお花カードがあるんだし、すぐに集まるんじゃないのか?」


 今度はブランが質問しますが、マーイはやっぱり首を横にふって答えました。


「運がよければな。でも、たいていはそうならないのさ。その理由が、こいつだよ」


 マーイはあの、オオカミの絵が描かれたカードを手に取りました。


「このカードは、『オオカミさんカード』っていって、お花カードの次に多いのさ。そして、これが意地悪なお邪魔虫なんだよ」

「なんだよ、それじゃああのワオンも悪いやつなんじゃないか」


 ほおをふくらませるブランを見て、ルージュが思わず笑ってしまいました。


「ブランったら、もう、子どもみたいなこというんだから。ゲームの話でしょ。……でも、どうして意地悪なお邪魔虫なの?」

「あぁ、なぜならこのオオカミさんカードは、1枚でも持っていると、お花カードを5枚集めても勝ちにならないんだよ。だから勝つためには、オオカミさんカードを捨てる必要があるのさ」


 マーイの説明を聞いて、ルージュが少しショックを受けたように口を手でおおいました。


「なんだかちょっとかわいそう……」

「ルージュちゃんは優しいな。ま、でも多分ゲームをし始めると、だんだんこいつが憎らしくなってくると思うぜ。あ、そうだ、さっき順番に1枚ずつカードを引いていくって説明したけど、オオカミさんカードを捨てるときは、カードを引くことができないから、気をつけてくれよ」


 オオカミさんカードを肉球でぷにぷにしながら、マーイが面白そうに笑います。ブランがムーッと小鼻をふくらませます。


「なんだかいやなカードだなぁ。どうにかできないのか?」

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