表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

その2

※こちらはカドゲ・ボドゲカフェ企画の参加作品となります。

全部でその9まであります。本日6/6中にその9まで投稿する予定です。

 ワオンをカドゲボドゲの沼に誘いこんだあと、マーイはさっそく、ワオンのおとぎボドゲカフェの集客を始めたのです。マーイがまず最初に目をつけたのは、おとぎの森一番の美少女、ルージュでした。


「マーイちゃん、ほんとに大丈夫なの? いくらマーイちゃんのお友だちっていっても、オオカミさんでしょう? わたし、食べられたくないわよ」


 マーイに手を引かれながら、まだあどけない女の子のルージュは、顔をこわばらせてたずねました。ルージュの頭には赤ずきん……ではなく、赤くて大きなリボンが結ばれています。そのリボンが不安そうにゆれました。


「もちろん、ワオンは絶対にルージュちゃんを食べたりしないよ。それどころか、このおとぎの森の仲間たちは、誰も食べたりしないさ」


 ひげをなでなでしながら、マーイは照れたように一人でうなずきます。しかし、ルージュのとなりには、デレデレするマーイをキッとにらみつける男の子がいたのです。ルージュの双子の弟であるブランです。


「ルージュ、こんな得体のしれないネコのいうことなんか聞いちゃダメだよ。なぁ、今からでも間に合うよ。やっぱり帰ろうよ」


 ブランは完全にマーイを信用していない様子で、まるで猟師のような鋭い目を向けてきます。マーイもムカッとしたのでしょう、しっぽの毛を逆立てて、ブランを真正面からにらみつけます。


「ワオンと話したこともないくせに、ずいぶん疑り深いんだな?」

「オオカミとなんて話したところで、どうせろくなこといわないだろう? それどころか、言葉巧みにぼくたちをだまして、うまいこと食べようとするに決まってるさ」


 ブランの言葉に、ルージュが「ヒッ」と小さく悲鳴をあげました。マーイがあわててルージュをなぐさめます。


「あぁ、そんな怖がらないで。本当にワオンは君たちのことを食べたりしないよ! 昔この森に住んでいた、悪いオオカミとは違うんだよ。それはおれが保証するよ」

「どうだか。お前もそのワオンとかいうオオカミとグルなんじゃないか?」


 またしてもブランが口をはさんだので、マーイは思わず「シャーッ!」とブランをいかくします。ブランも腰から猟銃……ではなく、愛用のパチンコを取って構えたのです。ルージュがあわててブランを止めます。


「ちょっと待って、ブラン! マーイちゃんにそんな危ないもの向けないでよ!」

「でも、ルージュ、もしこいつがその悪いオオカミの手先だったら、ぼくたちとっても危険なんだよ!」


 ルージュに止められたのがショックだったのでしょうか、ブランは白いほおを真っ赤に染めて、ルージュを説得しようとします。ですが、ルージュは首をふってマーイに向きなおりました。


「マーイちゃんはそんなひどいネコちゃんじゃないわ。いろんなお話を聞かせてくれるし。わたしの大事なお友達だもん」


 まっすぐ姉のルージュに見つめられたら、ブランはもうなにもいえなくなってしまうのです。口ごもってしまい、もじもじしていましたが、ようやく小さくうなずいたのです。


「わ……わかったよ。ルージュがそこまでいうなら、信じるよ。でも、おいネコ、もしぼくたちをオオカミに食べさせようとしたりしたら、そのときはひどい目にあわせるからな!」


 肩をいからせるブランを、ルージュが非難するようににらみつけます。


「ブラン!」

「う……。ごめん、悪かったよ」


 しゅんとするブランを見て、マーイはにゃししとほくそ笑みます。と、ルージュのくりっとした目にきらきらと星がともりました。


「あっ、お花畑! マーイちゃん、ちょっとここで休憩しましょう」


 道を少し外れたところに、赤、ピンク、黄色、紫と、色とりどりの花が咲いていたのです。いても立ってもいられないといった様子で、ルージュがそのお花畑にかけ入っていきます。ブランは頭をがしがしかいて、小さくため息をつきました。


「まったく、ルージュ、寄り道してて遅くなっても知らないよ」

「大丈夫よ。それにオオカミさんも、お花の束をプレゼントしたらきっと喜ぶわ」


 ルージュは白く細い指で、愛おしそうに花をつんでいきました。持っていたバスケットにハンカチをしいて、その上につんだ花を並べていきます。


「そういやルージュちゃん、そのバスケット、なにが入っているんだい? もしかして、ぶどう酒とかじゃないよね?」


 マーイに聞かれて、ルージュは思わず笑ってしまいました。


「もう、マーイちゃんったら、ぶどう酒なんて入れてないわよ。わたしが焼いたクッキーが入っているわ。オオカミさん、甘いものが好きなんでしょう?」

「あぁ、ワオンもおれも、大の甘党だからな。そりゃきっと喜ぶぜ」


 うんうんと首を縦にふるマーイを見て、ブランはふんっと鼻を鳴らしました。


「ぼくたちを食べたあとに、デザートも食べようとするなんて、ずいぶん欲張りなオオカミだな」

「ブラン!」


 またもルージュにどなられて、ブランはビクッと身を硬くしました。


「あ、ごめん……。悪かったよ」

「もう……。さ、それじゃあ行きましょう」


 バスケットをお花いっぱいにして、ルージュはくりっとした目を輝かせました。




「やぁ、いらっしゃい。ワオンのおとぎ喫茶……じゃなかった、ワオンのおとぎボドゲカフェにようこそ」


 森の外れにある、ワオンのおとぎボドゲカフェに足を踏み入れると、リンゴのような甘い香りとともにワオンが迎え入れてくれました。


「あんたがオオカミ? それにしては……」


 ハトが豆鉄砲を食らったような顔で、ブランがワオンを見つめます。スーツすがたで、器用に二本足で歩くワオンは、オオカミというよりもウェイターさんのように見えました。


「ささ、どうぞどうぞすわって。お飲み物はなににする? ケーキもあるけど、どんなお味が好き?」


 ワオンにうながされて、ブランは完全に目をまん丸にして固まっています。しかし、ルージュはくりっとした目をきらきらさせて、ワオンについていきます。


「すごい、素敵な喫茶店だわ……。あなたがマーイちゃんのいっていたオオカミさんね?」

「うん。今日は来てくれてありがとう。おいらの名前はワオン。このおとぎき……、おとぎボドゲカフェの店長さ」


 少し照れたように笑うワオンを見て、ルージュはくすっとします。


「わたしはルージュ。こっちは双子の弟のブランよ。このお店、ボドゲカフェっていうの? なんだか不思議な名前ね。あ、そうだ、ケーキもいいけど、今日はわたしもおみやげを持ってきたの」


 そういって、ルージュは先ほどのバスケットをテーブルの上に置きました。花いっぱいのバスケットを見て、ワオンは「わぁっ」と思わず声をあげます。


「すごい、お花いっぱいつんできたんだね。うれしいな、今日のカードゲームも、お花がいっぱいだからぴったりだよ」

「カードゲーム? でも、ここ喫茶店って聞いたけど、カードゲームもできるの?」


 ワオンの言葉に、ルージュはくりくりした目をぱちくりさせて、首をかしげます。ワオンはチラッとマーイを見てから、こくりとしました。


「うん。このカフェの名前、『ワオンのおとぎボドゲカフェ』っていうんだけど、ボドゲカフェのボドゲは、ボードゲームのことなんだよ。あ、もちろんうちはカードゲームも取り扱っているよ。それで、おいらが作ったケーキや紅茶を楽しみながら、ゲームを遊んでもらうんだ」


 ゲームと聞いて、ルージュの目がまたしてもキラキラし始めます。さらにブランも、そわそわしながらワオンのほうを盗み見ています。


「ゲームで遊べるだなんて、すごいわ、面白い喫茶店ね。ねぇ、ワオンさん、いったいどんなゲームがあるの?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ