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箱のようだ。
ボンヤリと、安藤雅実はそんな事を思う。
イメージとしては、ケーキなどが入っていそうな白くて綺麗な箱だ。
何が入っているか、ワクワクしても良さそうなのに全くと言っていいほど期待感を煽られない。そお理由は分かっている。
何も入っていない可能性があると気づいているからだ。
雅実の思う白くて綺麗な箱とは、学校そのものだった。
高校二年にもなって何を言っているのだと自分でも思うのだが、そう感じてしまうのだからどうしようもない。
閉じた世界、閉じた空間。ただの印象なので、もちろん外に出る自由はもちろんある。
実際、毎日のように家から学校へと通っているのだ。途中で気紛れを起こして、そのまま遠くへ行く事だって可能だ。
だが、そうしない。
高校生である雅実にとって学校で過ごす時間は一日の大半を占める。どこへ行くのも自由だと言われても困るだけだ。行く宛などなかったし、飛び出してみたところで後々面倒な事になると分かっている。
大人しく箱の中へと入るしかないのだ。
携帯電話と似てる。そうも思う。
手のひらに収まるほど小さな機械。それはボタン一つで世界中と繋がる事が可能だ。しかし、それをもってして、世界が広がったと言えるだろうか。雅実にはそんな実感など全くない。繋がったところでどうしようもないし、広がったと言われても所詮は手の平に収まる程度の世界でしかない。
無限の可能性なんて物を雅実はこれっぽっちも信じていなかった。
毎日同じ事の繰り返し、起伏も波乱もなく単調に過ぎるだけの日々。
閉塞感に息が詰まりそうだったが、何よりも退屈に倦んでいた。
だから、魔が差したのだ。