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俺が愛した彼女は、実は魔女でラスボスだったって話

自分の中でははじめての恋愛作品です。

これは恋愛と呼べるのか?


なんか違うような気もしないでもない…….

「コニー、もう終わりにしよう!」


 俺は真面目に言った。

 だって、彼女に俺の話をちゃんと聞いて欲しかったから。

 だから、真面目に言ったんだ。


「コニー、世界が許さなくても君には俺がいる。俺じゃダメか? 俺は君を……」


 ダメだ、すぐ喉元まで出てきてるのに、肝心の声がここで出なくなる……

 くそ、どうしようもないじゃないか……

 なんて情けないんだ、俺は!

 下に顔を向ければ、足元には無残に散った勇者の一行が寝そべっている。

 彼女がやったんだ。

 人間で最強を誇ると言われたあの勇者でさえ、彼女は一切寄せ付けず、圧倒的な魔法で退けた。

 そんな彼女に、俺は……


「君を……何?」

「え?」


 コニーに声を掛けられ、俺は顔を上げた。


「アッシュ、いつもそうだよね。肝心なところで言葉に詰まってる」


 そういうコニーの顔は、微笑んでいた。

 目尻がちょっと下がって、眉根が八の字に寄って、困ったようにこっちを見つめながら微笑んでる。


 いつもの、困ったときのコニーの顔。

 無邪気で屈託のない、綺麗な彼女の笑顔だ。


「コニー! 俺は君が魔女だからって否定はしないよ。だって、君は君じゃないか」


 俺がそう言うと、コニーはふふふっと笑いながら「ありがとう」と呟いた。


「でも、ダメなんだよ。この世界では、魔女とふつうの人間は一緒になれない決まりなの」

「誰がそんなこと決めたんだよ!」

「それが理なんだもの。仕方ないよ。アッシュにはアッシュの幸せがある。だから……」



「だから、私のことは忘れて……幸せに生きてほしい」


 さっきまでコニーは笑顔だったのに。

 なのに、そう言った途端、悲しげな表情に変わった。

 なんだよ、「理」って。

 そんなの、誰が決めたんだよ。

 違う。

 きっと何か方法があるはず。

 俺とコニーが……

 違う種族が、壁を越えて一緒になれる方法が……

 ある筈なんだ!


「コニー! そんなこと言うなよ! きっと一緒になれる! だから……」


 俺がコニーにそう言った途端、わき腹が急に熱くなった。

 見ると、俺のわき腹から剣が顔を見せている。

 足元には血が……

 血が流れて……いる?


「ーーえ?」

「き、貴様! 魔女は、我ら人間の最大の敵だぞ! そ、それを……」


 振り返れば、コニーの攻撃に倒れていた「勇者」ヘンリーの顔が、俺の頭の後ろにあった。

 息を荒げながらヘンリーは、俺を……刺した?


「へ、ヘンリー?」

「気安く名を呼ぶな! 普通の一般職ごときが!」

「うぐっ!」


 ヘンリーはそう凄みながら、さらに剣を深く差し入れてきた!


 ブシュリと血が吹き出る。

 い、痛い! 熱い!

 目眩がする、クラクラする……

 あぁ、どうして? どうして……?


「アッシューー! 貴様! よくもアッシュを!」


 コニーは叫び、手をかざした。

 同時に、ヘンリーの頭がボチュン! と音を立てて吹っ飛ぶ。

 けど、剣は俺の腹に刺さったまま。

 頭が無くなったヘンリーは後ろに倒れ、俺はその場に膝をついた。


 体が震える。

 さ、寒い……

 目の前が薄暗い。

 よく見えないよ……


 死ぬって、こういうことなのかな?


「アッシュ!」


 コニーの声が聞こえる。

 あぁ、コニーが俺に駆け寄ってくる。

 そして俺に手を伸ばし、俺を……

 抱きしめて来た。

 あったかいなぁ、コニーは。

 いい匂いがする。

 力を振り絞って、彼女の背中に手を回す。

 その感触といえば、とても華奢で柔らかくて……

 あぁ、これがコニーの感触かぁ。

 最後の最後でコニーに触れることができたって……


 ーーははっ、なんの皮肉だよ?


 このままコニーとずっとこうしていたい。

 抱きしめ合っていたい。

 けど、けど……



 もう、ダメみたいだ。




「コニー。ごめん……」

「アッシュ! ダメ、死なないで!」

「あ、あはは、コニー……、ごめんよ。もう、何も、見え、な、い……」

「いや! アッシュ、アッシューー!」


 ごめんよ、コニー。

 もう何も聞こえないや。

 何も見えないや……


 愛しいコニー。


 結局、俺たちは結ばれなかったんだね。

 幼い頃の約束は、遂に果たされなかった。


 こんなことってあるだろうか。




 ーーただ、好きになっただけなのに。


 ーーただ、種族が違うっていうだけなのに。












 俺が愛した彼女は、ただの魔女でラスボスだったっていうだけなのに……



 さよなら。

 愛しい、コニー……








 ーー







 そこで目が覚めた。

 いつもの夢。


 アパートの窓からは風が差し込んでくる。

 体を起こすと、ベットがギィと軋んだ。

 ベットサイドの丸テーブルに積まれてるのは、就活のガイドブック。


 こんなもの、見たくもない。


 時計を見れば、昼過ぎだった。


「やべっ! 遅れちまう!」


 俺は慌てて荷物を取り、携帯を取った。

 今日は図書館に行く日だ。

 友人と就活対策を立てる約束をしてる。

 図書館のカードを取り、ふとあの人の顔が思い浮かんだ。

 最近よく見かける、カウンターにいるあの人。



 ーーあの書士さん、今日はいるかな?



 そんなことを考えながら、俺はアパートのドアを開けた。

 ムッとした空気が流れ込んでくる。


 スカッとした青い空が広がる、暑い夏の昼下がり。


 少しだけウキウキしながら、俺は図書館へと向かった。





お読み下さり、ありがとうございます!


勉強のつもりで書いてみました。

恋心って言うのは、表情が難しい……


よろしくお願いします。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 良きでした! 短編ということもあり、おいしいとこどり、という感じで楽しく読めました。 どういう路線になるのかわからないのでアレですが、個人的には主人公以外の勇者一行も人格者であれば、私好み…
[良い点] こういう最終回っぽい話は大好きです。 来世では絶対一緒になろうね!的な。 全然違うかもしれませんが。的外れなこと言ってたらごめんなさい。 [一言] 続きが気になります。
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