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サイハテ新章  作者: 佐々薙 慎
4/20

4話 嵐の訪問者

「やあ。留守かと思ったら中に人がいるではありませんか」

 そこには雨具で身を包み顔はフードを深く被ってよく見えないが暴雨暴風の嵐の中3人が外に立っていた。

「失礼するからな」

「あ、おい!」

 土足で男が家の中に許可なく入り、注意を呼び掛けようとした時には、後から2人も同じく玄関の中まで入ってきた。見た感じだと中に入っていった男は若そうで、後から入ってきた2人の内、1人は大男。もう1人は身体が華奢だから女性だろう。

「そこの君。ここの部屋を通してくれないか?」

「どうしてですか?」

 アリシェがメミアが寝ている部屋の前で突っ立って、道を塞いでいるのに違和感を感じたのか、若い男はその部屋を睨んだ。

「居るんでしょ?そこに誰か…」

「キャッ!」

 若い男は強引にアリシェを突き飛ばして中へと入っていった。

「おいっ!お前ら何しにここに来た?」

「何もしないなら、お前たちに危害は加えない」

「はあ?」

 すると、若い男はメミアを引きずって部屋から出てきた。

「おい。居たぜ。ここに悪魔が」

「離して…痛い!誰なんですか?」

「メミアちゃんに何してるの!」

「女は引っ込んでろ!」

「…くっ!」

 さっきこの男に簡単に突き飛ばされてしまった。アリシェはこの男を力で押さえ付けたくても力が足りない。それに、さっき大男が言った何もしないなら手を出さないという言葉を信用してしまってるせいか、迂闊に手も出せない。

 ハクヤもまだ冷静に話を聞き出そうとしている。手を出すような素振りはない。メミアは高熱の病で苦しんでいる。何があったかは分からないが、このまま行かせるわけにもいかない。

「もう忘れたのか?俺たちのことを」

「ぐぅっ!」

 メミアの首を掴んで壁に追い込む。

「流石、天才の一族の末裔だな。立派な頭脳を持ち合わせてるのに対して、記憶能力は低脳か!だったら、思い出させてやる」

 必死になって掴まれた手を退かそうともがくが、男の力には敵うはずもない。

 掴んでいた手を首をメミアは尻餅をついて一時解放され、フードを取って金髪の男は語りだした。

「あの日は快晴で絶好の船出日和だった。しかし、船にどこから潜り込んだのか、お前がいきなり現れて舵を動かした。そのせいで嵐とぶつかり、我々の船は沈没。仲間たちは海の上で行方が分からなくなり、生き残ったのは俺たち3人のみ!」

 抑えきれないその怒りは床に足底を勢いよく踏みつけドンと音を立てた。メミアは恐怖で肩が震える。

「おい、子供だからって知らないで済むとでも思ってんのか?」

 金髪の男はメミアの髪を掴んで、 女の子にも容赦なく睨み付ける。

「おい!」

 もう見てられなくて、ハクヤが大声で割って入ろうとするが、金髪の男に睨み返された。

「部外者は大人しく下がってろ!俺も俺の組織も非常に大人しい一味だが、この問題だけは引き下がれない!」

 メミアが舵を取ったのは確かだ。しかし、メミアの証言では嵐を避けるために舵を取った。結果として救うことはできなかった。勝手に舵を取ったメミアに責任が置かれている。

 だが、メミアは救おうとした。メミアは本当に悪いのか。誰も嵐に気が付かないまま、メミアだけがそれに気付いた。それがきっかけだったはずだ。

「私は…みんなを……救おうとして…」

「お前が舵を取らなければ、犠牲がここまで多くはなかった。生き残ったのは3人だぞ。あの船には何人乗ってると思うんだ…」

 金髪の男は掴んでいた手を離して尻餅ついたメミアの頭上の壁に拳をぶつけて悔しさを見せる。

「お前さえ居なければ…!なんで勝手に船に乗り込んでいた!なんであの時舵を取った!?ふざけるんじゃねえ!」

 金髪の男は何度も壁に拳をぶつける。この男はその悔しさからにじみ出てくるように仲間を想っていた。

「本当にわ、たし…」

「責任取れよ」

 小さな女の子に対してどんなことをさせるのか、何を強要させるのか、償いが果たせるとは思えない。

「処刑は当然の償いだが、他にも良い償いがあるぞ。死にたくはないだろう?」

 この金髪の男は止まらない。脅迫っぽく小さな女の子を脅す。

「お前みたいな可愛いらしい容姿や声の子は金になりそうだしな。でも、俺にはお前はただの怪物のようにしか見えないがな!」

「うう…!」

「やめて!」

「アリシェ?」

 メミアの悲鳴をもう聞いてはいられない。それにこの人もまた外道を犯す気だ。

「そんなことして良いと思ってるんですか?」

「部外者は黙ってろ」

「幼い子に手を出して、その子を売りに出して、あなたの方が…」

「うるせぇぞ。よっぽど俺が悪党に見えるとかそう言いたいんだろう。俺はこれでも冷静だからな。家に押しかけたことが悪かった。こんなものを見せられて気分悪くなっただろう。見て見ぬフリをさえしてくれればいい。そしたらお前たちにも危害は加えない」

「つまり、手を出して割り込めば、そっちも手を出すってことだな」

「理解が良くて助かる。そっちのお兄さんは」

 ハクヤはアリシェが無闇に手を出さない方がいいと遠回しにどうなるかを教えてくれた。

「まあ、こんな状況でも庇いたくはなりますよね。君たちには話し合いだけで解決がしたい」

 手を出すより説得なら解決する方法がある。この人と話し合えればメミアは救える。

「メミアちゃんがしたことは、あなたたちにとっては最悪の出来事だったのかもしれない。けど、あなたがやろうとしていることも酷いと分かっていますか?」

 まず、メミアに対しての暴力を止めさせないと、それだけは見てられない。

「俺だってこういうのは好きじゃないんだけど、どうにも気持ちがこう、前に進むんだよ。人を殺められたこの気持ちをどうにかしたくてね」

「分からなくはない。けど、俺にはそんな状況になったことがないから分からない」

 



「やめろ!」

 思わず足が、構わずこの状況からメミアの目の前に立った。

「まあ、こんな状況でも庇いたくはなりますよね。君には話し合いだけで解決がしたいよ」

 俺も話し合いで解決がしたい。この人と話し合おう。

「俺だってこういうのは好きじゃないんだけど、どうにも気持ちがこう、前に進むんだよ。人を殺められたこの気持ちをどうにかしたくてね」

「分からなくはない。けど、俺にはそんな状況になったことがないから分からない」

 思っていることをお互いに全部告げる。でも、まだこの程度なら通じられるなら軽すぎた。

「卑劣で残酷で残虐で、好きでもないのにやりたくてたまらない。収まらない。収拾がつかないこれだと!」

 ダメだ。この人は話し合いで解決したいけど、それを止めるにはどれだけ説得に応じられるだ。今アリシェとハクヤが説得した言葉を鵜呑みにしていない。もう一度言うべきだろうか。

「なあ。お前たちも仲間なんだろう?あんな幼い子に何させる気だ。酷いと思うならあの男を止めてくれよ!」

 ハクヤは金髪の男に助けを求めた。仲間の1人がフードから顔を出して、ハクヤの目の前に行き、頭を下げた。意外にも女性で優しそうな人だった。のに。

「譲っていただけませんか?」

 この人まで彼と同じ事を言う。更に最後の1人がフードを取って話しかけてきた。とてもごつそうな男で怪力の持ち主に見えた。

「我々は元々大きな組織だった。ほとんどの組織としての活動はあの船で世界を旅していた。確かにたまには組織の者ではない客も乗せていたりしたさ」

「だが、勝手に舵を奪って嵐に激突。組織は潰された…」

 それが本当だとしてこの子は。いや、

「だからって、酷い目に遭わせるわけにはいかない」

「ですから!」

「もういい!!」

 金髪の男は仲間の女を止めて目の前に座っているメミアの腰に手を回して担いだ。

「……邪魔はしないでくれるか?」

「話し合いましょう!まだ私たちと話し合えてません!」

「そうだ。まだ話は終わってない!」

 もうこの金髪男は勝手に連れて行こうとしている。ろくに話し合いもせず、思い通りにならないならいっそ潰して納得させたいと思うような目付きをして。アリシェとハクヤ2人がかりでならこの男は何としてでも止めたい。

「お前たちには関係ないだろう?他人だぞ。他人になんて興味ないだろう?今までに知らない人を平気で見捨てる行為もしたんじゃないか?じゃあ、なぜお前はそこに立つ?なんで割って入る?この状況を怖くてびびってるんじゃないか?なんで俺はこんなことしてるんだ?そう思うなら、さっさとそこを通らせてくれよ?」

「残念だが。俺は今までに他人と接した事がないから分からない。俺はここの森から出たこともないからな。そこにいる妹と2人暮らししてるもんだからよ」

「そうかい。君たちは僕が言ったことが分からないのか。でも、分かってほしい。君たちにはこの子は助けられない」

「そんなことやってみなくちゃ分からないだろう!」

「やるって、何をだ?」

 2対3で数は不利だ。それにこの人たちは組織の人間だ。大きな組織の人間は戦闘に慣れていて強いとも聞いたことがあった。優しそうな女の人は戦闘とは皆無かもしれないが、男2人は手強そうだ。

「もう話し合う気なんてないんだな」

「ああ。だが、理解してくれ」

 決して相手から手は出さない。決めるのは部外者が手を出すかどうかだ。アリシェとハクヤの行動次第でメミアとこの組織の人たちの今後が動き出す。

 アリシェは足がすくんで声がでない。人と戦うのが怖い。それも男の人と。

「俺は…」

 ハクヤも迷っている。迂闊に手を出したら酷い目に遭うから。

「迷うならどけ。そして、忘れろ。お前は何も悪くない」

 肩をトンと叩いて金髪の男はハクヤの横を過ぎて行った。

「行くぞ」

「助けて!ハクヤさん!アリシェさん!」

「……っ!!」

 背中から聞こえたメミアの声にハクヤの身体が動いた。考えるより前に、手が出てしまう。

「があっ!?」

 金髪の男はメミアを放って吹き飛ばされ、ドアを破って外に放り出された。

「お前!?」

「何てことを!」

 仲間の2人が呆気にとられるなか、金髪の男は倒れずに立ち上がった。一撃で倒せられなかったらしい。

「いてえじゃねえか…!」

 地面を蹴って跳躍し、すぐにハクヤの目の前まで迫る。

「貴様も一発くらえよ」

「がっ!?」

 同じ箇所を痛みを分かち合うようにハクヤに拳の一撃放った。ハクヤも吹き飛ばされ壁に激突する。

「どうだ!…っ!」

 喧嘩が始まった。アリシェは呆然としている。自分も手を出して戦えばいいのか。でも恐怖がそれを勝る。

 ハクヤは静かに立ち上がった。口を噛んで切った傷を手で拭って睨み付ける。

「軽いな…」

「サクトの本気の拳を受けて、気絶しないのか。お前は何者なんだ?」

 冷静に状況を見ているごつい顔をした男が思わず思ったことが口から溢した。

「今はお前の相手なんてする気はない。さっさとくたばりな!」

 更に金髪の男はハクヤに拳を振る。ハクヤは避けきれず何度も拳をくらい続ける。ハクヤに攻撃する余裕がなかった。

「くあっ!!」

「這いつくばりな!」

 金髪の男はかかとを振り上げた。ハクヤはそれを見ていなかった。頭を殴られたときに真横を振り向いたせいでそれを見切ることができなかった。

 大きく振り上げたかかとはハクヤの左肩に強く乗しかかった。

「があっ!」

 ハクヤはその場の地面に倒れてしまった。

 流石にそれは効いた。致命的に左肩に痛みが走る。たった1人を相手にこのザマだ。

「手加減したんだな…」

 ハクヤには意識が合った。それで手加減したのだとすぐにわかった。

「ああ、だがもう立てない。行くぞ」

「待って!」

 アリシェは止めようとするが、金髪の男に睨まれて、身体が一瞬で硬直した。怖くて怖くてたまらなかった。

 ハクヤはうっすらと目を開ける。アリシェが手を出さないことに気付いた3人はそのまま無視してこの家から出ていく。

「ま………て…」

「ん」

 かすかに耳に届く声に3人が振り返るとハクヤは立っていた。

「これ以上、手を出したら死ぬぞ」

「そうじゃない…」

 ハクヤにもう戦意がなかった。金髪の男に少しずつ歩いて距離を縮める。

「この子がなぜそうしたかも知らないで、勝手に人の人生をねじ伏せるな!それに…」

「!!」

 金髪の男の肩に右手を乗せて、下から睨み付けた。

「この子は今、熱を出して体調崩してるんだ。まだ、ここに居させてやってくれ」

「………」

 金髪の男は無表情で何も応えてくれなかった。だが、他の2人は心が動いた。

「確かにそうですね」

「当然何かしらの事情があって、行動した。それを知って理解すればお前たちは何も口は出さないんだな」

「この子が悪意なかったら、諦めてくれないか?」

「理由が理由なら、考えてあげてもいいですけど」

「どうする?」

 判断はこの金髪の男に委ねられた。

「理由か。そんなものを聞いて許せたら越したことねえな。俺は許せると思っていない。さっさとここから失せたい」

「熱を冷ましてからでもいいんじゃないかな」

 仲間の女の人も善意があるみたいだ。この金髪の男もあるならば、話は聞けれるはずだ。本当に悪意がないと言うならば。

「話を聞いてやれるだけ聞いてやれ。それでも間違ってると思うならねじ伏せれば良い。彼らにはまだ言いたいことが残っているようだ」

 仲間の2人も賛成している。金髪の男は肩の力を抜いた。

「ここに居させてもらうからな」

 彼も賛成してくれた。一時的なものだが、何とか引き止めることができた。

「メミアちゃん。寝かしてきます」

「……………はぁ」

 メミアも肩の力が抜けたのか、地面に倒れてしまった。

「メミアちゃん!また熱が上がってる!すぐに休ませないと!」

「………ふん」

 金髪の男はイスに座って鼻を鳴らした。他の2人はメミアのことを心配そうに見つめていた。少し、それを見て聞きたくなった。

「手伝ってくれませんか?」

「は、はい!」

「ああ!」

「私が兄を寝床に連れていくので、メミアちゃんはそこの部屋の寝床に寝かしてくれませんか?」

「わかった。だが、そっちの男の方が重そうだぞ。手伝おうか?」

「いいえ。大丈夫です。これくらい私にもできます」

 一応、言ってみて良かった。これで人手が増えた。相変わらず、金髪の男は腕組みして気にもしてない。それを見かねてか、仲間の女の人が「ああいう人なんです」と言われ、なんとなく理解した。

「そう言えば、名前を聞いていなかったな」

「あ、そうですね」

 言われてみて気がついた。人とあまり接点がないから自己紹介のことをすっかり忘れてた。色々あったからそれどころじゃなかったけど。

「私はアリシェです。兄はハクヤと言います」

「俺はメイギスだ」

「私はユクノです。で、あの座ってる人はサクトさん。組織の中でもトップにいた方です」

「そうだったんですか」

 確かにこの2人を引き連れてる感じがするよね。判断を任されてる辺り。それに、強かった。

「大丈夫です。私たちがいる限り下手なマネはさせないので」

 それがいつまでも続くわけではない。例えば、熱が下がるまでは。


 3日経つと、メミアの熱は下がった。治ったと言ってもいいだろう。話し合いはここからと言ってもいいだろう。ここにはアリシェとユクノが立会人だ。席を外しているがハクヤとサクトとユイギスは同じ空間にいる。リビングは狭いから話は聞こえてるだろう。

「具合はどうですか?」

「はい!大丈夫です!あと…」

 メミアはぼそぼそ下を向いていていたが、勇気を出してあの出来事を口に出した。

「あの船、私が舵を取ったのは、異常な海域に入ったからです」

「異常な海域?聞いたことないけど?」

 メミアはユクノの言葉を無視して続けた。

「セルティア大陸の南と東側は突如天気が変わり、嵐が吹いてもおかしくない。その領域内に入ってしまったんです」

「でも、そんな雲行きはありませんでしたけど」

「1つだけ確認できる方法があるんです。それは、知識のある人が現場に行って風を読めばこれから起きる天気の予想がつくんです」

「天気を予想できる人はいたけど、多分、風を読む知識は持ってないはね。いつも道具を使って調べていましたし。私はその点は詳しくないのだけど」

「それは多分星を読んで調べていた道具ですね。星を調べて、航海している場所を特定する道具です。それで雲行きを調べることはできますが、天気を調べる道具はまだ不確かな物しかないので、宛にできないんです」

 この子本当に賢い一族末裔なんだね。幼いのに私たちより詳しい。

「風を読んで舵を取りましたが、もう領域内は抜けるには遅く、嵐に入ってしまいました。予想以上に嵐が大きくて、荒れた海を避けることも船の速度ではできませんでした。船も無事には済まなくてごめんなさい」

「話は分かったわ。サクトにも伝えとくわ。誰も助かる方法は見つけられなかったのね。私たちの方が何もできなくて、本当に無力ね」

「これでわかりましたよね。メミアちゃんのことは諦めてくれませんか?」

 確かに人は失ったけど、こんな小さな女の子にだけに背負わせるおかしい。

「説得してみせますから、ここにいてください。3人で話してみますから」

 そう言って、ユクノは側にいた2人に説得しにいった。

「良かったね」

「それに、私は旅の最中でした。古里を探すという旅を」

「そうだったんだ」

 帰る場所を探していたんだね。

「おい」

「あっ、メイギスさん。どうかしましたか?」

「今の話も聞かせてもらった。俺たちはセンロティア・アレスの港へ行き、クルスドナ大陸を渡ることにした。その子も古里を探すのなら、俺たちと一緒に来ないか?」

「えっ!?」

 話はだいぶ反れているが、もうメミアに酷いことはしないということだろう。

「旅をするなら子供の一人歩きは危険だ。俺たちと来る方が安全だろう。どうだ?」

 メミアを襲った相手だから、信用はあまりできないけど、熱を出したメミアを看病したのもこの人たちだ。

「アリシェさん。私、どうしたら…」

 メミアも困惑している。まだ信用できないのは無理もない。迷うのは当然だろう。

「俺も港まで一緒に行ってあげるから、その時にまた答えを聞くのはどうかな?」

 ハクヤが気の良いことを言ってくれた。そうだ。それまでには時間がある。

「なるほど。時間は必要か。わかった。それでいいか?」

「は、はい。それで……」

 話がついたらユイギスは頷いて再度またサクトとユクノの3人で話し合いを始めた。

「お2人は優しいです…」

「ん?ごめん聞こえなかった」

「何でもないです…」

 メミアは話が終わると隣の部屋に行き布団の中で眠りについた。また、体調崩したわけじゃないよね。

「ハクヤさん。こっちです」

「あっ!はい!」

 ユクノさんに連れられて、3人の話し合いに引き込まれた。大人しくハクヤはユクノさんの隣の席についた。

「あのー」

 先に口を動かしたのは金髪の男サクトだった。腕組みをしながら話題を言う。

「お前の名はハクヤだよな。ハクヤ・エリーツ」

「どうして、俺の名前を?」

「別に、お前もセンロティア・アレスに行くのなら意味があるさ」

「???」

 何が言いたいのか、ハクヤにはさっぱり分からなかった。名字は名乗っていないはずなのに、なぜ知ってるのだろう。

 サクトの話はそれ以上何も教えてはくれず疑問に残る中、その日最後の嵐が過ぎていった。

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