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サイハテ新章  作者: 佐々薙 慎
16/20

16話 拘束

「ここは……」

 アリシェは目を覚ました。体がまだ痛む。あれから少し経ったかもしれない。

 それより気になることは2つある。私が目を覚ました場所だ。森で倒れていたはずなのに、知らない建物の中に連れてこられいる。

 もう1つは、私が拘束されていること。Xのように両手両足を1本ずつ鎖で繋がれていて胴体にも分厚い鉄で固定されいている。服も脱がされ、黒の下着に着替えされられていた。なに1つ身動きがとれない。

『目が覚めたみたいだね』

 目の前のモニターにゴウの姿が写った。

「ゴウ…こんなことして。何がしたいの?」

『20日間ぐらいでいいかな。君にはその格好のまま、あるものを見ててほしいんだ』

「この格好のままですって…トイレにも行かせてくれないの?」

『行かせないよ。その体に着けた鋼鉄は、1度付けたら壊さないと外れないからね。トイレなら僕が手伝ってあげるよ』

「そこまで最低な人なのね!あなたって人は!」

『僕は君の(ゴウ)だ。君に何を思われても僕は君の敵であり続ける。そんな事よりも、僕は君にやってほしいことあるんだよ』

「20日間、何かを見せるんでしょ」

『それは下準備だ。君にやってほしいことは、その動画の内容だ』

「動画のことに起きたことを私にやれと?」

『今から見るものは君がこの街からいなくなった後に起きた2年間を描いたものの動画だ。それを君に見せる』

「私がこの街にいない間に起きた2年間…」

『僕が補足しながら動画を流すよ。これから20日間。僕は君に付き添う。その部屋で僕と君とで2人きり。他に人が来ることはない』

「私に何かしないでしょうね!私に少しでも触ったら許さないから!」

『僕からはなにもしないよ。君から頼まないとね。お腹すいたり、水が飲みたければ言ってくれ』

 この男は。女を拘束して、その空間で2人きりにして、なにもしないなんてことは絶対ないはず。男なら下心なんて剥き出して何かするはず。

「さて、この部屋は密室だ。内側からでなければこのドアは開かない。鍵は僕が持っている。誰も来ないことは保証する」

「助けは絶対来ないということはわかったわよ」

「最大限のものはこの部屋に事前に用意してある。それ以外のもので要望されても応えられない」

「なんであなたと20日間密室で過ごさないといけないの。私は承諾してないわよ!」

「何を言ってる。君は勝負に負けてるから、その賭けに負けて承諾はちゃんと受けている。文句は言えないはずだ」

「言えなくても言うのよ!」

 確かに負けたが言い返したい。こんな目に遭うなんて思ってもいなかった。

「今から動画を流す。質問は全部受け付ける。君もこんな目に遭うのだから、できるだけ質問したほうがいいとおもうぞ」

「何をさせる気よ」

「それは見た方が早い」

 最初にモニターに映ったのは、この部屋によく似た何もない部屋だった。その部屋に20人の男女が並んでいた。

「この人たち、私と同じ黒の下着をしてるわね」

「それが最大限の装備だ。それ以上はない」

「この人たちはまさか…」

「そう。君のために用意した実験体だ」

「くっ………!」

 この人。他の人まで巻き込んで。私1人では気が済まなかったの。

「これからこの20人にはこの施設の地下にある魔物が棲む洞窟に落とす。勿論武器も何もない。その中で生き残ることこそ。今回の趣旨だ」

「魔物の棲む洞窟!?」

 20人の男女がそれぞれ違う場所に一人ずつ洞窟に落とされた。

「ちなみに地上に戻るには、この洞窟で最上位の魔物。カースドラゴを倒せばこの洞窟から抜け出せる」

「その魔物って…?」

「今の君なら一瞬で死んでしまうだろうな」

「…それ、私が倒すの?」

「そうだ」

「無理よ!私死んでしまう!」

「じゃあ死ねよ。俺はお前の命なんて興味がない」

 なんなの。この男は。私のこと何だと思ってるの?大事にしてるようで大事にしていない。

「1日目に彼らがすることは、生き残ること。食事はすべて洞窟に棲む者を喰らう以外に食べるものはない。虫か獣か魔物以外に喰えるものはない。あとは水だ。この洞窟には湧き水が湧いている。しかし、水の近くは獣や魔物が集まりやすい。身を危険に晒してまで水を手に入れなければならないだろう。これを1日目でやらなければこの1日は乗り越えられない」

 獣なら狩りをしたことがあるから、何とかなるだろう。魔物って倒したら消滅するよね。倒す前に喰らえばいいのかな。虫は食べたくないわね。最終手段にしましょう。水は見つけておきたいわね。けど、装備が整わないと無茶はできないから最初は大人しく慎重に動くべきよね。

「この1日を乗り越えられた人たちは14人だ。6人は獣や魔物に襲われて喰われて死んだ」

「………っ!?」

「初日で女が1人だけになってしまっ

た。5人しか用意してなかったんだがな」

「1日で人がそんなに死ぬなんて…」

「けど、1日は過ぎても、水しか飲まなかった奴がいる。そいつは3日目で飢えて倒れたところを獣に囲まれて喰われた。他にも4人。残ったのは9人」

「3日で半分に減った……」

「この9人はなかなか死ぬことはなかったが、動いたのは13日目。魔物の接触だ。無防備で武器を持ってなかったそいつは、簡単に喰われてしまった。残り8人」

 すべての光景をモニターに映して見せてくる。

「…だが、人も捨てたものではない。この洞窟は草木は生えないが、石や魔法石は腐るほどある。石で武器を作り、魔法石で魔法を使う。この中で魔法や戦えるやつはいない。生き残るために知恵を使い、戦う技を身につける。そういうことができたやつが生き残っている」

「すごい…」

 私はそれから、モニターを時間を忘れてずっと見続けた。残り8人だった生き残りを追った動画。だが、進むにつれて、それは事故と限界で終わりを迎える。

「こいつは、無駄だと分かって強敵に挑んだ。死を覚悟したらしい」

「なんでそんなことを」

「いつまで経っても抜け出せない終わりのないエンドロール。そんなものをいつまでも見たくはないだろう。彼は生きることを諦めた」

「そんな…1年も頑張って生きたのに」

「どれだけ足掻いても、巨大な魔物は誰1人1匹も倒せなかった。そいつも倒せないようなら出口には辿り着けん」

 15日目。モニターの動画は全員全滅で終わった。

「長くて1年だった。お前は、それ以上時間が掛かっても夢を持つか?」

「………私は」

 私には自由が掴めない。だから、この人が外へと連れ出した。この人が現れないと私はただのお嬢様を続けていた。

 私は、自由になりたいのか。こんな地獄を体感してまで。強くなれれば自由になれるのか。絶望を見れば世界を知れるのか。

「答えはあと5日だ。それまでに覚悟を決めるんだな。どの道、その日になれば洞窟の中だ」

「………うぅ」

 苦しい。なんでここまでしないといけないの。

「お前は弱い。弱いから涙を流す。森でお前が負けたのもそうだ。お前は、まだ誰かを頼ることでしか生きていけない。そういう人間だからこそ、お前は1人で強くなる必要がある。俺はそう思う」

「………」

 何も会話をせずに5日が経った。結局、私には答えは出せなかった。

「イヤだ!離して!あの洞窟には入りたくない!」

「ガキだな。お前は。そんなものがお前の答えかよ。がっかりだな」

 抵抗したせいで手足は縄で縛られ、目隠しまでされる。そのまま、何か箱のようなものに入れられ、どこかへと連れていかれる。

「な、何……」

「もういいだろう」

 連れて来られた場所は、外。底の見えない小さな洞穴だった。

「お前は弱い」

 縄はほどかれて解放されたのに、ゴウの力にすら抵抗できないなんて。

「死にたいなら、この穴に落ちてから死ぬんだな。生きたいのなら、強くなって魔物を全部倒してこい」

「そんなこと…私にはできない!」

 私は男じゃない。女なんだよ。力だってそんなにない。男にすら勝てないのに。

「俺はお前に時間と金をかけた。ここを用意するまでにどれくらいかかったか、お前の命1つ投下するために。俺は人生かけたんだ。悪でも構わない。お前はお前で変わってみせろ」

 私は地獄の洞穴に突き落とされた。死ぬのだと私はそう思った。それしか、考えられなくなって、意識は飛んだ。




「痛い……」

 目が覚めると、モニターで見た景色そのまんま。本当に洞窟の中に来てしまったみたいだ。

「寒い…」

 湖に落ちて、岸に打ち上がったみたいだ。傷はない。けど、体温は奪われたみたいだ。気温も冷たい。下着だけではこの先、生きるには厳しい世界だ。

「………魔法石が光ってて、この洞窟は常に明るいのね」

 触ってみると、少し暖かい。熱を出してるみたいだ。

「何かいる!?」

 足音の気配を感じて、近くの岩影に身を潜めた。

「あれは…獣?群れで行動してる。水を飲みに来たみたいね」

 水の近くには獣や魔物が集まりやすい。この場から離れた方が良さそうだ。

「あれを1人で倒せってこと…武器も装備もないのに…」

 少し歩くだけで獣がいる。こんな姿で見つかったら、真っ先に喰われて終っちゃう。獣狩りをしていたとはいえ、ナイフがあれば心強かったんだけど。

「1人では生きていけない…か」

 そんなに私はダメな人なのかしら。確かにゴウに連れ出され、自由にはなった。ハクヤがいて獣狩りができた。旅に出ようとしたときハクヤやサクトたちが居てくれた。私個人で何かできたことってあったっけ。何も浮かばない。

「…負けてたまるもんですか」

 ゴウにいつか勝つ。その気持ちは最初の頃と変わらない。あいつの手から逃れたい。ゴウが教えてくれた。

「…私は絶対死なない」

 生きて、ハクヤにまた会いたいんだ。兄妹のようにまた笑いたい。世界も見たい。旅がしてみたい。やりたいことはたくさんある。死なんて私は選びたくない。

「はっ…」

 左から目線を感じる。獣の目。見つかってしまった。

「きゃあー!?」

「ヒヒーン!」

「えっ?馬の鳴き声?ってそんな場合じゃない!」

 体格は私より倍くらい大きい。しかも、モニター越しでは見たことない魔物。って、魔物じゃないの!

「いきなり襲いかかってくるなんて…」

 岩影に隠れても破壊してくる。逃げても足の早さなら魔物の方が上だ。

 狭い洞穴を利用して、上手く魔物をかわすが、それすら破壊して突き進んでくる魔物。私がそんなに美味しそうに見えるの!?確かに肉は露出してるけど!

「あっ!あの穴!」

 小さな洞穴を見つけた。あそこに逃げれば。しかし、入る瞬間を見られてはならない。左の狭い道に逃げて、やはり右に道がある。わざと角を利用して魔物の目から姿を眩ましてから穴に入る。

「…やった!上手くいった」

 魔物は私の姿を見失ったみたいだ。遠くへ行ってしまったみたいだ。

「ここは…」

 洞穴みたいだが、何かの巣だろうか。ん?巣?

「でも何もいないし、痕跡もない。拠点にはちょうど良いかもしれないわね…」

 穴から顔を少し出して、周りを確認する。これくらいの穴なら、少し大きな岩を持ってきて、入り口を塞げば。

「完璧だ。私の拠点になった」

 少し天井が低いけど、座れば余る程度だ。文句は言わない。早速魔物には襲われたけど、この場所が見つかって良かったかも。

「そうだ。休んではいられない…」

 頑丈そうな石をいくつか持ってくる。石で石を削る。これを武器にすれば…。

「…出来た。石のナイフの完成だ」

 何時間かけて1個作ったかわからない。けど、ナイフと比べたら切れ味は心もとないが、切れなくはないだろう。

「これで狩りができれば…」

 とはいえ、アリシェが狩れそうな弱い獣は近くにはいない。1匹ぐらい狩らないと、食事にはありつけなくなる。

 少し歩くと虫。虫ばかり。獣より虫の方がたくさんいる。

「虫かぁ…虫は食べたくないなぁ」

 虫なら簡単に捕まえられるけど、見た目は気持ち悪いし、食べれるのか不安だ。

『シャー!』

 上から鳴き声がする。嫌な予感はするが、上を見上げてみる。虫だ。強大な虫。

「落ちてきた!?」

 まずい。退路を断たれた。前は行き止まり。体格は私より背が低いが、巨大な蜘蛛にはかわりない。

「やるしかないか…」

 蜘蛛がいきなり糸を吐いてくる。腕に絡み付くが石の作ったナイフで切り裂いた。

「これいけるわね」

 糸を切れる石のナイフなら、戦える。けど、甲殻は硬そう。すぐに石のナイフが駄目になりそう。

「賭けてみるか」

 アリシェは両手を広げて、右手には石のナイフを構える。そこをすかさず、蜘蛛は糸を吐いて、アリシェの腹部に絡み付いてきた。しかも、さっきより糸が太い。そのままアリシェを引っ張るつもりだ。アリシェもその力には抵抗はできず、引き寄せられる。

「もらったわ!」

 その引き寄せられた勢いで、蜘蛛の目にナイフを突き刺した。更に引き抜いて、今度は顔を縦に切りつける。蜘蛛は痛みで叫び、糸を切らしアリシェを逃がしてしまう。

「顔を切るのは無茶したかな」

 たった一撃で石のナイフの切れ味が悪くなった。この体に残った糸すら切れないだろう。とにかく、上手く逃げられた。わざと捕まるフリをした不意打ち。とにかく、狩りはできなかったけど、1日目にしては希望はあった。

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