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サイハテ新章  作者: 佐々薙 慎
12/20

12話 プレゼント

 朝が来た。目覚めが悪い。朝日と共に身体が起きてしまった。長く眠れた気がしない。いや、よく数時間でも眠れた方だ。

 私には、私の事を付きまとう男がいる。ただのストーカーだと最初は思ってた。けど、それ以上だった。私を陥れるところから始まって、それから奴は思い通りのことさせる。正直、何をしてくるか予想がつかない。今の段階では。

 私は昨日、その男と初めて会った。名前はゴウと言ったっけ。私と同年代ぐらいの青年だろう。思ったより若くて今更驚いている。昨日は冷静じゃなかった。  

 カギナという仲間にした男は殺し屋のレギートって男で、突然現れたシェバという青年が私を助けてくれた。少なくとも邪魔されたとゴウは言っていたから仲間じゃないことは明らか。シェバ恐らくセンロティア・アレスの兵士たちの仲間だ。そういう臭いがする。だとしたら、私はゴウに人殺しにされてる以上つかまるわけにもいかない。

 私の敵は2つ。ゴウという男とセンロティア・アレスという国。

 お腹がぐるぐる鳴る。そういえば昨日の朝から何も食べてない。まずは腹ごしらえね。とりあえず、街に出てお店にいこう。朝兵士の見回りは学生の通学路の見回りや警備で手薄だ。

「お金を払うのは初めてね。けど、お父様が注文してお金を払ってる姿見たことあるから。そこまで世間知らずではないはず」

 お店にやってきたが、所持金からして値段の高い場所へはいけない。あ、ここのカフェなんかいいかも。一度行ってみたかったんだよね。

 けど、頼むものは食事だけ。飲み物は水。余裕がないって分かってるからコーヒーだって頼めない。飲めませんけど。

「ご馳走さまでした」

 少し高かったかな。昼には節約にしてパン屋さんがあったから、そこのパン買ってみよう。値段はこのお店よりパンを2つ買う方が安くつく。

 それにしても、私は人殺しの罪にされてるはずなのに、誰1人私をそんな目で見ないわね。街の人は気付いていないらしい。あ、兵士が目の前から来た。けど、私には見向きもせずに過ぎていく。街を歩いてるだけだけど、気が付かないんだ。そもそも人殺しが無かったみたいな。

「なんか。街を歩くの楽しいな」

 私は外を歩いてまわるのが好きだ。街の中を歩くのも何年ぶりだろう。1人で歩くのは初めて。自由に外を歩いていると、なんだか楽しい時間過ごしてるようで時間を忘れてしまいそう。

「あ、もう昼です。あのパン屋さんに行きましょう」

 外にテーブルありましたし、そこで座って外眺めながら食べるのもいいかもしれません。

「ふう。パン思わず安いものを2つ取ってしまいましたね。けどまあ、これで充分でしょう!いただきまーす」

「美味しく食べるね」

「はい。パンは好きなので…って!?いつの間に!?」

「元気してる?昨日は大変だったねー」

 シェバ!?昨日私を助けてくれた人。けど、この人はセンロティア・アレスに肩入れしている。つまり、ゴウとは違う別口の敵ってこと。上手くやり過ごさないと!

「あの…どうしてここに?」

「たまたま通りかかったんで!声をかけてみたんだー」

「そうですか」

「ここのパン屋さん通ってんの?」

「いえ、初めてです」

「ここのパン屋さんのおじさん。めっちゃ人が良いから、お客の顔をちゃんと覚えてるんだぜ」

「へえ。そうなんですか」

 2度と行かない方がいいわね。人殺しの常連客の顔を覚えさすと噛みつかれそう。そうだ。これからは店は必ず変えた方が良さそう。

「にしても、服装といい、その腕輪といい、それ私服なわけ?雰囲気変わったねー」

「は、はい!これが私の私服なんですよ!」

 ストーカー男の趣味とは言えない。

「ふーん。んいでっ!」

「何女の胸見て喋ってるの。シェバ」

「ゆ、ユキナぁ!いきなり顔に拳を落とさなくてもいいだろ!?」

「すみません。ウチのシェバが鼻の下伸ばして」

「い、いえ…」

 人が増えた。シェバとは違って雰囲気がクールというか。ドライというか。表情を崩さない。

「伸ばしてねえよ」

「けど、この人の胸ばかり見てた」

「胸?いや、俺が気になったのは服装だけだし」

「見栄っ張りなウソはやめて」

「えー。ウソじゃないんだけどな。俺、巨乳の方が好きだし」

 さりげなく、私に喧嘩売ったわね。私はあまり胸気にしない人だから別に何言われようと平気だけど。

「なに、私の胸では満足できないわけ?」

 このユキナって人も同じそんなに目立つような胸持ってなかった!?

「いやー!もう殴らないで!」

「あの…お2人は付き合ってるんですか?」

「私とシェバのこと?」

「付き合ってるも何も、俺たち夫婦だし。なあ?」

「うん。シェバは私の旦那」

 若すぎる!?まだ20歳ぐらいじゃない?この2人は!

「だから、シェバ。浮気は許さない」

「浮気じゃねえ。ちょっと喋ってただけだよ」

「それが浮気」

「厳しくねえか?」

「シェバはいつも危なっかしいから。心配になる」

「大丈夫。ユキナを置いて死んだりはしねえよ。信じてくれ俺を」

「うん。信じる」

 うわー。私の目の前でいちゃついて。羨ましいなあ。

「ところでシェバ。仕事は?」

「あー。それは夜にする。夏は暑くて夜に。冬は寒くて昼にするのがいいからな。だから昼は休憩。んでいてっ!?叩くなよ!」

「昼起きてたら夜寝るだけじゃない。活動してるなら昼でもしなさい。それに急ぎじゃないの?」

「あー。そうだよ。けど、明日までなら夜でもいいだろう」

「わかった。もう勝手にすればいい」

「へーい。って、あれ?アリシエーラちゃんは?」

「食べ終わったからトレイ片付けて店を出ていったわよ」

「嫌な空気にさせちまったかな?」

「そういう空気作ったのはあなたよ」

「いや同犯だろ!?」

 シェバという男は強い。私を襲ってきたあの男をいとも簡単に倒した。私を狙うゴウという男の仲間でないのが救いだが、あの女の人は賢いような気がする。

「ちょっと待ってよ」

 どうしてあの場にシェバが居たんだ?しかもいつから?頭上から現れたということは突然見かねて現れたわけじゃなく、事前に分かってそこにいたとしか思えない。

 後を付けられてるのはゴウだけじゃない!?あの男も私を!

「泥棒よ!誰かその男を止めて!」

「えっ!?なに?」

 アリシェの横を猛ダッシュで過ぎていった。鞄を大事に抱えて走っていったから今のが泥棒か。だが、その泥棒がすぐに抑えられた。

「んいて…!何しやがる!?」

 足を引っかけられ転んでしまった泥棒。引っかけた本人を泥棒が睨むが、引っかけた方が無口で怖そうな男の人だった。

「お前、それで得するのか」

「あったりめーよ!金なきゃ生きていけねーよ!」

「俺の金は銅貨3枚しかない」

「はっ?」

 銀貨で今取引されてる時代なのに銅貨でしかもたった3枚ってパンもろくに買えないじゃないの。

「俺はちゃんと働いているのに、俺はいつまで経っても貧困生活だ。もやしとパン耳生活の繰り返しだ。それでも俺は懸命に生きている。間違った生き方しない」

 この人。全部表情を崩さず淡々と話すなあ。真面目でなんだか良い人みたい。

「俺の職業は盗賊だ。だがお前と同じ盗賊ではない。盗んだものを盗み返すのが俺の職業だ。これは言えば仕事だ。だが盗み返しても報酬は要求はしない。懐の大きさでやっているからな」

 この人絶対いつか飢え死にする人だ!?特徴的仕事もそうだし、報酬ゼロでも良いのは流石にマズイよ!

「貧乏でも、懸命に生きろ。俺より貧乏か。お前は?」

「仕事が無くて貯金が底をついて、もう死ぬかって所まで追い詰められて、でも死にたくないんです。なら、盗賊しようと思ったんだ」

「そうか。辛かったな」

「けど、あなたの貧困生活を聞いて安心しました。僕、宝くじ当選して金貨1000枚あったんですけど、50枚まで減って焦ってたんです。でも、金貨50枚ぐらいあれば、もやしとパン耳生活で10年は生きられますね!」

「もやしとパン耳生活舐めんじゃねえ!」

 殴り飛ばした!?しかもすごい威力。結構遠くまで飛んでいっちゃった。

「あ、奥さん。鞄取り返しましたよ。今度は盗られないように注意してください」

「おお。ありがとうエジェン君」

「エジェンさん。毎度助けてくれてありがとうね。今度お礼するからね。財布が戻ってきてほんとに良かった…孫の誕生日にケーキ買えに行けなくなったところだったよ」

「じゃあ、俺はこれで」

 老夫婦なら狙われそうよね。にしても、あの人も結構強そうだった。一撃で盗人を気絶させるなんて。10メートルぐらい殴っただけで吹き飛ぶのは驚いたな。

「おい。そこの女」

「わ、私ですか?」

 いきなり話しかけられた。ずっと見つめていたし、距離もすぐそばで行われて見ていたから話しかけられたと思うけど。私に何か用でもあるの?

「怪我してないか?」

「い、いえ。心配しなくても、肩ぶつけられたぐらいで大丈夫です」

「見た感じか弱そうだが、どこかで鍛えていたか?あの衝撃だと女なら倒れて尻餅つくのだがな」

「兄と外を走り回って鍛えたせいだ思います」

 流石に狩りして鍛えていたら変におもわれるから言わないけど。

「そうか。活発な女の子なんだな。ウチにも騒がしくてうるさい女がいる。アイツもそれくらいじゃ倒れないどころか突っかかるだろ。そんなお前にたのみがあるのだが」

「あの伸びてる人のことですよね。私、この後行くところがありまして…」

 ゴウという男が指示した場所へ今から行かないといけない。街を自由に歩くのは今までにないから道に迷うことになるかもしれない。早めに行ってとっとと済ませたい。人の用事なんてする余裕はない。時間はあるけど。

「そうか。ならあそこに知り合いがいるから頼むか」

 そう言ってエジェンはシェバの所に行った。ってあの2人は知り合い!?

「何話してるかわからないけど。そんなこと関係ないや。私は私のやるべき事をやろう」

『22時。西公園噴水横』

 この場所は行ったことないが、近くを馬車で通ったことあるから大体の道のりは分かる。大通りをずっと進めば見えてくるだろう。

「地図で見た通り大きいわね」

 結構歩いたし疲れた。西公園の中も広い。子供の遊び場としての遊具はセンロティア・アレス最大級の多さと大きさで、噴水もありそこは憩いの場として有名だ。しかし、早く来すぎてしまった。

「まだ午後の4時ね…あと6時間ある」

 一応噴水横を調べてみたが、何かある様子はない。22時に来なければなにも起きたりしないのだろう。

「少し休んでおきましょうか」

 ベンチが近くにあったんでそこに座ってしばらく時を待とう。

 近くにあったお店でおにぎりを買ってみた。お米を食べるのも何だか久しぶりね。ハクヤと一緒に自然の中で住んでる時はほとんど狩りと釣りとで過ごしていたっけ。お米なんてなかった。

「美味しい…こんなに美味しかったけ」

 ゴウにもらったお金だけど、久しぶりに食べる物は懐かしくて美味しいな。おにぎりなんて母がよく作ってくれたっけ。飲み物も飲み干して、食べ終わると眠くなってきた。

「何だか眠気が……疲れがまわったのかな」

 退屈な時間。少し寝ても大丈夫だよね。昨日と今日で疲れたから力を抜こうかな。

「………すー。すー……」

 夕陽が沈んで暗くなった。公園にたくさんいた人たちは、ベンチに寝ているアリシェには目もくれずに帰っていく。誰も居なくなった頃にアリシェは目を覚ました。

「…いけない。結構寝てしまった」

 ここから見える公園の時計は11時の針を指している。1時間も予定より過ぎてしまった。

「噴水横に何かある?あれは昨日と同じ紙袋?」

 それを手に取り、同じベンチに座って中を見てみる。

「また服が入っている。また着替えろってこと?」

 ポケットにはまたお金が入ってる。同じ額だ。そして一通の手紙。

『ここから南の住宅街3番地電柱横』

 また次の行き先が書かれていた。そしてもう1つ。

『今日着た服は全てこの中に入れて同じ場所に戻すこと』

 同じ服は着てはいけないらしい。

「なんであの男に従わなければならないの?」

 絶対ではない。従わなければ済む話だ。あいつの趣味で服を着る必要もない。

「けど…」

 この服を着れば1日分のお金が手に入る。従わなければ次にそれが貰えなくなる。お金を持ってないアリシェにとってこれは生命線である。次に何をするかを明確に決めていないアリシェは迂闊にこれを捨てることはできない。

「私のプライドを賭けた駆け引きね。わかったわよ…服を着替えればいいんでしょ。いつまでも汚れた服を着続けるのも嫌だし。あいつの言う通りにするわよ」

 近くにあったトイレで着替えて、着た服は紙袋に入れた。

「こんなことして、何が狙いなわけ?私を追いつめたいのは分かるけど、それをして私をどうしようというの?」

 私はあの男を知らない。けど、あの男は私になぜか執着している。負けたくはない。

 次の日、アリシェは手紙に書かれていた通りの場所に行くと、そこにはすでに紙袋があった。中身は全て同じで服とお金と次の行き先が書いてあった。

 これを繰り返し続け、1週間が経った頃。私はあの男に負けてるのだと思い始めた。あいつの思い通りにしたくない。私は遂に紙袋の指示を拒絶した。

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