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サイハテ新章  作者: 佐々薙 慎
10/20

10話 疑い

(なぜだろう。あれから1週間が過ぎた。俺はアリシェという未成年の女の子をひょんなことに守ることになったのだが、家事掃除洗濯全部家回りのことを頼んでもいないのにやってくれて、俺はその家にずっと働きもせずにそこにいる)

「カギナ。ご飯出来ました。もう残り物少なくなりました。明日食材調達よろしくお願いしますね」

「ああ、わかった」

(俺が守るどころか、この子に守られてるのは俺の方じゃねえか!俺は一体何をやってるんだ!?この女を守るんじゃなかったのかよ!というか、ストーカー男は何をしてやがる!居るんだったら喧嘩くらい吹っ掛けてこいよコラ!)

「あ、カギナ。そんな焦らず食べなくても、口元にご飯粒付いてますよ。もったいない」

(俺に付いていたご飯粒食べちゃった!?くそ。あと20代若ければ本気で惚れてたな。可愛すぎる)

「エーラ。そろそろ俺にもなんかさせてくれ。ほら、俺お前を守る手はずだったじゃねえか」

「あの男が動いてこないとこっちも手の打ちようがないし、手を打っても無駄です。何もされてないし、何も動いてこないと対策の仕様がないですし、もう最大限のことはやってますよ」

「最大限のこと?」

「カモフラージュです。私とカギナはまるで夫婦っぽくありませんか?」

「ふざけんな!どちらかというと親と娘だ!」

「ああ、そっちもありますね。けど、そろそろ動いてきてもおかしくないと思いますよ。例えばあなたが居なくなった時とかね」

「まさか…」

「仕掛けてみましょう」

「わかった」

 明日はカギナが家を出る。その間にあの男は仕掛けてくるか仕掛けてこないかだ。

「じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 翌日、朝の10時にカギナが家を出る。それから昼までのたったの2時間。その間に何か起きてくれるか起きないか。

「ん?」

 カギナが出ていくと、玄関の隅に封筒が落ちていた。拾って中身を確かめてみる。すると。

「な、何これ?」

 私が盗撮されている写真だらけ。しかも、撮影されてる場所はこの家の中。

「そう来たか」

 私は家にカメラがないか調べた。そしたら3台の小型カメラが見つかった。

「1番怪しいのはカギナ。けど、この家には鍵はついていない。いつでも人は出入り可能。けど、この1週間は私がこの家にいた」

 誰かが侵入してきたのなら、恐らく1週間前。私がここに来る以前に仕掛けていたという線がある。

「盗撮された写真もまるで私の行動がわかっていたみたいね。私が服を脱ぐ場所をちゃんととらえていて、全裸の恥ずかしい私の写真を狙って撮っている。浴室なら簡単なのだけど。脱衣所もここまではっきり撮られたら、私の事をよく知ってるあの男がここに来て仕掛けたとしか思えないわね」

 完全にストーカー体質のあの男が私に憑いている。あの男は私の裸を見たってことね。いや、これ以前に見られるかもしれない。だとしたら、ひたすらあの男は気持ち悪い。

「私がここに来るのも思惑通りというわけなのね」

 身体が震える。このままだと、私はあの男に取り込まれてしまいそう。せめて、あの男の思惑通りにならないようにしないと。ここで仲間を疑ったらあの男の思う壺だ。

「ごめんくださーい!」

 こんな時に訪問者?カギナだったら勝手に帰ってくるはず。一応出てみるか。

「はい。何でしょう?」

「あれー?女の人?ここに住んでる人は男だとアイツは言ってたんだけどなー?」

「何の話でしょうか?」

「あ、えと、この家に盗賊が住んでるって聞いたから、捕まえに来たんだけど。君、盗賊じゃないよね?」

「当たり前じゃないですか」

 盗賊がはいそうですって答えるかな?どちかというと、私は殺人犯で罪はそっちの方が重いんだけど。というかこの人、身なりは普通の人よね。兵士の格好はしてないし。こういう人もいるのね。

「あ、そうそう。この辺りで殺人事件が起きてさ。殺人犯が検討もついてないみたいなんだよ。君も気を付けた方がいいよ。この家、鍵は壊れてるみたいだからさ」

「お気遣いどうも」

「あ、一応君の名前聞いてもいい?」

 名前を作っててよかったわね。本名名乗ったら疑われて危険すぎる。

「アリシエーラです」

「俺はシェバだ。盗賊を見つけたら通報してくれよな!あと、殺人事件の手がかりも何かあれば、そっちの方もよろしくってことでな!じゃあな!」

 なんだったろう。今のシェバっていう人。悪い人には見えなかったけど。どちかというと、国を守る人っぽかったけど。それより、カギナは有名人らしい。

「こんなところには居られないわね」

 私の盗撮。カギナは盗賊を嗅ぎつけられている。この住みかでは不自由だ。

「おーい。エーラ。帰ったぞ」

「すぐに家を出るわよ」

「えっ?何でだよ?」

「話も場所を変えた方がいい」

 盗撮されていたなら盗聴もされてるはず。盗聴器なんて見つからなかったけど、疑う余地はあるはず。

「どうしたんだよ?急に?何かあったのか?」

 私は頷いた。カギナは固唾を飲んで頭をかきむしり納得してくれて、すぐに支度を済ませて家を出た。歩きながらなら話してもいいだろう。

「盗撮されていたわ」

「それ、本当か!?」

「家にカメラが3台見つかった」

「どうしてそんなものが…」

「恐らく、あの男の仕業で間違いない」

「ん?なんで俺を見るんだ?」

「あなたも共犯じゃないのかと思って」

「なんで俺がそんなことするんだよ!」

「あなた以外に誰がこんなことできるの?」

「そ、それは…けど俺はやってねえ!それだけは信じてくれ!」

「信じてほしければ私に対して行動で示してほしいわね」

「ど、どういうことだ?信じるのか?」

「信じる信じないかで言うなら私は信じてる。これもあの男の策だと、それにハマってしまっているのだと。けれど、警戒はするってこと。仲間は減らしていられないもの」

「そ、そうか…じゃあ、俺は信じられるような仲間になれば良いんだな!」

「誠意を尽くしてください。そしたら私は信じます」

「わかった!にしても、胸糞悪いぜ。この俺を使って騙してくるなんてよ」

「場所を変えましょう。いつまでもここには居られないわ」

「どこ行くんだ?」

「あなたには場所は言わないわ。付いてきて」

「…そうか。ああ、わかったよ」

 カギナは信用が足りないからあの男の仲間の恐れもあるから行き先が言えないのが申し訳ない。

 盗撮されていたのだから、場所を特定されないように逃げなければならない。なら、この街をとことん移動して予想もつかない場所へ移動しよう。そうすれば隠しカメラで盗撮などできないだろう。

 その日、アリシェとカギナは1日中センロティア・アレスの街をあちこち移動した。同じ道や同じ箇所はできるだけ避けて移動した。これで姿を眩ませられたらいいのだけど。

「疲れたぜエーラ。1日中歩いて何か目的あったんだよな?」

「無くなったわ…」

「ああ?なんで……っ!?」

 私は最終的に工場区の一角を繋ぐ橋の下。アリシェとカギナはそこに最終的に行く予定だった。一度ここは通ったけど、それがいけなかったのだろうか?

 壁には赤いスプレーでこう書いてあった。

『ごくろうさま。ずっと見てたよ』

 私の考えが読まれている。先回りしてあの男がこの字を書いたに決まってる。どうして予想がついたの?次どうしたらいい?

「エーラ。お前少しここにいろ。俺が周りの様子を見てくる。30秒で戻る」

「ええ、お願いします」

 ここは元から人通りが少ない。夜になったら更に人が少なくなる。私は彼にとってこれは安直な考えだったの?そうに決まってる。先回りして壁に書かれているこの字が何よりの証拠だ。

「エーラ。怪しい人物はいなかったぞ。人の気配すらない」

「………そう。でもあの男はどこかに隠れているのよね」

「そうかもな…」

 何なの。この違和感。ストーキングが徹底しすぎている。盗撮されていた。ずっと見ていた。なんでそこまで予想できていた?まさか、あの男は1人じゃない。複数いる!?でなければ、徹底するのは不可能よ。まさか私を狙う組織が結成されてるの?だとしたら、そんな相手に私は逃げ切れられるの?

「なあ。エーラ。そう愕然とするな。俺がいる限り、何とかしてやる。だから、あまりそう気にすんな。お前に手を出してきたら俺が許さないんだからな」

「…次はあなたに場所を選ばさせようかな。居住区と農場区と繁華街。どっちが良いと思う?」

「俺は農場区かな。そこなら人がいなさそうだ」

「じゃあ、私はあなたとは違う場所に向かう」

「ん?今なんて?俺もエーラが別々に行動するように聞こえたんだが?違う場所って俺に選ばす意味あったか?それより、別々に行動したらお前のこと守れないじゃないか!」

「あの男は私だけを追ってる。のだとしたら、あなたは遠目で私を見てる方がいいのよ」

「なんでだよ。守られてほしくないのか!お前は俺に守られればいいんだよ!お前は俺がずっと見ててやる!ずっと守ってやるって言ってんだよ!」

(なんだよ。なんだよこの娘は!なんだよその目は!なんだ。なんでそんな目で俺を見ている!?)

 私は睨んだ。この男は私の仲間だ。

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