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殺して差し上げましょう

 最初の日にかしずく美嵐丸に慶次郎は言った。


「叔父きに頼まれて俺を殺しに来たのか?」

 最初は吃驚した美嵐丸だが、怒りを満面に表して、

「殺して欲しいならそうして差し上げましょう!」

 と言って脇差しを抜き、左片膝を立てて躙り寄り引いた右手を横腹に付けて慶次郎を睨んだ。


 慶次郎は一向に動じることもなく美嵐丸を見ている。怒りに染まった赤い頬、紅を引いたような柔らかそうな唇が少し開き、真っ白な八重歯が出ている。

 豊かな前髪を額で分け、錦の結わえから長い艶やかな後ろ髪が揺れている。若く幼い体臭がふわと慶次郎を包んだ。


 慶次郎はふと破顔すると、

「・・・すまぬ。冗談だ。これから儂に仕えてくれるのか?」


 はっと我に返った美嵐丸は後ろに脇差しを投げ出して平伏した。


 いかな理由が有ろうにも主にこのような態度を取るとは許されることではない。美嵐丸は家内でも嫌われ者の慶次郎のもとに行けと言われた時、利家に捨てられたと思った。当主の側にいていくさで手柄を立てて晴れて家を継ぐという夢が失われたと感じたのだ。今は遠い親戚が後見人になっているが、特に取り立てて功績もなかった父の家など、どうでも良いと考えているようだった。

 美嵐丸は一時でも取り乱した自分が恥ずかしくなった。


 だが豪放な慶次郎はそれ以上そのことを言うでなく、何事も無げに言いつけた。

「親父殿に粥を作ってくれぬか。儂もそれを食う」



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