四頁 虚無の魔女
無事ハートの女王の城へ辿り着いた千秋一行であったがおかしな事に城門が開いたままで門番の兵士すら不在であった。
「おいおい、こりゃまた随分とザルだな」
「おかしいですね、いつもなら門番の方がいらっしゃるはずなのに…」
すると、向かい側から歩いて来る人影が見えてた。
「あれは巡回警備のトランプ兵でしょうか?でも様子が…」
「おい…あいつ怪我してるぞ」
そのトランプ兵は獣の爪でやられたような傷が体のいたる所に見られた。息は荒く、意識が朦朧としていた。千秋と時計ウサギは急いで負傷した兵士の元へと駆け寄った。
「ど、どうしたんですかその傷⁉︎城で何が…」
時計ウサギの質問に対して兵士は掠れた声で答えた。
「…化け物が…女王様を……どうか、お助け…うぐっ!」
そう言い残し兵士はそのまま気絶した。
「時計ウサギ、おまえはそいつの手当てをしとけ、俺は城の様子を見てくる」
「そんな!一人で行くなんて危険すぎますよ!」
「心配すんな…絶対、帰ってくるからよ」
そう言って千秋はニヤリと笑みを浮かべ、城へ向かって走り出した。
「アリスさん、絶対ですよ…」
城の入り口の前にて、
「いやー、さっきの台詞は中々決まってたぞ!録音しておくべきだったなぁ…」
「やったらしばくからな…で、見た感じこれは城に侵入者がやってきて派手にやられたってところか?」
「……」
「どうした?急に黙り込んで」
「千秋くん、どうやら侵入者は複数…その中に今回の騒動の黒幕までいるようだ」
「なら、ここで片付けるか…」
「私も同意見だよ…そうだ!先にこれを渡しておくよ」
すると突然、千秋の目の前に一本の刀が現れた。
「これって、俺の刀か?」
「あぁ、本来ならゲームの時に使う物だが、私の力を使えばこの程度造作もないのだよ」
「んじゃ、さっさと片付けるか」
千秋は城の扉を開けて城の中へ突入した。気配を辿り歩を進めていくと、城の裁判所へと辿り着いた。
「ここは裁判所なのか?」
「えぇ、その通りよ。そして、貴方たちは罪人…うふふっ」
突如、女性の声が裁判長の席から聞こえてきた。そこには、ウェーブのかかったブロンドヘア、赤黒いローブを身に纏った女性が座っていた。千秋はその女性を見た直後、背筋が凍るような感覚に襲われた。目の前にいる者は人ではなくもっと恐ろしいもの…そして、自分が敵う相手ではないと本能が言っている。
「初めましてね千秋くん…私はボイドL……今貴方と一緒にいる人のお友達よ。そうでしょN…久しぶりに会えたんだから、またあの時のように…」
「黙れ魔女…私はおまえのことなど知らん」
「あら、冷たいのね…それじゃあ、さよなら」
すると、千秋の背後の壁が突然崩れだした。そこから「シュルルル…」と、不気味な鳴き声と共に狼のような姿をした怪物が現れた。
「殺りなさい、バンダースナッチ」
「シャァァァァァッ‼︎」
咆哮を上げ千秋に喰らい付こうとしたその時、Nがカードの中から飛び出しバンダースナッチを蹴り飛ばした。
「バンダースナッチは伸縮自在の頚部を持っている。距離に気をつけるように…というわけで私はあの魔女を止めるから後は任せたぞ!」
「おい!ちょっとま…」
千秋の制止を無視してNはLの胸ぐらを掴み一瞬でその場から消え去った。
「あークソッ!めんどくせぇな!おい化け物、さっさとこい!」
「シャァァァァァッ‼︎」
各々の戦いの火蓋は今、切って落とされた―――
愛読者だけに教える秘密
《Nさんの好み》
三次元は人より猫が好き
二次元はロリ、ショタ、男の娘が好き