三頁 マッド・ティー・クラブ
アリスの物語へと訪れた千秋、そこは私たちの住む世界とは全く違う異様な雰囲気が漂っていた。
「んで、これからどうすりゃいいんだ?」
「うーむ…まずは誰でも構わないからこの物語の人物と接触するべきだな」
「でもこんな森に人なんて…」
「おーい!アリスさーん!」
突然背後からアリスの名を呼ぶ声が聞こえた。千秋は振り向き声の主を確認した。
「えっ?るみ…?」
驚くことに、そこにいたのは頭から兎の耳が生えたるみであった。
「アリスさん何を寝ぼけてるんですか!私は時計ウサギです!」
(おい…一体どうなってんだ…なんでるみが…)
(恐らく君がこの不安定な状態の物語に干渉した事によって、君の記憶の一部が反映されているのだろう)
「それよりも今日はハッタさんから話がある日って言ったじゃないですか!急がないと遅刻しますよ!」
るみ改め時計ウサギは千秋の手を取り走りだした。
(千秋くん、今はとにかく話を合わせるんだ)
(あんたは呑気でいいよな…)
暫く走り続けていると、森の開けた場所に辿り着いた。そこの中央には一本の巨木が生えており、その根元には二人の人影が見えた。
「おっ!アリスが集合時間ギリギリなんて珍しいじゃないか」
「きっとお昼寝でもしてたんですよぉ…ふぁ〜」
「いや、君じゃないんだから」
(こいつらは?)
(白い帽子とトレンチコートを身に着けているのは帽子屋ハッタ、その隣で眠そうにしてるのが眠りネズミだな。となると、三月ウサギもいる筈だが…)
その直後、千秋は寒気を感じた。その原因はすぐにわかることとなった。
「おっすー!お待たせー!」
「三月ウサギ、今日は時間ピッタリだな」
「うん!全力でビューンって来たからね!HA HA HA!」
そこに現れたのは兎の耳が生えた圭であった。どうやら三月ウサギには圭の姿が反映されていたようだ。千秋は寒気の原因はこれだとすぐに察した。
「あれ?アリスさん、顔色悪いですけど大丈夫ですか?」
「あっ…いや、別に…」
すると、すかさず圭改め三月ウサギは千秋に顔を近づけて問いただした。
「本当に大丈夫なの〜?」
「うわっ!ああ…大丈夫だからあんま近づくな!」
そう言って千秋は後退し、三月ウサギとの距離を置いた。
「もー、アリスはつれないなー」
「はいはい、お前らお喋りはそこまでにして本題に入るぞ。まぁ、お前らも既に気づいてると思うけど今この国には危機が迫っている…それを俺たち『マッド・ティー・クラブ』で解決するんだよ!」
これは千秋とNにとっては仲間を得る願ってもないチャンスであった。
「で、俺たちはとある物を探さなきゃいけないわけだが…アリスと時計ウサギはハートの女王の所まで行くんだ、なんか大事な話があるそーだぞ」
(ハートの女王?女王っていうぐらいだからこの国のトップなのか?)
(そうなるな、ただあの女王は少しばかり気難しいから気をつけて接触するように)
「よし、伝えることは伝えたから今日は解散!三月ウサギ、眠りネズミ、早速例の場所に行くぞ!」
「おぉー!」
「すやぁ…」
この面子大丈夫かよ…そんな不安を胸に残し、千秋はハートの女王の城へ向かうのであった。
愛読者にだけ教える秘密
ナッキーとフリーNは別人(という設定)であーる!