【第三章】第二十六部分
ふたりは瓦礫の山に激突した。衝突の勢いで、瓦礫は一掃され、その下の地面が無残にえぐりとられた。
そこに血まみれになったふたりが倒れていた。とくに咲良は額から血を流している。
「あらら。提出された議案を審議する前に退場することは許されませんよ。」
「ぐぐぐ。こんな悪魔議員にやられるなんて、悔しいよ、お姉ちゃん。」
実亜里は腕から、咲良は頭から出血している。咲良はすでに気を失っていた。
「まだ息があるとは、さすが天使ですね。でもあまりに簡単に議案が通過してしまって、もの足りませんね。だから、ちょっと、議員のストレス解消に献金いただけますか?」
芳香議員はふたりのところにゆっくりと歩いていき、ケガをしている実亜里の腕を踏んだ。
「うぎゃあ~!」
無抵抗な実亜里は痛みの叫びを上げるしかなかった。
「やめろ!議員さんの目的はボクだろう。傷ついたふたりをこれ以上、痛めつけないでよ。」
和人の言葉に反応して、芳香議員は振り返った。
「地方遊説をしていたのに、選挙運動妨害ですよ。公職選挙法違反の罪は重いですよ。いいでしょう。ならばワインでも飲みながらゆっくり楽しもうとしていましたが、ビール大ジョッキの一気飲みとしますよ。」
和人のところに戻ってきた芳香議員は、一気にガブガブと和人にかぶりついた。
「痛~い!」
「自分でこちらの議案に投票したのですから、有権者としての責任を果たしてくださいね。政治責任は政治家ではなく、最後は受益者である有権者が取るんですから!」
さらに和人にかぶりつく芳香議員。からだの半分ぐらい食べた時。
「あ~、なんてデリシャスなんでしょう。全身の隅から隅まで濃厚な血液が染み渡るようです。こんなにスゴいなんて、想像もつかなかったです!」
芳香議員のからだが脈打ちながら、大きくなっていく。
「筋肉がどんどん成長していくのがわかります。ものすごいスピードで細胞分裂が行われています。議員の身体は急成長しています。これなら間違いなく、魔界一の力を手にすることができます。魔界の頂点に立つにふさわしい女王の誕生日を目にすることができる幸せを味わってください。ハーハハハッ。」
「こ、こんなことがあっていいのか。ボクは認めないぞ。」
薄らいでいく意識の中で、和人は声を絞り出していた。
「うっ、これは?」
芳香議員は口に当てた手を見た。赤い液体が手から溢れていた。




