【第三章】第十部分
「あちちち!そ、相対魔法、術式・水、制限・オン。対象・自分、範囲・全身、時間・3秒、到級5。発動!」
竜がいったん消滅したところに、同じ攻撃がやってきた。大慌てで呪文を唱えた入場券販売員。
「危ないですよ!攻撃するならするで、ちゃんと宣言してくださいですよ。ちょっとやけどしたかもですよ。悪魔同士なのですから、手加減することが大前提ですよ!・・・って、その翁能面からは、聞く耳の存在が未確認ですよ。」
火魔法へのクレーマーとなりながら、じっと翁能面を見つめている入場券販売員。
「何も反応がないようですよ。商品を買ってくれないならば、どういう商品がお好みなのか、リサーチへさせてもらうですよ。相対魔法、術式・水、制限・オン。対象・翁能面、範囲・10㎡、時間・3秒、到級5。発動!」
今度は幅が広くて、薄い色の竜が工事現場のブルーシートのように、翁能面を覆いつくした。翁能面は縦に長いテントのような形状に見える。
「そういうことですよ。これは翁能面さんの財布を軽く見てましたですよ。試食から買ってもらうような安い食材では、失礼でしたですよ。100グラム千円以上の高級ステーキ肉を、買ってもらうべきでしたですよ。」
「「「「相対魔法、術式・火、制限・オン。対象・武闘派悪魔、範囲・全身、時間・10秒、到級3。発動!」」」」
今度は声がカルテットで聞こえた。
竜のテントは3秒で消えており、そこには4つの翁能面があった。
4人が列車のように縦に並んでいるのが見えた。
「この4人、能面が同じだけでないですよ。販売員の竜からの情報では、身長、体重、スリーサイズもすべて同じですよ。それに、同質の声、なにより、呪文の息がこの上ないぐらいピッタリ合ってるですよ。以上から推測するに、この4つの翁能面は、双子を遥かに越えた4つ子であるですよ。これはなかなかやっかいな犯人ですよ!」
入場券販売員は翁能面を少年名探偵のように指差した。
「翁能面は4人で合体してるですよ。魔法到級は通常変わらないですよ。でもまれに魔力形成が同じだとドップラー効果が出ることがあるですよ。カラクリがわかれば対処のしようがあるですよ。・・・と言われますが、そんな相手に出会ったことないですよ!」
3到級を大きく超えた翁能面の火魔法の大蛇。体積では水魔法の竜が勝るものの、威力では大蛇が圧倒しており、竜は蒸発しては復活し、またも蒸発の、繰り返し。
「はあはあはあはあ。」
入場券販売員は背中を曲げて、両手を膝につけており、相当に消耗しているのが見て取れる。




